【ブログ】労働者性の判断基準 (最終回)
こんにちは。東京都千代田区神田にある法律事務所、アトラス総合法律事務所の佐々木です。
前回の続きです。
前回はどんな人が法律上の 「労働者」 にあたるかという 「労働者性」 の判断にあたり、使用従属性の判断要素 ①~⑤、補強要素 ア~ウ があることを説明しました。今回はその各要素の内容を見ていきたいと思います。
1 使用従属性の判断要素
① 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由
仕事の依頼等に対して、労務提供者がやるかやらないかを決められるのか。
② 業務遂行上の指揮監督の有無
仕事をする上で注文主からある程度の指示は通常あると思いますが、業務の内容および進め方に及ぶ程度にまで具体的な指揮命令を受けているのか。
③ 時間的・場所的拘束性の有無
勤務場所や勤務時間の指定や管理がされているのか。
④ 代替性の有無
本人に代わって他の者が労務を提供することを認められているのか。
⑤ 報酬の労務対償性
報酬の性格が、使用者の指揮の下に一定時間労働を給付していることに対する対価といえるか。う-ん、わかりにくいですよね。例えば、業務の結果に対して支払われるものか、業務それ自体を行うことに対して支払われるのかとか。また、定期的に一定の労務提供があって、一定の額を支払われていたりすると、それって結局賃金と一緒じゃないの?とかですね。経済的従属性なんて言い方をしたりするみたいです。
これらの各要素を考慮して使用従属性が判断されています。とはいっても、実際の裁判では毎回必ずしもこれら全ての要素を用いた判断がされているわけではなく、事例に応じて全部又は一部の要素から判断されています。
2 補強要素
ア 事業者性の有無
これは、本人所有の機械や器具がすごく高かったりすると、自分の責任で仕事してるんじゃないのかって話になります(事業者性)。
イ 専属性の程度
他の仕事先で仕事することが事実上可能かどうか。現実的に他での仕事は可能じゃなければ労働者性を肯定する要素となります。
ウ その他
他にも、採用される選考過程が正社員と一緒とか、源泉徴収を行っているとか、社会保険の適用があるとか様々な要素が考慮されます。
以上の要素から最終的に労働基準法上の「労働者」といえるかが判断されます。
3回に分けて法律上の 「労働者」 とは何かについて書きましたが、これを念頭に入れつつ、次回は実際に 「労働者性」 が問題となった事案を見ていきたいと思います。
・・普段よりだいぶ長くなってしまいました・・。最後までお付き合いいただきありがとうございました。