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作成日:2021.09.16 最終更新日:2021.09.21

典型契約13類型と非典型契約1類型、理解しやすい具体例付

東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤恭平です。

このコラムでは、民法上の契約類型について、具体例を用いて説明していきたいと思います。より砕けた具体例が気になる方は、対応するブログ記事をお読みください。

突然ですが、「契約」とは何でしょうか。

とりあえずは、「当事者の合意に基づく債権の発生原因」とでも認識していれば大丈夫です。つまり、当事者間の意思が一致していることが前提となり、片方の人の一方的な意思で契約が成立することは原則としてないと言えます。
「じゃあ、当事者の合意に基づかないで債権が発生することもあるのか?」って思った勘のいい方もいるかもしれません。もちろんその場合もありますが、今回はその点についての説明は省略させていただきます。

では、本題に入ります。といっても、ここでは総論としてざっくりと説明をするにとどめ、以下で契約類型ごとに説明をしていこうと思います。

みなさんは、「契約」と言われたら、何種類の契約を想起できますか。
例えば、日常に近いところとしては、「売買契約」なんてものがありますね。また、地方から都心部に出てきている人は家を借りている人が多いのではないでしょうか。これは「賃貸借契約」という類型にあたりそうです。

このように、私たちは日常生活の中で当たり前に契約を締結しているということがわかります。この「契約」には、上に挙げたもの以外にも様々なものがあります。民法典の「契約」の章には13の契約類型が規定されています。これらの契約を「典型契約」又は「有名契約」と呼びます。

典型契約とは、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13類型になります。聞いたことがあるものもあれば、全く聞いたことのないものもあるのではないでしょうか。

典型契約は、この中でさらに分類することができます。今回は詳しい説明は省略しますが、一例だけ挙げておきます。例えば、売買と賃貸借を比べてみると、売買は目的物が自分のものになりますが、賃貸借は目的物を返さなければなりません。つまり、この二つの契約は別々の類型に分類されると考えることができそうです。

しかし、世の中には、この類型に当てはまらない契約もたくさんあります。「典型契約」は、無数に存在する契約類型のうち、典型的なものを挙げただけなので、そのどれにも当てはまらないやつがあるのは当然と言えるのかもしれません。このタイプの契約は「非典型契約」又は「無名契約」と呼ばれます。
 
では、ここから各契約類型について説明をしていこうと思います。

贈与契約

贈与契約は、「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することで成立する契約」です。(民法549条)ざっくりと言えば、「これあげる」というやつですね。

贈与契約は、当事者の合意のみで成立する諾成契約と言われる類型であり、言ってしまえば、口約束でも有効に成立し、贈与者は財産権移転義務を負います。
 
もっとも、贈与契約は書面にしておかないと効力が弱いものになってしまいます。(550条参照)これは、書面を要求することで、権利関係を明確にして後日に紛争を防止するとともに、軽率な贈与の予防が目的と言われています。平たく言ってしまえば、あとで言った言わないの争いが起きないようにする、本当にあげていいのか贈与者によく考えてから行動させるということですね。

贈与契約の具体例としては、親が子供に一定のお金をあげることが挙げられます。また、旅行に行った際に、知人にお土産を渡すことも贈与契約の具体例に当たるでしょう。

売買契約

売買契約とは、「売主が買主に財産権の移転を約束し、買主がこれに対して代金を支払うことを約束することによって成立する契約」です。(民法555条)これは、当事者の意思表示の合致によって成立する諾成契約です。

本屋で本を買う、コンビニでおにぎりを買う、ネット通販など売買契約の具体例は挙げればきりがありません。

売買契約が締結されると、売主も買主もそれぞれある一定の義務を負うことになります。売主としては「財産権を移転する義務」を、買主としては「代金を支払う義務」を負うことになります。その他にも義務は発生しますが、今回は説明を省略します。

