【ブログ】建物明渡 第二回
神田の弁護士が自由奔放につぶやくブログ
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皆さん,こんにちは。弁護士の清水です。
今回は建物明渡しの第二回,前回の続きです。
では,更新拒絶や解約申し入れの正当事由はどのように,判断されるのか?
借地借家法28条で,建物賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか,建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物の現況,建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して,正当の事由があると認められる場合とされています。
1 建物賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
賃借人とすれば,建物が必要で借りているのであって,他に転居先があるとか,親と同居できるとかは解約や更新拒絶を正当化する理由にはなりません。賃借人を退去させてもやむを得ないほどの切迫した事情が賃貸人になければならないと思われます。
賃貸人が,現在の住居を失い,解約して引っ越さなければならないほど苦境にあるとか,賃貸人の家族の住まいが喪失し,居場所がないなどが考えられますが,借地借家法が賃借人保護のための法律であることに鑑みると,賃貸人の一方的な都合だけでは正当事由が認められることは少ないでしょう。
2 建物の賃貸借に関する従前の経過
これは,契約を締結してから,賃料の支払いが滞ってないか,契約目的,年数等などからもう解約を認めてもいいと思われる事情があるかを判断する要素だと思われます。
まあ,一番重要なのは賃料の滞納状況でしょうね。全く滞納歴がなく,誠実に決められた賃料を支払ってきたのなら正当事由を基礎づけるのは困難でしょう。
3 建物の利用状況及び建物の現況
主に賃借人が,住居を通常の用途に従って利用してきたか否かが問われます。
勝手に,改築したり,汚損,毀損によって,部屋が荒廃するようなら正当な事由は認めやすくなるでしょう。なお,特に賃貸マンション等では近隣トラブルも考慮要素になります。周辺住民や近隣からクレーム,苦情が絶えない賃借人に対しては正当事由は認められやすくなるでしょう。建物の現況はよく建て替えや増改築,リフォームの必要などと関連しますが,築年数や建物の性質,地理的状況などから賃貸借契約の継続が妥当なのかが問われるでしょう。
最近では,建物が耐震基準(昭和56年施行)を満たしていないため建て替えた方がいいなどと主張して,正当な事由を訴えていく場合が多いです。
4 建物の賃貸人が建物の明け渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
これは,立退料が典型ですが,引越し先が決まるまでの期間をフリーレントするとか,滞納賃料を免除するなどの便益も含まれます。立退料が高ければ高いほど,更新拒絶や解約申し入れは認められやすくなりますが,立退料さえ相当額用意すれば退去させられると思ったら大間違いです。この条件は,補完要素に過ぎず,1,2,3の考慮要素において,賃貸人の側に一定の正当性があることが前提ですので,立退料を高く積めば正当な事由は認められるということにはなりません。
もっとも,極端に高額な立退料なら,賃借人が合意解約に応じてくれるとは思いますがね・・。
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