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【ブログ】裁判所事務官採用試験に合格

2021-03-31

私は、裁判所事務官(総合職、院卒者区分)の採用試験に合格しました。本年4月より東京地方裁判所に採用されることが内定しています。

 

思えば、この道に進もうと思った切欠や、採用試験に向けた対策といったものは、すべてアトラス総合法律事務所で働いていたことに通じていました。

 

最初、ここで働きはじめた時は、特に裁判所とのやり取りにおいてはFAXが不可欠に近いことに面を食らった記憶があります。

それが良いか悪いかは別として、仕事としてそういった事務の部分に触れていくにつれて、今まであまり気にしてこなかった裁判手続の細部に目が向くようになり、次第に自分なりの改善策を考えるようになっていきました。

そんな中、コロナ禍の影響でほとんどの裁判が中断となり、期日の進行が数か月後ろ倒しになりました。私も仕事上モロに影響を受けました。詳細は省きますが、この時に私の中でいろんな感情が渦巻き、裁判所事務官、特に企画立案する立場という総合職を目指すようになりました。

 

この採用試験については情報が少なく、特に面接・集団討論の対策はほとんどできませんでした。

ただ、蓋を開けてみれば、仕事で培ったものがそのまま対策になっていたのかなと思います。

 

法律事務所事務員の仕事は、法律相談を必要とする方からの連絡を第一に受け取り、前情報を整理したり、時には感情を落ち着かせたりといったことも要求されます。色んな方から複雑なご事情をお伺いする以上、その方に合わせた話し方が必要だと考えます。

面接や集団討論も、初対面の方との会話による情報交換を、時間などの制限の中で上手く行う必要があります。もっとも、要求されている能力は上述の仕事の内容と共通しているところが多いので、仕事の経験から自然と面接や討論の能力も上がったのだと実感しています。

 

あと、新谷先生はソクラテスメソッドに時間を割いてくださるので、より実務に近い学問(あるいは学問に近い実務でしょうか)を事務員に経験させてくれます。

 

ここには、特に法律に関する試験を受ける人にとって、「働きながら学ぶ」を実現できる環境があると思います。

 

管野晶人

   

   

 

【ブログ】司法試験合格体験記

2021-02-01

 こんにちは。アトラス総合法律事務所の原澤です。先日、令和2年司法試験の合格発表がありました。僕も一応合格しましたので、合格体験記のようなものを作ることになりました。もっとも、予備校に提出したような「私のとった勉強方法」的なものではありませんので、ご了承ください。

 

 

 まずは簡単に自己紹介をします。僕は現在大学の法学部3年生です。1年生の時に予備校に入って司法試験の勉強を始め、2年生の時に令和元年予備試験に合格、そして令和2年司法試験に合格いたしました。一応予備・司法ともに一発合格ということになります。

 

 

 自己紹介はこれくらいにして、さっそく本題に入ろうと思います。今回は、事務所でのアルバイトと司法試験の関係について自分なりに感じたことを書いていこうと思います。

 

 まず、当然のことですが、実際の案件と試験問題は大きく異なります。必要な事情はすべて問題文に書いてある試験問題とは違い、実際の案件では必要な事情はすべて自分で聞き取り等により集めないといけません。そのため、何が必要となるのか、もっと言えば、何が依頼者にとって有利な事情で何が不利な事情なのかを、ときには自分で考え、ときには裁判例等を調べて整理していかなければなりません。

この力は試験においても必要なものだと思います。厳しい制限時間のある予備・司法試験では、必要な事情を簡潔に答案に示し、そこに自身の評価を加えることが大切だと思います。ここでの何が必要な事情なのかを見抜く力を僕はアルバイトを通じて鍛えることができたと思っています。

 

 また、実際の案件では例えば「既判力」のようないわゆる論文論点が問題となることは少ないと思います。僕が関わった案件の中では一度も問題になってはいません。他方で、あまり勉強していない手続面が問題になることが多いです。戸籍や登記、不動産の評価など試験との関係では直接関係はないですが、知っておいて損はないということに多く触れることもできます。

司法試験合格だけを念頭に置くとこれらは不要かもしれませんが、合格後、実務のことを考えると学生時代からこれらに触れられることはとても貴重な経験だと思います。(まだ修習にすら行っていないので実務に出てからのことは全く分かりませんが笑)