本屋の事例で考えてみると、売買契約が成立すると、売主たる書店は本を引き渡さなければならず、買主は代金を支払わなければならないということになります。

売買契約には、付随する様々な問題がありますが、(例えば、不良品を買ってしまった場合など)長くなってしまうため今回は説明を省略します。興味のある方は調べてみてください。

交換契約

交換契約とは、「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約する」契約類型です。いわゆる物々交換というやつですね。

民法には、この契約について直接規定している条文が、586条の1つしかありません。前回の売買契約とは一方当事者が移転させるものが金銭なのか、それ以外の財産権なのかという違いがあります。しかし、逆に言えば差はそれだけであるため、基本的には売買契約の規定が準用され、売買契約と同じように扱えばいいということになります。

具体例としては、クリスマス会でのプレゼント交換なんてものがあげられるのではないでしょうか。

消費貸借契約

ここからは、貸借型契約と呼ばれる類型に入ります。具体的には、「消費貸借契約」、「使用貸借契約」、「賃貸借契約」があります。それぞれの契約の異同については、賃貸借契約のところで説明しようと思います。

消費貸借契約とは、「当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取る」契約になります。(民法587条)
要するに、借りた物をいったん使ってしまって、その借りた物と同等な物を返すということですね。現在では、目的物はほとんどが金銭ですが、制定当時は味噌や米といったものを借りるという場合も想定されていたそうです。

消費貸借契約には、目的物の引き渡しまでして効果が発生する要物型の消費貸借契約(587条)と、引き渡しを必要とせず当事者の合意によってその効果が発生する諾成型消費貸借(書面による消費貸借、587条の2)があります。

まずは、諾成契約としての消費貸借契約から説明します。

合意により消費貸借契約を成立させることを意図した当事者が、その合意を書面によってした場合、目的物の引き渡しをしなくても合意の時点で契約が成立します。この場合、諾成契約としての消費貸借契約が成立することによって、貸主には「貸す義務」が発生します。そして、貸主から金銭等が引き渡されたら借主には「返す義務」が発生します。

次に、要物契約としての消費貸借契約についてです。

これは、借主が目的物を受け取った時に契約が成立します。そして、借主には「返す義務」が発生します。上記の類型との違いは、貸主の「貸す義務」の有無になります。要物契約型の場合、契約が成立するためには目的物を引き渡していることが必要であるため、契約によって、目的物を「貸す義務」が発生するということにはなりません。

消費貸借契約の具体例としては、他人からお金を借りる金銭消費貸借契約が挙げられます。この場合、借りたお金は何か別のことに使って構いませんが、返済期限までに借りたお金を返済する必要があります。

使用貸借契約

使用貸借契約とは、「当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還することを約する」(593条)契約です。

無償とありますが、金銭等の授受がなされていた場合にすべて使用貸借にあたらないというのではなく、実質的に見て使用収益の対価と認められない場合は、使用貸借契約になります。
家族や知人に自分の家を使わせてあげたり、友人から本を借りたり、というのが具体例になります。
 
消費貸借契約は当事者間の合意によってその効力が発生する諾成契約です。そのため、この合意が成立したら、貸主には「貸す義務」が発生します。そして、この合意に基づいて目的物が引き渡された場合には、借主はその目的物を使用収益できるようになります。この「借主の使用収益を妨げてはいけないという義務」も貸主には発生することになります。

他方、借主は目的物が引き渡されれば、それを「返す義務」が発生します。また、借主には、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その目的物を使用収益する義務、いわゆる、「用法遵守義務」が発生します。(594条1項)
これは、他人の物だから変な使い方をしてはいけないというような義務です。

ここからは、今までの話とは少し変わって、契約の終了の話をします。自分の物を期貸しているので、貸した側としては当然それを返してほしいですよね。しかし、貸した側が返してほしいと思ったら必ず返してもらえるというわけではありません。借りている側としても急に返してと言われたら困ってしまいますよね。こういった問題があるので、使用貸借契約の終了について民法にいろいろな規定があります。(597条、598条)

