【コラム】制限行為能力者制度
制限行為能力者制度について
こんにちは。はじめまして、東京の神田にあるアトラス総合法律事務所の加藤です。
はじめましてなので軽く自己紹介をさせていただきたいと思います。
自分は今大学の四年に在籍していて法学部です、この4月から都内のロースクールに通う予定です。
中学の頃からテニスをしていて、ディズニーが大好きです。今は入園制限があり、この時期を乗り越えて行けることを楽しみにしています。すごく猫派です。
さて今回、制限行為能力者制度についてお話ししたいと思います。
長くて堅苦しい名前の制度ですが、できるだけ分かりやすくお話ししようと思いますのでどうぞ最後までおつきあいください。
皆さんは普段、何気なくコンビニでジュースを買ったり、観光でホテルに泊まったりしていますよね。
でもそれって誰もができることなんでしょうか。
実はこれには、法律上の「行為能力」が関係してきます。
まずこの「行為能力」とは、法律行為を単独でなすことのできる能力ないしは地位をいいます。
ですので、この「行為能力」がない、例えば小学生のような未成年の子供や重度の認知症の方はできる法律行為に制限がうまれてきます。
このように行為能力に制限がある人のことを法律上「制限行為能力者」と呼びます。
そして、そのような制限行為能力者は一般に世の中を生きづらい立場にあります。なのでその人たちの法律行為を手伝う別の特定の人を定めましょう、というのが制限行為能力者制度です。
そして、基本的に制限行為能力者がした法律行為は取り消すことができます(民法5条2項、9条等)。子供や認知症の方が散歩、徘徊帰りに何千万もする土地を買って来たら困りますよね。まぁそんなことはないとは思いますが、そんな時は取り消すことができます。
法律で定められている制限行為能力者制度は概ね以下のもので、概観をご紹介します。
- 未成年者
皆さんもご存じの通り、日本の法律上人は年齢20歳をもって成人とされます(民法第4条)。よって、20歳未満の人は未成年者です。
この未成年者は原則契約などの法律行為をするには法定代理人の同意が必要です。では子供は親の同意がないと駄菓子も買えないのかと思われるかもしれませんが、原則には例外が付き物です。例外として、法定代理人が処分を許した財産は自由に処分ができる(自由に使える)ことになっています(民法第5条3項)。なのでお小遣いを貰った子供は駄菓子が買えます。
- 成年後見人
では、自分の名前も分からない重度の認知症の方はどうなのか。ここで有用なのが後見人を定める手続きです。
後見人とは、上述した法律行為を手伝う人のことです。後見人は任意にも定めることができますが、裁判所による後見開始の審判を受けるのが一般的です。後見開始の審判を受けた人(上の例でいう認知症の方など)は被後見人といいます。
ではどのような人が被後見人になるのかについて、民法は「事理弁識能力を欠く状況にある者」としています。
「事理弁識能力」とは、自分のした行為の結果が法的にどのようなものかを認識できる程度の能力です。少しややこしいですが簡単な例でいえば、このジュースを買えば(売買契約)その代わりに代金を支払う義務(代金支払債務)を負うなぁ、などといったことです。
- 保佐人、補助人
でも、さすがに自分の行為について法的にどうなるかわかりそう、でもそのまま放置しておくのは不安な人(例えば軽度の認知症等)はどうするのか。
このような場合のために上記の事理弁識能力の程度の差で段階的に法は各制度を設けています。具体的には、事理弁識能力が著しく不十分な人は保佐人を、不十分な人は補助人を置くことができます。
もっとも、申立全体の8割程度は後見制度であり、保佐、補助は未だ圧倒的に少ないといわれています。
〈意思能力について〉ここで、「意思能力」というものを聞いたことがある人は何が違うのか、と思うかもしれません。これに関しては、その能力の意義、程度は同じであると考えられています。もっとも、意思能力の無い者のした法律行為は無効であるとされているので、取り消さずともその者がした契約等は効力を生じないのです。また、意思能力の有無の判断も実質的です。つまり、能力の判断の要素や効果が異なるので完全に同一とは言えません。
どうでしょうか、なんとなく制限行為能力者制度が分かっていただけたでしょうか。
後見人等の制限行為に関して、また、それ以外でも法的なお困りごとがございましたら、お気軽にアトラス総合法律事務所にご相談ください。
以上