そして、試験にはあまり関係ないと言いましたが、どうやら予備試験の実務基礎との関係においては試験と関係ないこともないようです。ここで経験し、その際に調べたことで瞬殺できる問題がありました。(その問題はいわゆる難問だったそうです)

 

 

 以上簡単にですが、僕が感じたことを書いてみました。これ以外にもいろいろな経験をすることはできますが、さしあたり試験との関係ではこんな感じかなと思います。

 

 最後になりますが、僕は74期の修習には大学の卒業との関係で行けないので、もうしばらくここの事務所で働かせていただきます。今後ともよろしくお願いします。

 

原澤恭平

  

  

【ブログ】相続法改正点「特別の寄与」

2020-11-25

こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、「特別の寄与」の制度について説明します。これは、被相続人に対して労務等の貢献をした者に相続財産から分配(特別寄与料)を受けることを認める制度です。つまり、労務提供者の保護を主たる目的とした制度ということになりますね。

 

 これまでも、寄与分の制度というものがありました。民法904条の2に規定されています。

 

 民法904条の2

1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、・・・・

 

そして、以下に示すのが改正により新設された1050条になります。そして、この条文に規定されている内容について今回説明していきます。

 

 民法1050条

 1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当に又は排除によってその相続権を失った者を除く。・・)は、・・・・

 

注意深く二つの規定を見ると、いくつか違いに気が付くのではないでしょうか。

 

まずは、「特別の寄与」の内容が異なっていますね。もう少し具体的に言うと、新設された方には「財産上の給付」が含まれていませんね。つまり、特別寄与料を請求しうる寄与行為は「労務の提供」に限られるということになります。具体的には、家事や療養看護があげられると思います。

そして、「特別の寄与」とは、「その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献」を意味すると言われています。ここも「寄与分」の制度との違いがあるのですが、この点に関して今回は省略します。

 

また、両規定は適用される対象が異なっていることにも気が付きますよね。今回はここの話を詳しく見ていこうと思います。

 

        A(死亡)

 

 相続人B   相続人C  相続人D(死亡)===E(Dの配偶者)

 

被相続人がA、相続人がB,C,D(ただしDはすでに死亡)、Dの配偶者がEという事例を想定してください。そして、EがずっとAの介護をやっていたとしましょう。この場合、904条の2によってEの貢献を保護することは困難です。なぜなら、Eは相続人ではないからです。従前は、Eの貢献をDの寄与分として評価することにより一定の保護を与えることが可能でした。しかし、上記の事例では、Dはすでに死亡しているためこの方法はとれません。

これでは何もしてこなかったBやCが相続によって財産を得るのに対し、必死に介護を行ってきたEが何ももらえなくなって不公平ですよね。そこで、1050条の出番になります。

 

相続人の配偶者は被相続人の親族にあたります。(725条)したがって、その他の要件を満たせばではあるものの、Eは相続人に対して特別寄与料の支払いを請求することができるようになりました。つまり、相続人以外の者も対象になったと言えます。

 ここで注意が必要なのは、金銭請求権が認められるようになっただけで、遺産分割は相続人のみ(Eは関与しない)で行うということになります。

 

 特別寄与料が請求できるといっても、その特別寄与料はどうやって決められるのかという問題が残ります。これについては、1050条2項に規定があります。この規定によれば、第一次的には当事者間の協議、それができないときには家庭裁判所が判断するということになります。

 

 今回は以上になります。そして、相続法改正に関するブログは今回で最後になります。

今までありがとうございました。

  

   

【ブログ】相続法改正点「相続分に指定がある場合の債権者の権利行使」

2020-10-30

こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、「相続分に指定がある場合の債権者の権利行使」というテーマについて説明します。この話には、「債務の共同相続」や「相続分の指定」など様々な要素が絡んでくるため少し複雑ですが、一つ一つ順を追って説明していこうと思います。

 

 まず、相続が被相続人の死亡によって発生する(民法882条)ことは以前にも説明しましたが、この相続は、一般に被相続人の地位を包括承継するといわれます。つまり、被相続人の地位がそのまま相続人に移ることになります。そのため、被相続人の積極財産(債権等のプラスの財産)だけでなく、消極財産(債務等のマイナスの財産)も一身専属的なものでない限り当然相続の対象となります。(896条)

 ちなみに、「一身専属的」というのは、その人だけにしか帰属していないもので、例えば、絵を描く債務などがあげられます。

 

