【ブログ】遺言書の撤回 2
~東京 千代田区 神田の弁護士新谷朋弘より~
皆様こんにちは,アトラス総合法律事務所代表弁護士のあらやです。今,世間で注目の話題を取り上げ,ブログでつづりたいと思います。
遺言書を撤回する場合に,新たに作成する遺言書の中に「従前の遺言を撤回する」旨の記載が必要であることは前回のコラムで触れましたが,遺言書の中に「撤回する」旨の記載が無くても,従前の遺言が撤回されるケースがあります。
それは,「法定撤回」と呼ばれます。
これは,法律上,遺言者の撤回の意思表示がなされていなくても,一定の事実があった時に,遺言の撤回が擬制される(民法1023条,1024条)と定められております。
具体的には以下のケースに分類されます。
① 前の遺言と内容の抵触する遺言がされた場合には,抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなす(民法1023条1項)。
② 遺言と抵触する生前処分がされた場合には,抵触する部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1023条2項)。
③ 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合には,破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条前段)。
④ 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合には,破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条後段)。
例えば,遺言書の記載に「不動産をAに渡す。」と書いてあったものを,新しい遺言書の中で「不動産をBに渡す。」と記載があれば,不動産をAに渡す旨の遺言は撤回されたことになります。また,自筆証書遺言を遺言者が破棄しようと思って破り捨てた,ということであれば,その自筆証書遺言は撤回されたことになります。
ただし,遺言書に「撤回」の文言が入っているような明確なケースとは違って,遺言者の態様や主観的な事情,「抵触」の解釈によって,遺言が撤回されたかどうか,後日争いになる可能性は否めませんので,注意が必要です。