スペースの都合上、すべて説明することはできないのでここでは、簡単に説明します。

まず、借りた側は基本的にいつでも契約を解除することができます。つまり、いつでも返すことができます。多くの場合、この契約は借主が貸してほしいから結ばれます。借りている側が必要なくなったならもうこの契約を存続させる必要はないということです。

他方で、貸している側からの場合は、ざっくりと言えば、①期間が定められていた場合はその期間が経過した時、②使用目的が定められていたらその目的が達成されたとき、③期間も使用目的も定められていない場合はいつでもという感じでしょうか。

また、借りている側が死亡した場合、使用貸借は相続しません。つまり、使用貸借契約は終了します。これは、当事者間の関係を重視したからだと言われます。

貸主としては、仲のいい関係だから無償で自分の物を貸したのであって、その相続人にまで使われ続けるのは嫌だということも十分に考えられますよね。この考えが反映されていると言えそうです。

賃貸借契約

賃貸借契約とは、「当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うこと及び引き渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約する」(601条)によって成立する契約です。

家賃を支払って家を借りるというのが典型的な賃貸借契約です。そのため、家を借りるという事例を前提に話を進めていきたいと思います。

現実の賃貸借には借地借家法という法律が適用される場合も多く、純粋な民法上の賃貸借とは多少異なる場合もありますが、ここでは、特に言及がない限り民法上の賃貸借についての説明をします。

これまで、「消費貸借」・「使用貸借」・「賃貸借」という3つの貸借型契約と言われる契約類型の説明をしました。これらの契約の違いについて賃貸借のところで話をすると言っていたので、ここで簡単に説明します。

まず、消費貸借と使用貸借・賃貸借は、借りたそのものを返すのかどうかという点で異なります。前者は借りたものは使ってしまって、同種・同等・同量の物を返す契約ですが、後者は借りたそのものを返さなければなりません。

また、使用貸借と賃貸借は有償契約か無償契約かという点で違っています。これはざっくりと言えば、賃料を払わなければならないかという点が違っているということであって、払わなければいけないのが賃貸借、払わなくていいのが使用貸借ということです。

ここからは、賃貸借契約の具体的な説明に入ります。

賃貸借契約の成立~継続中

賃貸借契約は諾成契約ですので、当事者の合意によって契約が成立します。そして、契約の効果として、両当事者には様々な権利義務関係が生じることになります。

賃貸人(貸した側)には、ざっくりと言うと、その目的物を使わせる義務が発生します。代表的なところでは、「使用収益させる義務」や「修繕義務」なんかがあります。「使用収益させる義務」は使用貸借のところで出てきた貸主の「貸す債務」と似ていますが、賃貸借契約の場合には、「借主が使用収益できる状態に置く」積極的な義務が発生します。

また、修繕義務とは、「目的物の使用収益に必要な修繕を負う義務」のことを言います。これは、「使用収益させる義務」の一態様ですが、606条1項本文に規定されているものになります。

例えば、借りていた家が台風によって水漏れが発生してしまった場合、このままではその家に住むことはできませんよね。そこで、賃貸人はこの状態を修繕する義務を負うことになります。具体的には、業者等に頼んで水漏れを修繕するといった感じでしょうか。

他方、賃借人(借りた側)にも様々な義務が発生します。

まずは賃料の支払い義務です。民法上は後払いが原則(614条)となっていますが、実際には当事者間の契約で前払いとなっている場合が多いようです。
例えば、令和2年9月分の賃料を支払う場合、後払いの場合は9月の末日に、前払いの場合は8月の末日に賃料を支払うことになるのが一般的かと思います。

また、用法遵守義務も発生します。これは、使用貸借のところでも出てきましたが、「変な使い方はしないでよ」といった感じのものです。例えば、増改築禁止やペット飼育禁止という決まりがあった場合に、これに反すると用法遵守義務違反に当たり得ます。

