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【コラム】続 民法改正

2015-05-25

続 民法改正について

 前回お話ししたこと以外にも,民法の重要な改正がありますので,引き続き検討してみたいと思います。

① 賃貸借

 賃貸借では,敷金の返還を巡って,よく問題になりますが,敷金を定義しました。 そこでは,どのような名義であろうと,賃料債務をはじめ,賃貸借に基づいて発生する債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭と定義していますので,敷金以外の名目で交付される金銭は法律上敷金とされ,返還時期や返還額は民法で定められることになります。

 敷金以外では,保証金,権利金,礼金等が賃貸借契約でよく見られますが,これらも法律に従った形で返還義務を負う可能性が出てきます。

 また,判例で確立された自然損耗,経年変化による損傷は原状回復義務から除外することを明文化します。

 これらは,賃借人保護の観点から整備したものですが,改正によって,月々の賃料相場は上がるリスクも生じます。また,一応最高裁で決着済みの更新料の適法性については,今のところ,民法改正では触れていないようです。

② 保証

 昔は,保証は書面すら必要なく,合意だけで成立するとされていたところ,現民法では書面がなければ成立しないとされています。 しかし,書面を要件としても,軽々にサインしてしまったがために,多額の負債を負い事実上(連帯)保証債務だけで破産に至るケースが後を絶たたないため,公正証書で保証意思を確認できない限り,保証契約は成立しないとしました。

  保証意思を厳格に問うことで,安易な保証を防止する趣旨ですが,事業の借入のための保証に限定されています(住宅ローンの保証やプライベートな借入などは含まれない)。 また,会社が借入れを行う際に取締役が保証する場合や主債務者の事業に従事している配偶者が保証する場合など金融の必要性が高い場合には,現行法通り書面でよいとされました。

  なお,保証契約そのものと保証意思の確認は別ですから,保証契約そのものは公正証書で作成する必要はございません。 公証人の方々としては,新たなビジネスチャンス到来といったところでしょうね。

③ 法定利率

 法定利率は,民法では年利5%,商法では6%と設定されています。 しかし,これを,民法上は3%として,商事法定利率は廃止することとしました。 この低金利のご時世,利率が高すぎるとのことですが,これは実務上一番問題かもしれません。

 法定利率は,遅延損害金の基準にもなっており,訴状起案するときには,請求の趣旨には確実に記載しますので,改正を知らずに,「年5分(6分)の割合による金員の支払いを求める」とか書いて出すと,裁判所から補正を求められます。 しかも,3年ごとに見直す方向で検討されているらしく,金利について常に関心を持つ必要があります。

④ 瑕疵担保責任

1) 現民法では,大論点だった瑕疵担保責任。司法試験受験者なら当然に理解しておく必要があった重要論点です。

 周知のとおり,瑕疵担保責任の法的性格から問題になり,それと関連して瑕疵修補などの追完請求権の可否や損害賠償の範囲,時効等様々な論争がありましたが,このたびの改正で,判例,通説的理解だった法定責任説を放棄し,契約責任(債務不履行の特則)という理解のもと,条文に変更を加えています。

 隠れた瑕疵という法律用語はなくなり,隠れていようがいまいが,当該物の種類,品質,数量において契約の内容に適合しないときには,債務不履行責任が生じることを前提に,代替物の引き渡しや目的物の修補などの追完権を明文で認めています。

 また,解除や損害賠償請求権も認められることが法定されます。契約責任説の論理的帰結として,損害賠償の範囲は信頼利益のみならず履行利益まで及ぶということになるでしょう。

2) さらに,請負の瑕疵担保責任の規定はほぼ削除されるようです。

 現行法では,請負契約の担保責任は,要件や解除,時効などの点で特有の規定がありましたが,基本的には売買の規定で対処するようです。 すなわち,請負人は種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に,責任を負うことになります。

 解釈上問題になっていた瑕疵が重要でない場合において,その修補に過分の費用を要するときには修補請求を制限する規定(民法634条)や土地の工作物については解除ができない規定(民法635条但書)はなくなりますので,要は請負人の仕事が契約内容に適合しない場合には,建物の建築だろうが解除し,建て直せといえることになります(但し,軽微な不履行は除く)。 

 また,請負人の仕事が未完成であっても,一定の要件のもとで,途中までした仕事完成とみなして,その限りで報酬請求することができるという規定を置きました。 請負契約を巡る裁判でよく争点になる仕事の完成,報酬の支払いを拒むための口実として何かとケチをつけて仕事の未完成を主張する注文者がいますが,当該規定により,途中放棄の場合でも,未完成部分をその限りで完成として,注文者が利益を受ける程度で支払いを請求できます。

 そもそも,完成の定義自体が曖昧で,未完成だから全額の報酬を拒むというのはいかがなものかとは思っていましたが,本改正により,当該争点の扱いも変わってくることが想定されます。この規定ができても,出来高で,報酬を支払う特約は契約書に入れておくべきでしょう。

