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【ブログ】典型契約⑧

2019-05-09

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。

 今回から民法の典型契約のうち,役務型といわれる類型の説明に入ります。一発目は「雇用」です。雇用は,社会生活の中でも生活の基礎となる非常に重要な契約といえますが,民法はどのように定めているのでしょうか。

 民法623条は,「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって」雇用の効力が生じることを定めています。ここでも贈与や売買や賃貸借と同様に,「ここで働きます。」「その労働に対して報酬を支払います。」という意思の合致のみで契約が成立します。

 ところで,今後お話させてもらう予定ですが,雇用と同じく他人の役務を目的とする契約類型は他にもあり,それらの区別はときとして微妙なものもあります。その中でも雇用は,雇われる人が雇う人に対して従属的である点が大きな特徴といえます。どういうことなのか,ラーメン屋の事例でいえば・・・
 
Xは,念願のラーメン屋の開店にあたり従業員を雇う必要があると考え,ラーメン屋の求人の募集を見て応募してきたE君と面接し,E君は週5日,1日8時間労働のシフト制でXのラーメン屋に勤務することを約束し,Xは報酬として月給25万円を支払うことを約束した。

 ここでは,E君はXの指揮の下,ラーメン屋で働くことが前提となっており,E君はある程度Xの指示に従うことが契約の内容となっている,といえます。雇用は,役務を内容とする契約ですが,今後説明する請負(民法632条)などとは業務の独立性がない点が大きく違います。また,比較という点で言えば,雇用は労務の提供それ自体に価値を見出していることから,労務の成果がどうであれ報酬がもらえることも請負とは異なります。

 この役務型の契約類型は,他の類型と比較しながらみると面白いかもしれませんね。
 
 

【ブログ】典型契約⑦

2019-04-09

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。今日は,民法の典型契約のうち,賃貸借について説明していきたいと思います。

 民法601条は,「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対して賃料を支払うことを約すること」で賃貸借契約の効力を生じる,とあります。「使用」貸借が無償で物を貸す・借りる契約であるのに対し,「賃」貸借は物の貸し借りにおいて「賃料」を支払う点が大きく違います。
 アパートやマンションを借りる場合や,レンタルショップでDVDを借りる場合にはお金払いますよね。賃貸借は私たちが生活する中で関わりの深い契約類型の一つといえます。例のごとくラーメン屋事例で言えば,

 ラーメン屋を開業したいXは,駅前の物件でいいところはないか探していたところ,神田駅から徒歩1分の場所にあるラーメン屋に最適な店舗物件を見つけ,所有者Dとの間で当該物件を賃料月額50万円で借りる合意をした。

 法律上は,当事者の合意だけで契約が成立し,書面の作成や実際の物件の引渡しは賃貸借契約成立に必要ではないことになります。「そうなの?」って感じしませんか。
また,前回説明した使用貸借では物を引渡したときに契約が成立することになっており,この点も使用貸借と異なります。一体どうしてなのでしょうね。この辺の話はまた別の機会に一緒に考えてみたい,と思います。

今回で物の利用型である「貸借」の契約類型の説明は終わり,次回からは別の類型の契約の説明に入ります。どうぞお付き合いを。

 

【ブログ】典型契約➅

2019-04-01

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。今回は民法が定める典型契約のうち,使用貸借(593条)について説明していきます。

 まずは条文の確認から。民法593条は,「当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還することを約して相手方からある物を受け取ることによって」使用貸借契約の効力が生じる,となっています。ここでは,「無償」という点がポイントですね。でも日常生活の中で,タダで人から物を借りるってどんな場面ですかね。
例えば,隣の席の人に消しゴム貸してもらって返すとかですかね。ラーメン屋の事例だと・・・。