あとは、契約が終了したら目的物を返還する義務なんかも発生します。このほかにもたくさん義務が発生しますが、この辺にしておきます。

賃貸借契約の終了

賃貸借契約に期間が定められていた場合、更新がなされなければ、その期間満了によって終了します。
例えば、令和2年10月末日までという内容で賃貸借契約を締結した場合、令和2年の10月末日でこの賃貸借契約は終了します。

また、期間の定めがない場合には、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。(617条1項)もっとも、実際に契約が終了するのはその賃貸借契約の内容によって一定の期間が経過したときになります。(同項各号参照)

ここまでは期間がらみの終了事由ですがここからは少し違います。

まずは、目的物が全部滅失した場合には当然に賃貸借契約が終了します。(616条の2)
例えば、火事や災害で借りていた家が壊れてしまった場合などが当たります。賃貸借契約は目的物を使用収益することを契約の内容とするため、それができなくなった以上契約を存続させる必要はないと考えられているためです。

また、一方当事者の債務不履行による解除もあります。例えば、賃借人が賃料を払ってくれない場合なんかがこれにあたります。貸している側としては賃料を払ってくれない人に貸したくないので、契約を解除して新しい人に貸したりしたいですよね。こういった場合に貸している側から契約を解除することができます。

ここまでの説明を聞いて、「例えば賃料の支払いが1日遅れただけでも解除されてしまったら困る」と思った方もいるのではないでしょうか。

これに関しては心配する必要はありません。詳しい説明は省きますが、「信頼関係破壊の法理」という理論があり、当事者間の信頼関係が破壊されていると言えないような場合には、契約の解除を認めないとされています。もっとも、これは絶対に解除されないというわけではないため、1年も2年も賃料を払っていなかったらもう信頼関係は破壊されていると認定されることは十分にあると思います。

上記は、民法上の原則について説明しているので、借地借家法が適用された場合には異なる規制に服する場合があります。借地借家法に関しては、別の機会で説明をします。

雇用契約

雇用契約とは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」契約です。(623条)

アルバイトや会社への勤務がこの契約の典型例となります。

現実に適用されている労働法制は、労働契約法などの労働法制の適用により民法上の規律と異なる点も存在するため、特に指摘がない場合には、民法上の雇用契約についての話だと思ってください。

雇用契約を締結する場合、雇う側は「働いてほしい」という、雇われる側は「給料が欲しい」という考えを持っているのが通常かと思いますが、民法上は、働いた後に給料を請求することができるようになるというのが原則です。(624条1項)

次は、雇用期間は終了についてです。ここも労働法制による修正は考慮せずに、民法の話をしていきます。

(1)まず、雇用期間が5年を超える場合又は終期が不明確な場合には、5年を経過した後であればいつでも契約を解除することができます。(626条1項)もっとも、この場合、どちら側から解除するのかによって予告しなければいけない期間がそれぞれ規定されています。(同条2項 使用者の場合3か月、労働者の場合2週間)

(2)雇用期間の定めがない場合には当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。(627条1項)もっとも、使用者側からの解約申し入れの場合には一定の規制がなされています。(同条2項、3項)

(3)また、「やむを得ない事情がある場合」には雇用期間が定められている場合であっても直ちに解除することができます。

請負契約

請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」契約です。(632条)

この契約は、名前自体は聞いたことがなくてもみなさんも日常生活の中でそれなりに行っている契約だと思います。具体例としては、建物を建築してもらう際や、クリーニングの時などにこの契約が締結されています。

では、この請負契約について説明していきます。

請負契約は上で説明した雇用契約と雰囲気が似ています。そのため、雇用契約と請負契約の異同についてふれてみます。

まず、類似点から。
これは、役務提供型といって何らかの行為をすることが契約内容になっていることです。雰囲気が似ていると感じたのはこの点が原因だと思います。

次に相違点です。これはいくつかあるのでそのうちの一部のみ説明します。
1つ目は、条文をよく見るとわかることなのですが、請負は仕事を完成させることが契約目的となっています。つまり、請負は仕事が完成しないと報酬をもらうことができないということになります。他方で、雇用契約の場合は、労務の提供さえ行っていれば何か成果を出すことができなかった場合でも報酬をもらうことができます。

