こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。
今回は「雇用契約」について説明していこうと思います。ここでは、労働契約法などの労働法制の適用により民法上の規律と異なる点も存在するため、特に指摘がない場合には、民法上の雇用契約についての話だと思ってください。
雇用契約とは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する」契約です。(623条)典型的なのはアルバイトとかですね。僕が今この事務所で働いているのも雇用契約なんだと思います。
雇用契約を締結する場合、雇う側は「働いてほしい」という、雇われる側は「給料が欲しい」という考えを持っているのが通常かと思いますが、この「給料」はどのタイミングでもらうことができるのでしょうか。
民法624条1項を見てみましょう。
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
ここに規定されている通りではありますが、働いてから給料を請求することができるようになるということです。これは、「ノーワーク・ノーペイの原則」(働いていない部分の給料はもらえないということ)を明らかにしたものといえそうです。もっとも、2項による例外はあります。
では、雇用期間はいつ終了するのでしょうか。ここも労働法制による修正は考慮せずに、民法の話をしていきます。
①まず、雇用期間が5年を超える場合又は終期が不明確な場合には、5年を経過した後であればいつでも契約を解除することができます。(626条1項)もっとも、この場合、どちら側から解除するのかによって予告しなければいけない期間がそれぞれ規定されています。(同条2項 使用者の場合3か月、労働者の場合2週間)
②雇用期間の定めがない場合には当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。(627条1項)もっとも、使用者側からの解約申し入れの場合には一定の規制がなされています。(同条2項、3項)
③また、「やむを得ない事情がある場合」には雇用期間が定められている場合であっても直ちに解除することができます。
一通りの説明は終わったので、具体的事例で見てみましょう。
大学生のA君は生活費や遊興費を稼ぐためにアルバイトを始めることにしました。条件としては、「1日8時間、週5日間勤務、給料は月20万円」ということで合意しました。雇用契約は合意のみで成立する諾成契約であるため、この合意によって契約は成立です。そのため、A君はスタッフとして働いていくことになります。
今回は以上になります。今回の説明では民法上の雇用契約についての説明をしてきましたが、実際に現実になされているのは労働法制の影響を受ける場合も多く、この説明とは異なる部分も出てくると思います。もし気になる方は、労働契約法や労働基準法といった法律にも目を通してみてください。次回は「請負契約」について説明します。