 ラーメン店の店主Xは,その日シフトに入っていたアルバイトが突如休みになったことから1人で店の営業をしていたところ,皿洗いまで手が回らず,次のお客に出すラーメンどんぶりがなかった。そこでXは,店の隣で別のラーメン屋をやっている弟Zのところへ急いで行き,「ちょっと店のどんぶり足りなくなったから貸してくれ。後で返すから。」と言い,Zは「はい,兄貴。これ貸すから後で返してよ。」と言ってXにどんぶりを渡した。
 そして,Xは,Zから借りたどんぶりをお店のラーメンどんぶりとして使用し,洗ってZに返した。

 ここでは,XがZからラーメンどんぶりを受け取った時点で契約の効果が発生しています。なんだか贈与や売買のときと違いますね。
 また,借りた物を返すにあたっては,一般的に借主には目的物を元の状態に戻す必要があるものとされ(原状回復義務といいます。),どこまでの義務があるのかは個々の目的物や当事者のやり取りから判断されます。今回のケースでは,ラーメンどんぶりとして一度使用したものを洗わずにそのまま返すというのは貸したZとしては納得いくものではないでしょうから,契約内容としてある程度キレイな状態で戻すことが求められそうです。

 次回は,みなさんの日々の生活の中でなじみの深そうな賃貸借について取り上げます。
 
 
 

【ブログ】典型契約⑤

2019-03-29

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。前回までの私のブログでは,典型契約のうち,贈与,売買,交換という財産権の移転を伴ういわゆる移転型の契約類型を説明してきました。今日からは,別の類型である利用型の典型契約を説明していきます。

民法が定める典型契約には「何らかの物の利用を目的とする」契約類型があり,消費貸借(民法587条),使用貸借(593条),賃貸借(601条)があります。いずれも,貸す,借りる,という漢字がありますね。今日は消費貸借をみていきます。

民法587条をみると,「当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他のものを受け取ること」によって消費貸借契約の効力が生じるとあります。
同じ種類,同じ品質の物を同じ数量で返す約束の下で目的の物を受け取るということですね。代表的なものとしてはお金の貸し借りが挙げられますが,民法の条文によれば「物」が対象なので,消費貸借契約の対象は金銭に限られません。

ラーメン屋の例でいえば・・・
A君とA君の友人B君は,ラーメン屋に行きました。A君はラーメンと餃子とビールのセットを頼み,B君はビールとラーメンのセットを頼みましたが餃子は財布と相談した結果,我慢しました。
しかし,ビールと餃子とラーメンを一緒に食べることに最高の幸せを感じるB君は,A君が餃子を食べているのを見て,とてつもなく餃子を食べたい衝動に駆られました。
そこでB君はA君に対し,「餃子を1つくれないか,今度この店に一緒に来たときに1つ返すから。」と言い,A君は「わかった,はい。」と言ってB君に餃子を1つあげました。

ここでは,A君とB君の約束の餃子は同じお店の同じメニューの1個の餃子であり,同種同等同量の「物」を返す約束の下で餃子を受け取っていますので,消費貸借契約といえます。ただ,捉え方によっては以前説明した贈与や交換などの他の契約類型ともとれそうな,微妙なケースではありますね。

次回も典型契約について説明していきます。典型契約は13種類ありますのでまだ半分以上説明が残っています。どうぞお付き合いを。
 
  

【ブログ】典型契約④

2019-03-20

典型契約④

こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。今回も,前回に引き続き,典型契約の一例を紹介したいと思います。

前回までに紹介した,贈与,売買と同様に物を移転する形の典型契約として,「交換」があります。交換というと何か聞いたことありそうなワードではありますが,民法にしっかりと明記されていますので,一緒にみていきましょう。

民法586条1項は,「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約すること」で交換契約の効力が生じるとあります。ということは,日常的に使う意味での交換,例えば赤ちゃんのおむつ交換などは,赤ちゃんから何か財産権を移転するものではなく,民法上の「交換」にはあたらなそうです。また,「互いに金銭の所有権以外の財産権を移転」とあるので,売買のように一方が金銭を支払うものとは異なる類型になります。