 そして、共同相続の場合、債務は、各相続人の相続分に応じて分割承継するのが原則になります。つまり、相続分が1:1のA,Bという2人の相続人がいて、相続の対象となる債務が2000万だった場合、原則として、A,Bはそれぞれ1000万ずつの債務を承継するということになります。この「相続分に応じて」というのが問題になるのですが、それは後ほど説明します。

 

 

 次に、「相続分の指定」という話に入ります。これは、902条1項に規定がありますが、遺言によって共同相続人間の相続分を指定する行為になります。つまり、ほかの細かい規定を考えなければ、A,B,Cという相続人がいた場合に、Aに10割相続させるということも可能ということになります。

 

 

 では、今回の本題に入ります。相続の話になると無意識のうちに積極財産のことを考えてしまいますが、(これは私だけかもしれませんが…)先ほども説明したように相続財産には債務も含まれます。では、この「債務」は相続分の指定通りに承継されるのでしょうか。これが、「相続分に応じて」の問題につながります。つまりこの「相続分」とは、①法定相続分なのか(上記のA,B,Cの例で考えると各1/3ずつ)、②指定相続分なのか(A:B:C=10:0:0)ということです。

 これをどう考えるのかによって、相続債務の債権者としては大きな違いがあります。具体的には、①の場合は各相続人に対して権利行使ができますが、②の場合、債務者はAだけなのでAにしか権利を行使できません。さらに具体的な場合を考えます。Aはそれほど資産がないが、B,Cは資産家だった場合を考えてみてください。債権者としてはより回収が期待できるBやCに対して権利行使したいと考えるのではないでしょうか。でも、これが可能かどうかに違いが出てしまいます。

 

 

 この問題について、従前の運用を見てみましょう。

 ざっくりと言えば、特段の事情がない限り、相続人間においては債務も指定相続分に従って相続されるけれど、それを相続債務の債権者には主張することができないとされていました。つまり、相続人の視点で見ると、②のように債務が承継されますが、債権者の視点で見ると、①のように債務が承継されるということになります。そのため、債権者はBやCにも権利を行使することができるようになります。

 この話は遺留分の観点からも問題点があるのですが、今回その点については省略します。

 

 

 902条の2は、この運用がより一般的な形で明文化されたと言っていいと思います。この条文で規定されていることは2点になります。

 

  • 相続分の指定があった場合でも、債権者は法定相続分に従って(指定相続分に縛られずに)共同相続人に対して権利行使をすることができる。

 

  • 債権者が指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合は、債権者は指定相続分に従った権利行使ができる。

 

 したがって、改正後も、債権者としては指定相続分に強制的に拘束されることはないということになります。

 

 

 

 今回は以上になります。次回は、「特別の寄与」について扱います。

 

 

【ブログ】相続法改正点「相続と登記」

2020-10-12

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、「相続と登記」というテーマで相続法改正について説明していきたいと思います。これは、大まかにいえば、不動産が相続される場合、その不動産についての権利が第三者との関係でどうなるのかという話です。

 物権法の不動産の対抗要件の問題も関係しますが、この点についての詳しい説明はせず、必要な範囲で適宜説明していこうと思います。

 物権法についての説明はしないといったばかりではありますが、まずは物権法の原則についての説明から始めます。大前提として、不動産に関する権利の得喪及び変更は、その登記がなされないと第三者に対抗することができません。(民法177条)ここでいう「対抗」とは、自分の権利を主張できないという意味になります。例えば、Aが土地をBから買った場合、普通はその土地の所有権は買った人に移転、つまり、その土地はAのものになります。しかし、その土地についての所有権移転登記がなされていない場合、Bが同じ土地をCに売ってしまった場合、AとしてはCに対して「その土地は自分のものだ!」と主張できないことになります。

 上記のような事例を、二重譲渡事例と言ったりしますが、そもそもAのものになったはずの土地をどうしてBがCに売れるのかという話は、物権法の話になってしまうのでここでは置いておきます。また、正確には「第三者」も定義があるのですが、ここでは省略します。

 この話からも分かるように、不動産についての権利を取得しても、その登記がなされていないと、基本的には「第三者」に対抗できません。これは、改正後も続いていくルールになります。そして、それは、相続によって不動産の権利移転が発生した場合でも、法定相続分と異なる権利を取得したのであれば、基本的に異なりません。

