【ブログ】労働者性が問題となったケース(第2回)

2016-12-12

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所、アトラス総合法律事務所の佐々木です。

前回は実際に労働者性が問題となったケースの概要を説明しました。

今回は、当該ケースにおいての、1. ホステスのAさんの主張 2. Aさんが勤務していたB店(正確には、裁判では店舗ではなく、会社が当事者です。)の主張 3. それに対する裁判所の判断 4. 総評という流れで書いていきたいと思います。

1 Aさんの主張

 Aさんは、B店から、罰金等の制裁を伴う強い拘束力のある指示を受けて勤務していて、その報酬も労働の対償としての性質を有するから、B店の従業員(労働者)というべきだ。

2 B店の主張

 ホステスは、単なる労働者ではなく、店舗を使用して高額な報酬を得る事業を行う個人事業主としての意味合いが強い。現にAさんのようなホステスは、個人事業主として税務申告をしているじゃないか。なので、労働基準法の適用を受ける「労働者」ではない。

3 裁判所の判断(東京地判平成22年3月9日)

 「ホステス一般について労働者といえるかはともかく、少なくともAさんについては、業務従事の指示等に対する諾否の自由がなく、業務遂行上の指揮監督を受け、勤務場所及び勤務時間について強い拘束を受け、代替性の高い労務提供態様であるし、報酬が純売上高と連動しているけれども、一定程度の固定額が保障されていたことからすると、その就業実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価できるから、労働基準法上の「労働者」に該当するというのが相当である。」

4 総評

 今回のケースでは、B店では、遅刻や早退、客の送迎で店を離れる場合にも15分ごとに給料の10パーセント分の罰金が課せられていたことから、罰金制度を背景に実際は諾否の自由が無かったと評価されたのではないでしょうか。

 そして、B店からAさんに対し、出勤前に美容院に行くことや客の同伴を指示していたことや接客態度の指導があったことから、業務遂行上の指揮監督があったと評価されたのではないでしょうか。

 加えて、「給与」明細書を発行していて実質的に固定給のような形であった等の事実から、報酬の労務対償性の判断、さらには事業者性にまで言及しているということは補強要素を入れなければ判断できない、微妙なケースだったと思います。それは、判旨(判決文のこと)の一番最初で「ホステス一般について労働者といえるかはともかく」と、前置きがされていることからも裁判官の悩みがうかがえます。何とか今回はAさんが「労働者」と判断される方に傾いたという評価でしょうか。

 その結果、Aさんは労働基準法上の「労働者」として扱われ、AさんとB店との契約関係に同法を適用した結果、B店の就業規則の罰金条項による賃金の控除、及び罰金以外の控除等が一部違法で無効であることになりました。今回は、法律上の「労働者」と認められるかどうかがAさんにとってはすごく重要な分岐点でした。

 

 次回は、「労働者性」が問題となった、別のケースを紹介したいと思います。

 

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