ラーメン屋の事例で「交換」の例を考えてみます。

司法試験受験生の苦学生A君は,ラーメン屋店主Xの作るラーメンを食べたかったが所持金がなかったことから,Xに対し,「この本をあげるからラーメンを食べさせて下さい!」と言い,Xは,「しょうがねぇ,いつも来てくれているAの頼みだ!その本をもらうから,ラーメン食っていきな!」と言った。
ここでは,金銭の所有権の移転はなく,A君は本,Xはラーメンという財産権の移転を約していることになり,交換契約といえます。

次回も,民法が定める典型契約の類型を紹介していきたいと思います。

【ブログ】典型契約③

2019-02-20

こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。
 前回は,民法の典型契約のうち,贈与(民法549条)の事例を紹介しました。今日は,みなさんにとっても日々の生活の中で関わりの深い,売買契約(民法555条)をみていきます。

 まず,条文をみてみますと,「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し,相手方がこれに対してその代金を支払うことを約すること」で売買契約が成立します。贈与の場合もそうなのですが,これ売ります,これ買います,という意思の合致のみで契約が成立します。しかし何か違和感ありませんか。というのも,この条文によれば,実際に物を渡すことも,実際にお金を支払うことも契約の成立には必要ではないことになります。

 ラーメン屋の事例でいえば,ラーメン店の店主Xが製麺所Yとの間でYから麺を仕入れる代わりにXがその代金を支払う合意をした,時点で契約が成立します。その後はお互いに,店主XはYに代金を支払うこと,製麺所YはXに麺を納入すること,が契約内容になり,XYは合意した契約内容に拘束されることになります。

 次回以降も私のブログでは,典型契約の各類型を説明していきます。

  

【ブログ】典型契約②

2019-02-05

 こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。
前回の私のブログでは,私たちの生活に関係の深い法律として民法があること,民法は契約類型をいくつか明記しており,それは典型契約と呼ばれていることを説明しました。
今日は,それら典型契約のうち,贈与契約を民法の条文とともに見ていきます。

贈与契約(民法549条)とは

 民法の条文をみると,「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすること」によって,贈与となると書いてあります。何のこっちゃって感じですよね。例によって,ラーメン屋の事例で説明します。

 事例:司法試験受験生のA君が2018年度の司法試験に合格し,A君がよく行くラーメン屋の店主Xが,A君が司法試験に合格したお祝いに,「お金はいいからこれ食べな!」とラーメンを無料でA君に提供したのに対し,「ありがとうございます!頂きます!」とA君はそれを受け取った。

民法の条文に引き付けると,この事例では,店主XのA君に対するラーメンの無料提供の意思の表示,「お金はいいからこれ食べな!」という発言が,「自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示」したことになります。これに対し,A君がラーメンを受け取る意思の表示,「頂きます!」という発言が,「相手方が受諾をすること」にあたります。

次回も典型契約の各種類型を,ラーメン屋での事例を元に説明していきます。

 

【ブログ】再逮捕

2019-01-21

こんにちは、東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の志喜屋(シキヤ)です。

今回は、前回お話しした逮捕に関連して、再逮捕についてお話しします。

・再逮捕の禁止
いったん逮捕が終了して身体拘束を解かれた被疑者を、同じ事実で再び逮捕することは、原則として許されません。なぜ再逮捕が原則として許されないにかといいますと、もし同じ事実で逮捕を繰り返せるなら、前回お話ししたように、法律が逮捕・勾留について定めた厳しい時間制限が無意味になってしまうからです。

・再逮捕禁止の例外
もっとも、再逮捕禁止の原則にも、一定の場合には例外が認められます。なぜ例外が認められるのかといいますと、再び身体拘束をして捜査を行う必要性が生じる場合があることは否定できず、また、原則として禁止されている趣旨は身体拘束の不当な蒸し返しを禁止することにあるので、それに当てはまらないのであれば再び身体拘束を認めても支障はないからです。