 しかし、改正以前は、一部の類型の場合登記なくして第三者に対抗できるとされていました。例えば、「Aに相続させる」旨の遺言があった場合などです。この場合、被相続人の意思を尊重すれば、登記などなく対抗させようというのは自然だと思います。しかし、AのほかにBという相続人もいて、そのBが自分の相続分にあたる部分についてCに譲渡していた場合、CとしてはAに対抗することができません。第三者からしてみれば、遺言の内容なんてふつうわからないのに、それによって自己の権利が左右されるのは納得できないですよね。この場合のCの保護についてどうするかという問題がありました。

 そこで、そのような相続による権利変動で不測の損害を被る第三者保護の要請もあり、民法899条の2が規定されました。同条1項によると、自己の相続分を超える部分については、登記なくして第三者に対抗することができなくなります。上の例だと、Aは登記をしていなかった場合、自分の法定相続分を超える部分についてはCに対抗できなくなります。

この規定は、これまでの運用と結論から逆になる場合もあり、実務上だけでなく、司法試験等の資格試験上も大きな影響があるのですが、その点についてはどうでもいいですね笑

 

今回は以上になります。次回は「相続分の指定と債権者の権利行使」について扱います。

   

   

【ブログ】相続法改正点「遺留分制度」

2020-09-17

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、「遺留分制度」についての改正点について説明していきます。遺留分制度の改正点は、いくつかあると思いますが、ここでは、清算方法が金銭請求になった点について扱います。

 そもそも、「遺留分制度」とはいったいどういったものなのでしょうか。これは、被相続人の処分の自由と相続人の潜在的持分の清算に対する保護の調和を図るべく、相続財産の一定割合を相続人に留保するという制度です。被相続人には当然自分の財産を自由に処分する権利があります。他方で、被相続人があまりにも恣意的に財産を処分してしまうと、相続人が害されることにもつながります。

例えば、被相続人には1億円の財産があったとします。相続人としては、このうちいくらかは自分のものになるだろうと考えるでしょう。しかし、死の直前に被相続人がこの1億円を誰かにあげてしまった場合、相続人としては大迷惑ですね。1千万円くらいは最低でも自分のものになるかなと考えていたのに突然0になってしまいました。

この1千万円くらいなら...という被相続人の期待も保護しましょうというのが、相続人の潜在的持分の清算に対する期待の保護ということになります。

 

制度趣旨の説明が長くなってしまいましたが、ここからは具体的な話に入ります。

遺留分制度自体は、民法改正前でも存在していました。相続人は自身の遺留分が害された場合、「遺留分減殺請求」というものを行うことになります。しかし、今回の改正によって「遺留分侵害額請求」に変わることになります。従前は減殺請求権を行使した場合、贈与等の効力を(一部)否定することになるのに対し、改正後は、贈与等の効力自体は否定されずに侵害額に対応する金銭債権が発生するだけになるということになります。したがって、減殺請求権の行使による複雑な法律関係の発生を防止することができるようになりました。

細かい事情の正否は考えずに、簡単な具体例で説明します。AとBという二人の相続人がいたとします。Aは一億円相当の甲土地を相続しており、Bの遺留分侵害額は1234万5678円だとしましょう。遺留分減殺請求が認められた場合、ABは甲土地の共有状態となり、持分割合がA:B=87654322:12345678というとても複雑なものになってしまいます。しかし、改正後では、Bに12345678円の金銭債権が発生するだけで、甲土地はAの単独所有となります。

 

今回の改正点に関する説明は以上になりますが、具体的な遺留分侵害額の算定方法についても一応触れておきます。少々複雑ですが、ご了承ください。

 

遺留分侵害額=(遺留分)―(遺留分権利者の特別受益の額)―(遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)(1046条)

*遺留分=(遺留分を算定するための財産の価格)×(1/2又は1/3)×(遺留分権利者の法定相続分)

*遺留分を算定するための財産の価格=(相続時における被相続人の積極財産の額)+(相続人に対する生前贈与(原則10年以内)の額)+(第三者に対する生前贈与(原則1年以内)の額)―(被相続人の債務の額)

 

 これに具体的な数字を当てはめれば遺留分侵害額を求めることができます。

 みなさんもぜひやってみてください。

 

 今回は以上になります。次回は、「相続と登記」について扱います。

 

