【ブログ】正当事由(借地借家法28条)と立退料
2016-08-31
みなさん,こんにちは。アトラス総合法律事務所の山本です。
今回は,正当事由について実際の裁判ではどのような主張がされているのかを調べてみました。以下,具体例を挙げてみます。
① 建物の賃貸人が建物の使用を必要とする事情
大家さん側の主張としては,ビルのオーナーさんが,「ビルが老朽化して耐震性に問題があるから,建替える必要がある。」と主張しているものが多くありました。
賃借人側の主張としては,建替えなくとも補強工事で済むではないかという反論がみられます。また,例えば店舗として借りている場合に,他の場所で営業しても意味がないという事情や,会社の本店や事務所として借りている場合に,移動することになると会社の業務に著しい支障が出るといった事情が挙げられます。
② 建物の賃貸借に関する従前の経過
これについては,従前の更新時の話合いの状況や,敷金や保証金の支払いの有無,借主が家賃を滞納している等の事情が挙げられます。
③ 建物の利用状況
これについては,たとえば,建物の規模や状況,契約に従った利用がなされているか否かが問題となります。
④ 建物の現況
これについては,たとえば,建物の老朽化や修繕費用がいくらかかるかなどの事情が考慮されます。
⑤ 立退料
これは,①~④の正当事由の考慮要素とは異なり,正当事由の判断を補完するものとされています。したがって,原則的には,いくら⑤の立退料を多く支払う用意があったとしても,①~④の事情(特に①の事情)がなければ,正当事由は認められないということになります。
以上のように,正当事由は,①の要素を中心に総合的に判断されることになります。
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