・再逮捕が認められるには?
まず、①新しい証拠の発見などにより犯罪の疑いが復活する、逃げたり・証拠を隠したり壊したりするおそれが再び発生するなど、前の逮捕終了後の事情変更により再逮捕しなくてはならない必要性が生じたことが要求されます。
次に、②犯罪の重さや疑いの程度などの事情から、被疑者の利益を考えてもなお再逮捕は仕方ないといえる程度の高い必要性が認められなくてはなりません。
最後に、③原則禁止の趣旨を害してはならないので、前の逮捕中の捜査経過などにも照らして、再び同じ事実のために逮捕することが不当な蒸し返しに当たらないといえなければなりません。

・再逮捕と別件逮捕
ニュース事情を盛り上げているカルロス・ゴーン氏について、報道などでは特別背任の疑いで再逮捕されたと言われていますが、あれは本当に再逮捕といえるのでしょうか?
まず、ゴーン氏は最初に金融商品取引法違反の疑いで逮捕されていますね。次に、特別背任の疑いで逮捕されています。この、金商法違反の逮捕と特別背任の逮捕は、異なる事実によるものです。
再逮捕は、同じ事実で再び逮捕することをいいますので、特別背任の疑いによる逮捕は再逮捕とはいえません。報道で再逮捕といわれているのは実は、別件逮捕のことをいいます。

次回もぜひ読んで下さい。

【ブログ】逮捕と勾留

2019-01-08

初めまして、東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の志喜屋(シキヤ)と申します。
 
私は、映画・ドラマが好きでほぼ毎日何かしらの映画やドラマを観ています。その中でも特に刑事ものが好きで、刑事手続きについて関心を持つようになりました。

今日はその刑事手続きの中の、逮捕・勾留についてお話しします。一躍時の人となったカルロス・ゴーン氏の件について、逮捕・勾留はニュースで散々取り上げられていますので、皆さんも興味深い話題なのではないかと思います。

まず、逮捕とは、捜査機関(警察、検察)または私人によって、被疑者が逃げたり、罪証(証拠など)を隠したり壊すのを防止するため強制的に身柄を拘束する行為をいいます。
次に、勾留とは、逮捕された被疑者についてさらに身柄の拘束を継続することをいいます。これは、検察官が請求し、裁判官が勾留状というものを発して行います。

逮捕と勾留の違いについてお話しします。逮捕と勾留の最大の違いは、身体拘束の時間の長さです。逮捕が最大72時間であるのに対し、起訴前の勾留は最大20日間、起訴後は、2か月以上身体拘束がなされる可能性があります。
また、逮捕は、身体拘束の時間が短い代わりに、逮捕の違法性を争う手段がありませんが、勾留は、準抗告や勾留の取り消しを請求することによって違法性を争うことができます。

今後も法律の話をできるだけかみ砕いて書いきますので、ぜひ読んでいただけたらと思います。

 

【ブログ】典型契約とは

2018-12-10

こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所,アトラス総合法律事務所の佐々木です。

以前,契約がキチンと履行されない場合の「債務不履行」について,私の好きな食べ物がラーメンなのでラーメン屋さんでの注文を事例として説明しました。
そして,ラーメン屋さんでラーメンを注文しラーメンの提供を受ける場合のように,特に意識してはいないけれども,私たちは生活の中で様々な契約を結んでいることも書きました。

そんな,私たちが生活の中で知らない間に触れている法律として,民法があります。そこで民法をみてみると,私たちの生活に関係する契約類型をいくつか抜き出して明記しており,民法に記載のある契約は典型契約といわれています。
典型契約としては,贈与(549条),売買(555条),交換(586条1項),消費貸借(587条),使用貸借(593条),賃貸借(601条),雇用(623条),請負(632条),委任(643条),寄託(657条),組合(667条1項),終身定期金(689条),和解(695条)があります。何だかあまり聞いたことがないような契約名称もありますが,これらは一体どんな契約なのでしょうか。本当に現代において典型的な種類の契約なのでしょうか。

次回の私のブログでは,上記の典型契約の中身を少し具体的にみていきます。

 
 
 

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