 

【ブログ】相続法改正点「遺言制度」

2020-09-01

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は「遺言制度」の改正点について説明していきます。今回は大きく分けて、①自筆証書遺言の方式緩和、②自筆証書遺言の保管制度について説明していきます。

 

では、さっそく本題に入ります。

遺言は、遺言者の意思を確認する重要なものではあります。しかし、遺言が効力を持つのは遺言者の死後です。(民法985条1項)この時点ではもう本人に意思を確認することができません。そのため、疑義が生じることを可能な限り排除すべく、厳格な要式行為となっています。

一般的な遺言の方式としては、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3つがあげられます。個々の方式の細かい説明について今回は行いませんが、この中の「自筆証書遺言」について扱います。

 

「自筆証書遺言」とは、遺言の内容全文、日付、氏名のすべてを自書すること、これに押印をすることを要件とする遺言です。(968条1項)方式が簡単で費用がかからないというメリットがある一方で、滅失、偽造、変造の可能性が小さくないというデメリットがあります。(ほかの方式の遺言と比較すると、メリット・デメリットはわかりやすくなると思います。)

 

この自筆証書遺言の要式が緩和されました。

これまでは、文字通り全部の自筆が必要でしたが、改正後は財産目録については自筆である必要がなくなります。(968条2項)パソコン等での作成や、通帳のコピーを添付するなどといった方法によることができるようになります。もっとも、財産目録には署名押印が必要であるため、一定程度偽造は防止できるということになります。

 

また、自筆証書遺言は、遺言者の住居地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対して、保管の申請をすることができるようになりました。

この制度の創設によって、紛失や変造等のリスクが低下するということになると思われます。また、遺言書保管所に保管されている遺言については、家庭裁判所による検認が不要となります。

 

今回は以上になります。次回は、遺留分制度の改正点を扱います。

  

  

【ブログ】相続法改正点「預貯金の払い戻し制度」

2020-08-18

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。今回は遺産分割制度に関する改正点のうち、「預貯金の払い戻し制度」について説明していきます。この制度は、遺産分割における公平性を図りつつも、相続人の資金需要に対応できるようにしようとされたものになります。

 

 今回は、改正点に触れる前に従前の運用について確認していきましょう。相続人が複数いる場合、金銭債権のような分割することが可能な債権(可分債権)は当然に分割承継されるというのが原則であり、特定の債権については例外的な運用がなされています。つまり、被相続人が2000万円の貸金債権を有していた場合、相続人が2人だとすれば、それぞれに1000万円ずつ金銭債権が承継されるということになります。

 

 この原則の例外として位置づけられてきたのが、「預貯金債権」です。

 

 みなさんは、預貯金についてどのようなイメージを持っているでしょうか。預貯金も「預貯金債権」と言われる以上は債権であって、しかも、なんとなく分割できそうな気はしませんか? 他方で、預貯金は、容易に現金による払い戻しを受けることができ、ほぼ現金と同じような感じもしますよね。(預貯金が可分債権であれば、前述のように当然分割されますが、現金は遺産分割の対象とされ、当然分割されません。)このように、預貯金は少しほかの金銭債権と比べると特殊な性質があります。

 

 この点について、判例は普通預金を含む預貯金債権は前述の当然分割原則の例外に当たるとしました。詳しい判例の内容については、興味がある方は調べてみてください!

そして、この判例後は、預貯金債権は遺産分割の対象になるため、遺産分割までは共同相続人全員の同意がなければ権利行為することができないことになりました。つまり、遺産分割までは、自分の相続分に対応する部分についても金融機関からの払い戻しを受けることができないことになります。

 

 しかし、これでは相続人が遺産分割前に預貯金を払い戻す必要が出てきたら困りますよね。そこで改正法は、遺産分割前であっても一定額については払い戻しが受けられる制度を創設しました。

 

 民法909条の2をご覧ください。この規定により、一定額については裁判所の判断を経ることなく各共同相続人は遺産に含まれる預貯金債権の払い戻しを受けることができます。

そして、払い戻しを受けた場合は、その相続人は遺産の一部分割によりこれを取得したものとみなされ、仮に払い戻された額が当該相続人の具体的相続分を超過したときは、遺産分割においてその超過分を清算する義務を負います。 

 これによって、公平な遺産分割にも配慮した運用が可能となります。

 

