【ブログ】労働者性が問題となったケース(第4回)

2016-12-26

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所、アトラス総合法律事務所の佐々木です。

 前回は、労働者性が問題となったケース2の事案をご紹介しました。それでは、ケース2はどのような結末を迎えたのか、見ていきましょう。

 

 裁判所の判断 (東京地判平成23年11月7日)

 「X と T(元請会社)との労務提供における指揮監督下の労働に該当するかという観点からも、報酬の労務対償性の有無という観点からも、Xの労働者性を肯定するだけの根拠が乏しいし、その他の要因を考えても、Xの事業者性は否定し難く、専属性があったとも評価できない。以上のように、X の労働者性を肯定するだけの事情は認められないのであるから、X を、労基法及び労災保険法上の労働者に該当するということはできない。」

 総評

 今回のケースでは、事故の前日に元請の社長さんから、明日から工事に来るようにと言われたX さんが、「午前中は難しい」と伝えて仕事の開始時期を午後からとしていたことから、諾否の自由があったと評価されました。さらに、この事情から、作業時間は8時から17時となっていたのに、X さんは仕事の前日にしかも口頭でのやり取りのみで作業時間を午後からとしており、時間の拘束性もなかったものとされました。

 報酬の労務対償性という点からも、事故が起きたのは14時半ぐらいなんですが、事故当日、X さんは午後から仕事したので実質1時間ちょっとしか働いていないんです。なのに、1日分の日当(2万円)がXさんにそのまま支給されていて、このような事情は、使用者の指揮監督の下で一定時間の労務の提供に対する対価とはいえない方に傾く事情となりました。

 さらに事業者性、専属性の観点からも、XさんはW工業の代表取締役であること、本件現場においてW工業の機械を使用していたことは事業者性を肯定し(労働者性を否定する事情)、T からの仕事のみを長期にわたり継続していたとまではいえないことは、専属性を否定する事情でした。

 今回、裁判所は事業者性や専属性に言及していますが、私が以前それらの要素はあくまで使用従属性の補強要素であり、判断が微妙なケースの場合に各要素を判断すると書きました。それは、使用従属性の判断基準①~⑤(労働者性の判断基準第2回、最終回参照)で労働者性が当然認められる場合にはそれらの要素を考慮するまではしないが、それらをみても認めるのが難しい場合には補強要素を考慮するということですね。前回のホステスのケースでは、補強要素までを考慮に入れてやっと労働者性が認められたのに対し、今回の社長さんのケースでは、補強要素までみたけどやっぱり労働者性は認められないことになりました。

 この結果、X さんは「労働者」ではないから、労災保険法の適用がなく、保険給付の請求ができないこととなりました。

 今までみてきたように、法律上の「労働者」かどうかは、単に誰かに雇われているかどうかの視点や契約の名称による一律のもので判断しているわけではなく、使用従属性の判断基準の下であくまで個別具体的に判断されます。また、今回は労働基準法と労災保険法の「労働者」が同じように判断されていましたが、同じ労働関連法でも、労働組合法のように労働基準法の「労働者」とは範囲が違うものもあります。なので、ご自身での判断というのはなかなか難しいと思います。

 みなさんも、日々働いている中で何かお困りのことや疑問に思うことがありましたら、当事務所の代表弁護士 新谷朋弘までお気軽にご相談下さい(相談は初回30分無料です)。きっとお力になれると思います。その際は、私、事務担当の佐々木も微力ながらお手伝いさせていただきます。

 

 

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