2つ目は、契約当事者の関係性です。何となくイメージがつかめると思いますが、雇用契約について被用者は雇用者に対して従属的な地位にあります。他方で、請負契約の場合には、請負人は注文者から独立して仕事を行うことができます。

ここからは請負契約の報酬についての話です。上でも少しふれましたが、請負契約では仕事が完成しなくては報酬を受け取ることができません。(633条参照)しかし、これを貫くと例えば家を完成させるという仕事が99%のところまで完成していたのにも関わらず、それがあと少しのところで壊れてしまった場合、報酬は全くもらえないということになってしまいます。これでは当時間に不公平が生じてしまいます。

そこで、仕事の結果が可分なものであり、その部分で注文者が利益を受ける場合にはその割合分の報酬を請求することができます。(634条)
家を建てる場合に一部で注文者が利益を受けるかはわかりませんが、もし、例えば50%出来上がった時点で上記の要件を満たすのであれば、50%の部分について報酬を請求することができるということです。

委任契約

委任契約とは、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に約し、相手がこれを承諾することによって効力を生じる」契約です。(643条)

委任契約とは、一方が「法律行為」をすることが契約内容になります。具体的には、医師の診察や弁護士の案件処理などを頼むことがこれにあたります。一方で「事実行為」をすることが契約内容になっている場合は、「準委任」といわれます。もっとも、準委任にも委任の規定が適用されます(656条)ので、今回はこれらを特に区別しないで説明していきます。

委任契約が締結されると、受任者(一定の行為を頼まれた側)はざっくりと言えば頼まれた行為をする義務が発生します。例えば、委任者(頼んだ側)の利益のために行動しなければなりませんし、委任者の請求があった場合には、状況を報告しなければなりません。

また、委任者は特定の個人を信頼してある行為をすることを頼んでいるため、一定の例外を除き受任者は自分で事務処理を行わなければなりません。(644条の2第1項)これは、考えてみれば当然のことです。例えば医師に診察を頼んだのに、その医師がちょっと忙しいからといって自分の友人に変わりに診察を任せたとしたらとても困りますよね。

ここまでは受任者側の義務の話をしてきました。ここからは受任者の権利、特に報酬請求権の話をしていきます。民法648条1項をご覧ください。

この規定からわかるように、委任契約は無報酬が原則ということになります。ここがこれまでに扱った雇用契約・請負契約と大きく異なる点です。もっとも、特約があれば報酬を請求することはできますし、商人間では当然報酬を請求することができます。(商法512条)

寄託契約

この契約は、雇用、請負、委任と続いた役務提供型契約の最後の類型になります。

寄託契約とは、「当事者の一方があるものを保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる」契約になります。(657条)この場合、物を預けた側を「寄託者」、預けられた側を「受寄者」といいます。

寄託契約とは、ざっくりと言ってしまえば物を預かってもらう契約になります。報酬の有無は契約の成立には関係ありません。

ここからは、寄託物の返還時期に関して民法の規定をみていきます。

まず、寄託者はいつでも返還請求をすることができます。(662条1項)

民法の考え方としては、預かってもらう側がもう返してほしいということならば、返してもらえばよいだろう。もしそれで預かっている側に不利益なことがあれば、それは損害賠償で調整(662条2項)しようということのようです。

これに対して、受寄者は返還時期の定めがない場合はいつでも返還することができますが、その定めがあった場合には、やむを得ない事情がない限りはその期限前に返還することはできないということになっています。(663条)

組合契約

組合契約とは、「各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約する」契約です。(667条1項)

