【ブログ】相続法改正点「相続分に指定がある場合の債権者の権利行使」

2020-10-30

こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、「相続分に指定がある場合の債権者の権利行使」というテーマについて説明します。この話には、「債務の共同相続」や「相続分の指定」など様々な要素が絡んでくるため少し複雑ですが、一つ一つ順を追って説明していこうと思います。

 

 まず、相続が被相続人の死亡によって発生する(民法882条)ことは以前にも説明しましたが、この相続は、一般に被相続人の地位を包括承継するといわれます。つまり、被相続人の地位がそのまま相続人に移ることになります。そのため、被相続人の積極財産(債権等のプラスの財産)だけでなく、消極財産(債務等のマイナスの財産)も一身専属的なものでない限り当然相続の対象となります。(896条)

 ちなみに、「一身専属的」というのは、その人だけにしか帰属していないもので、例えば、絵を描く債務などがあげられます。

 

 そして、共同相続の場合、債務は、各相続人の相続分に応じて分割承継するのが原則になります。つまり、相続分が1:1のA,Bという2人の相続人がいて、相続の対象となる債務が2000万だった場合、原則として、A,Bはそれぞれ1000万ずつの債務を承継するということになります。この「相続分に応じて」というのが問題になるのですが、それは後ほど説明します。

 

 

 次に、「相続分の指定」という話に入ります。これは、902条1項に規定がありますが、遺言によって共同相続人間の相続分を指定する行為になります。つまり、ほかの細かい規定を考えなければ、A,B,Cという相続人がいた場合に、Aに10割相続させるということも可能ということになります。

 

 

 では、今回の本題に入ります。相続の話になると無意識のうちに積極財産のことを考えてしまいますが、(これは私だけかもしれませんが…)先ほども説明したように相続財産には債務も含まれます。では、この「債務」は相続分の指定通りに承継されるのでしょうか。これが、「相続分に応じて」の問題につながります。つまりこの「相続分」とは、①法定相続分なのか(上記のA,B,Cの例で考えると各1/3ずつ)、②指定相続分なのか(A:B:C=10:0:0)ということです。

 これをどう考えるのかによって、相続債務の債権者としては大きな違いがあります。具体的には、①の場合は各相続人に対して権利行使ができますが、②の場合、債務者はAだけなのでAにしか権利を行使できません。さらに具体的な場合を考えます。Aはそれほど資産がないが、B,Cは資産家だった場合を考えてみてください。債権者としてはより回収が期待できるBやCに対して権利行使したいと考えるのではないでしょうか。でも、これが可能かどうかに違いが出てしまいます。

 

 

 この問題について、従前の運用を見てみましょう。

 ざっくりと言えば、特段の事情がない限り、相続人間においては債務も指定相続分に従って相続されるけれど、それを相続債務の債権者には主張することができないとされていました。つまり、相続人の視点で見ると、②のように債務が承継されますが、債権者の視点で見ると、①のように債務が承継されるということになります。そのため、債権者はBやCにも権利を行使することができるようになります。

 この話は遺留分の観点からも問題点があるのですが、今回その点については省略します。

 

 

 902条の2は、この運用がより一般的な形で明文化されたと言っていいと思います。この条文で規定されていることは2点になります。

 

  • 相続分の指定があった場合でも、債権者は法定相続分に従って(指定相続分に縛られずに)共同相続人に対して権利行使をすることができる。

 

  • 債権者が指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合は、債権者は指定相続分に従った権利行使ができる。

 

 したがって、改正後も、債権者としては指定相続分に強制的に拘束されることはないということになります。

 

 

 

 今回は以上になります。次回は、「特別の寄与」について扱います。

 

 

 

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