 では、実際に払い戻しを受けられる「一定の金額」とはいくらでしょうか。

 民法では、「遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額」と規定されています。正直、何を言っているのかわかりませんよね笑 

 具体的な事例で説明します。

 被相続人の遺産に属する預貯金債権が3000万円(一つの金融機関)、相続人は被相続人の2人の子のみの場合を想定してください。(代襲相続は無視してください。)では、実際に計算してみましょう。

3000万×1/3×1/2(900条4項)=500万

今回の場合は500万円まで払い戻しができる、、、、

わけではありません。実は、法務省令(平成30年法務省令第29号)で一つの金融機関から払い戻せる上限が150万円とされています。

 したがって、今回の事例では、150万円まで払い戻しを受けることが可能です。

 

 でも、150万円以上必要になった場合困りますよね。その場合は、家庭裁判所の判断を経て一定の要件の下で権利行使が可能になります。(家事事件手続法200条)これも今回の改正によって創設された制度になります。

 

 今回は以上になります。次回は、遺言制度について説明していきます。

  

  

【ブログ】相続法改正点「持戻し免除の意思表示」

2020-07-28

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。

今回は、遺産分割制度の改正点について説明していきます。そのうち、「持戻し免除の意思表示の推定」といわれる制度について扱います。

 そもそも、「持戻し」って何でしょうか?これを説明するためには、まず「特別受益」なるものを説明する必要があります。生前贈与や遺贈(特別受益)を受けた相続人がいる際に、相続人間の公平のためにこれを相続分算定の際に考慮する制度を特別受益制度と言います。そして、この贈与や遺贈の額を相続財産に計算上加えることを、特別受益の「持戻し」と言います。

 実際に具体的な事例で考えてみましょう。夫、妻、子2人の家族で、夫が死亡したとします。そして、相続人は妻と子2人だけの場合を想定してください。そして、夫の遺産は、6000万円だが、妻に対して生前に居住用不動産(評価額4000万円)を贈与していたとします。この生前贈与が特別受益にあたるということを前提で考えましょう。この場合、妻の取り分は(6000万+4000万)×1/2=5000万円ということになります。

 これでは、生前贈与がなされていなかった場合と同じ結果となり、被相続人が贈与を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されません。

 では、一歩進んで「持戻し免除」の話に移りましょう。といっても、特に難しいことはありません。上で見た持戻しが免除される、つまり、贈与又は遺贈の額を相続財産に加算しないで相続分を決めるということです。

 上記の具体例で考えてみましょう。この場合、生前贈与分(評価額4000万円)は相続財産とみなされなくあります。そのため、遺産分割の対象となるのは、6000万円のみとなります。妻の具体的取り分を計算してみましょう。

  4000万+(6000万×1/2=3000万)=7000万円となります。

 したがって、妻の取得額が増え、被相続人による贈与等の趣旨に沿った遺産分割が実現できるということになります。

 これまで見てきたのが、「持戻し免除の意思表示」についてです。やっとここから、今回の改正点についての話に入れます。笑 

 これまで見てきた持戻し免除の意思表示が、一定の要件下で推定されることになりました。この制度は、被相続人の通常の意思に合致した遺産分割を実現することを可能にします。というのも、長年夫婦関係にあった夫婦の一方が他方に対して居住用不動産の贈与等をする場合には、通常それまでの貢献に報いるとともに、老後生活を保障する趣旨であると考えられました。これまでも、このような事情があった場合には、暗黙のうちに持戻し免除の意思表示があったと解する運用がなされたこともありました。改正後は民法903条4項によってこの意思表示が推定されることとなります。

(ちなみに、「推定」とは、そうでないという証明がなされない限り、その事実があったものと扱われることをいいます。似て非なるものとして「みなす(擬制)」というのもがあるので、興味がある方は調べてみてください。)

 これまでの僕の説明を注意深く読んでみると、なんでこんなに変な言い方をするのか?と思う表現があったかもしれません。「長年」夫婦関係、「居住用」不動産などでしょうか。実はこれが、上で述べた一定の要件にかかわってきます。

 

  ・婚姻期間が20年以上の夫婦であること

  ・「居住用不動産」の贈与又は遺贈であること

 

これが要件となります。老後の生活保障という観点から特に重要な、居住用不動産という生活の本拠になるものに目的物が限られてきます。居住用不動産についての贈与等は、相手方配偶者の老後の生活保障を考慮したものであることが多いと考えられることを考慮した結果といえそうですね。