当事者全員が出資をすること、共同の事業を営むことが契約の要素ということになります。そのため、いくら共同の事業を営むことを約束したとしても、当事者1人だけが出資した場合は、組合契約は成立しないことになります。

組合契約はその財産関係についての規定が多いため、財産関係についての民法上の規定を中心に説明していきたいと思います。

組合契約の問題を考える際には、2種類の財産を区別して考えなくてはいけません。1つ目は、各組合員の出資など組合契約により作り出された組合独自の財産である「組合財産」です。2つ目は組合構成員個人の所有する「固有財産」です。これらの区別に注意して以下の説明を読んでみてください。

まず、組合構成員の債権者は、組合財産に対して権利を行使することができません。(677条)したがって、組合構成員の固有財産に対してのみ権利行使することができるということになります。

一方で、組合債権者は、各組合員に対して権利行使をすることができます。したがって、組合財産だけでなく、組合員個人の固有財産に対しても、一定の限度で権利行使することができるということになります。(675条)

また、組合が有する債権を組合構成員は単独で行使することができません。(676条2項)組合債権を行使する際は、構成員全員で行使することになります。

以上の規定から、組合財産が構成員に勝手に使用されないような規定になっていることがわかりますよね。そのことによって、組合財産の流失を防ごうとしているということです。

終身定期金契約

終身定期金契約とは、「当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期的に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付する」(689条)契約になります。
 
この内容についての合意があれば契約自体は成立します。もっとも、一般的には定期金給付をする代わりに、渡す側がもらう側に何かやってもらうという場合が多いようです。

社会保障として公的年金が充実したことなどにより、現在ではこの契約はほとんど使われていません。そのため、この契約についてこれ以上深く知る必要はないと思います。

和解契約

和解契約は、「当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する」契約です。(695条)

和解は既に存在している契約に関する争いを終結させるという性質のもので、当事者間に新たな法律関係を作り出していたこれまでの契約類型とは少し雰囲気が異なっています。

交通事故などでよく耳にする「示談」が和解契約にあたる場合が多いです。もっとも、示談であれば必ず和解契約というわけではありません。

上述の695条をよく見てみてください。「当事者が互いに譲歩」することが要件になっていますね。つまり、片方の当事者だけが一方的に自分の権利を放棄するような場合は、和解契約ではないということになります。

ここからは、和解契約の効果について説明していきます。

和解には「確定効」と呼ばれる効力が存在します。これは、和解の対象とされたことがたとえ事実と反していた場合であっても和解した通りに確定するというものです。言い換えれば、和解の対象となった事項については、仮に事実に反していたとしても、もう一度争うことはできないということになります。

もっとも、この確定効は「和解の対象」となったものについて生じます。そのため、当事者が前提として争わなかったことについては、錯誤等を主張して争うことが可能です。

判例には、特選ジャムを渡すという和解契約をしたが、実際に渡されたジャムの品質が低いものだった場合に錯誤の規定が排除されなかったというものがあります。興味がある方は、ぜひ実際の判例を見てみてください。

非典型契約

非典型契約とは、その名の通り典型契約ではない契約類型です。これについて規定した民法の条文はありません。もっとも、民法に契約類型が規定されていないからといって、そういう契約が直ちに無効ということはありません。契約自由の原則からも当然のことと言えるかもしれませんね。

非典型契約を具体的にあげたらきりがありません。例えば、「旅行契約」なんてものがあげられます。企業間や企業と従業員との間で結ばれることの多い「秘密保持契約」なんてものもあります。

非典型契約であった場合でも、契約の成立自体は基本的には典型契約の場合と変わらず当事者の合意によってできると思われます。

世の中には様々な契約が存在しており、非典型契約の方が圧倒的に多いです。自分がいましようとしている契約がどういった類型の契約なのか、一度考えてみることも面白いかもしれませんね。

以上で、民法上の典型契約についてのコラムを終了します。長文にお付き合いいただきありがとうございました。

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