アトラス総合法律事務所 弁護士 清水 祐

【コラム】民法改正

2015-05-19

民法改正について

 

 第189回通常国会に民法(債権法)の改正案が上程され,審議しているようです。

 まだ決議されたわけではありませんが,実現すれば,民法の大改正となり,実務においても従来の民法の知識では対応できないため,改正の内容については弁護士の間でも重要な関心事となっています。

 文献やニュースを通じて伝わってくる限りですが,特に重要な変更について,述べていきたいと思います。

① 錯誤無効

 司法試験を始めれば,まず最初に学ぶであろう錯誤無効。

 錯誤の定義や要件については理論的にも議論のあったところですが,所謂動機の錯誤を明文で錯誤に加えた点が重要です。 

 意思表示は動機から始まり,効果意思,表示意思,表示行為というプロセスをたどりますが,動機は意思を形成する前提に過ぎず,意思表示の本質的要素ではないとされていることから要素の錯誤ではないと考えられてきました。

 ただ,動機が意思表示の内容となっており,相手方が認識しうる場合には錯誤無効の主張を認める判例が確立していましたが,その判例を明文化するようです。しかも,錯誤は無効ではなく,取消事由という位置づけですので,詐欺の場合と同じになります。

 錯誤が無効ではなく取消事由にとどまることになると,錯誤と詐欺の関係や錯誤と瑕疵担保責任の関係なども整理する必要がありますね。

 また,表意者本人に重過失があった場合には錯誤取消はできないだけでなく,相手方が表意者の錯誤を知っていた時や重過失があった場合には,錯誤取消はできるようになります。

 従来から,錯誤無効は認められてしかるべきとされていた共通錯誤も条文で明らかにされ,錯誤取消の対象となるようです。

② 債務不履行に基づく解除

 債務不履行に基づく解除の要件は,債務の不履行,帰責事由,相当な期間を定めた催告が代表的な要件事実でしたが,帰責事由は不要となります。

 現実には,債務不履行があるのに,帰責事由がないということはほとんどないので,実体として変化はありません(帰責事由はその不存在を債務者側が主張立証しなくてはならないですが,まず認められず,せいぜい,債権者側の過失相殺につながる程度)。

 もっとも,債権者側に帰責事由があれば,債権者は解除できないことが明示されるそうです。 また,明文で一定の要件のもと,無催告解除も認められることになりました。

 無催告解除は,契約書の特約などでよく定められていますが,法律で無催告解除の要件が詳細に定められるとなると,それ以外の場合に特約で無催告解除の条項を認めるかは難しくなるのではないかと考えられます。

③ 時効

 時効については,ずいぶん前から短期消滅時効(民法170条から174条)の廃止は言われてきましたが,主観的起算点が導入されます。

 現行法上,通常時効の起算点は権利を行使することができるときから進行し,期間は10年ですが,それに加え,権利者が権利行使することができることを知った時から5年で時効により消滅します。

 例えば,100万円貸して,弁済期を1年後としたら,当然貸し手側は弁済期を知っていますので,今まで弁済期から10年間は時効消滅しなかった権利が,半分の期間で消滅することになります。

 契約上の債権の場合,権利者はいつから権利行使できるかを知っていますから,ほとんど5年間で時効になりますので,商人も非商人も変わらなくなりますね。そこで,商事消滅時効(商法522条)も改廃も検討されています。

④ 相殺

 相殺については,やり返し防止の観点から,不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺することは判例上否定されてきました。

 例えば,お金を貸してから,返さない腹いせに暴行をし,被害者から損害賠償請求をされても,治療費や慰謝料などは貸金と相殺することは認められないとされてきました(薬代は現金で)。

 しかし,相殺禁止の対象となる受働債権は,悪意による不法行為に基づく債権だけに限定することになりました。これにより,よく問題になる交通事故による相互損害賠償の相殺は適法になり,あえて合意による相殺を求めたり,迂遠なお金のやり取りをする必要はなくなりました。

⑤ その他

 瑕疵担保責任も,判例,通説(?)的立場だった法定責任説の理解を放棄し,契約責任(債務不履行の特則)という位置づけのもと,抜本的な改正がされています。

 保証の厳格化(書面ではなく公正証書により作成することが例外を除き義務付けられる)も実務に大きな影響を与えます。

 債権者代位や債権者取消権については,債務者の管理処分権は存続し(この点は従来の判例に反します),債権者代位訴訟,取消訴訟では,債務者に対する訴訟告知が義務付けられます。

 他にも気になった改正は多々ありますけど,従来の民法の争点に決着をつける形の改正や判例を明文で確認するなどの改正が多く,既存の知識を踏まえて対応できると思われます。会社法の大改正の方が驚きました。

 ただ,現在司法試験受験中の学生さんは,結構大変かも。民法は配点高いですからね。

 

                     アトラス総合法律事務所 弁護士 清水 祐

 

 

 

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