 

今回の説明は以上になります。次回は遺産分割制度のうち、「遺産分割前の預貯金の払戻し」について扱います。

 

 

【ブログ】相続法改定点「配偶者居住権」

2020-07-09

 こんにちは。千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。
今回は、相続法改正点のうち「配偶者居住権」について説明していきたいと思います。配偶者居住権の細かい要件などについては、説明を省略して制度説明を中心にしていこうと思います。

 「配偶者居住権」なんて聞いたことないという方が多いのではないでしょうか。配偶者居住権とは、配偶者に、原則として建物の終身居住権を与えるものです。つまり、配偶者は、被相続人の死後も、配偶者居住権を取得することで、居住建物に今まで通り住み続けられるようになります。民法1028条に新設されたもので、生存配偶者保護がその趣旨ということになります。

 これは、配偶者の「これまでの居住環境での生活を継続させつつ、その後の生活資金も一定程度確保したい」という希望を実現するものになります。
これまでは、配偶者が居住建物での居住継続を実現するためには、遺産分割等で建物の所有権を取得するか、新たな所有者との間で賃貸借契約を結ぶ必要がありました。
 しかし、前者の場合は、建物評価額が高額になると、配偶者はそれ以外の財産が十分に確保できなくなるおそれがあり、後者の場合は、賃貸借契約が成立しなければ居住権が確保できないという不都合が生じていました。

 具体例で考えてみましょう。
 夫、妻、子1人の家庭で夫が死亡した場合を考えてみましょう。この場合、被相続人が夫、相続人が妻及び子ということになります。夫の遺産は4500万円(自宅2000万、預貯金2500万)だとしましょう。このケースだと妻は自宅を取得した場合、その後の生活費(預貯金)は250万円しか受け取れなくなってしまいます。(妻と子の相続分は1:1(900条1号))
 他方で、子が自宅を取得したとします。この場合、妻は2250万円の預貯金を取得できるため、生活費は確保できました。しかし、居住建物は確保できなかったため、今後も自宅に住み続けられるとは限りません。

 これに対して、改正後では、配偶者居住権を取得することで配偶者は居住建物の無償使用権限を取得できます。ただし、この「無償」とは、利用することが無償という意味であって、配偶者居住権の取得自体が無償という意味ではありません。つまり、この配偶者居住権の価値は遺産分割において考慮されることになります。もっとも、この居住権は建物所有権よりも低廉なものと評価されるため、他の財産の確保がしやすくなるということになります。
 

 前述の具体例に即して考えてみます。
 そして配偶者居住権の価値が1000万円、その負担付の自宅所有権の価値が1000万円と仮定します。この場合、妻は配偶者居住権を取得してもより多くの生活費を確保できることになります。(配偶者居住権1000万+預貯金1250万)若干機械的ではありますが、これで妻としては今後も自宅に住み続けられるし、ある程度の生活費も確保できたということになります。

 
ところで、この配偶者居住権には①(長期)配偶者居住権と②配偶者短期居住権の2種類があります。それぞれがどういったものなのか説明していきます。

まず、①(長期)配偶者居住権についてですが、これは今まで説明してきたものになります。期間は原則として生存配偶者の終身であり(1030条本文)、取得には一定の要件を満たすことが必要になります。(1028条、1029条)そして、この配偶者居住権は登記をすれば第三者に対しても対抗(権利主張)することができます。(1031条2項)

 次に、②配偶者短期居住権についてです。
 この制度は、配偶者に一定期間の居住権を確保させることによって、いわば第二の生活に移るまでの期間について生存配偶者を保護しようとするものになります。①との違いとしては、期間が6か月となっています。(1037条1項)また、一定の要件を満たせば法律上当然に発生するものであり、遺産分割において具体的相続分からその価値を控除する必要がありません。前述の具体例のように、1000万円の配偶者居住権として考慮されないということですね。そして、第三者との関係では登記が不要とされています。
 従前は、使用貸借契約の推認によって生存配偶者保護を図っていましたが、改正後はこの制度が利用され、生存配偶者は最低6か月間無償使用期間が法律上保障されるということになります。

 以上で配偶者居住権についての説明を終わります。次回は、遺産分割制度についてです。
  
  
  

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