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作成日:2022.12.28 最終更新日:2023.02.22

遺留分を請求されたら無視してはいけない!確認すべき事項を解説

遺留分を請求されたら無視してはいけない!確認すべき事項を解説

大切な人が亡くなり相続することになったら、本来は家族が一丸となって相続財産を揉めずに分け合い、相続税納付などの手続きを円満に終えることが理想です。

しかし、残念なことに相続にはトラブルがつきものです。
相続人同士で遺産分割協議を行っても揉めてしまったり、遺言書が見つかっても中身に納得が出来ず、紛糾したりするケースも後を絶ちません。

加えて、相続の際には「遺留分」について考慮する必要があります。
「遺留分」とは民法上で定められた「必要最低限取得できる相続財産の取り分」と意味します。
法定相続分とは異なり、たとえ遺言書上では相続財産がもらえなかった方でも、遺留分は主張できます。

今回の記事では、もしも「遺留分を請求された場合にどうするべきか」を焦点に、詳しく解説を行います。
請求を無視をせず、確認をしながら適切な解決を目指すために、是非ご一読ください。

遺留分侵害請求をされたら、無視・放置してはいけない

高齢化社会を背景に相続に関心を持つ方は増加しており、生前からご自身の相続に備えて遺言書を作成する方が増加しています。

法定相続分とは異なり、遺言書なら「この人に大切な自分の財産を託したい」という想いを残すことができます。

しかし、遺言書の中なら自由に財産を託せても、遺留分を無視できるわけではありません。
特定の相続人にのみ財産を承継したいと書き残しても、遺留分を無視されてしまった相続人は、財産を受け取った相続人に遺留分を求めて請求することができます。

この請求を、「遺留分侵害額請求」(改正前の名称:遺留分減殺請求)と言います。

遺留分侵害額請求を受けたら、無視や放置は厳禁です。
民法で定められている権利を行使しようとしている以上、無視をしても解決にはつながりません。
無視をすると調停や訴訟に発展するケースが高いのです。

遺留分侵害請求をされたら、必ずすること

もしも遺留分を支払うように請求を受けたら、以下の4つの項目を必ず確認するようにしましょう。

遺留分を請求できる権利はあるか否か

遺留分が請求できる「遺留分権利者」は民法によって定められています。
遺留分権利者と遺留分の割合は以下のとおりです。

  • 1.被相続人の配偶者
  • 2.被相続人の子 もしくは代襲相続人としての孫やひ孫
  • 3.被相続人の直系尊属(両親や祖父母)

以上の3つの方が遺留分権利者として請求できる方です。

法定相続人の場合には被相続人の兄弟姉妹も相続人となる場合がありますが、遺留分権利者には該当しません。
相続放棄を既に行った方も請求できる権利はありません。遺留分請求を受けたら、まずは遺留分権利者か否か確認しましょう。

請求されている金額が正しいか

遺留分侵害額請求を内容証明郵便などで受け取った場合、請求額が記載されていることがあります。
請求されている金額が正しいものか、きちんと確認するようにしましょう。

遺留分の侵害額の算定は複雑な過程を経る必要がありますが、簡潔にまとめると以下のとおりです。

1.遺留分権利者がもらえる金額を算出する

まずは遺留分権利者が本来主張できる金額を算出します。

※遺留分権利者がもらえる金額の具体的な計算式はこの記事の最後に記載

2.遺留分侵害額を算出する

遺留分権利者がもらうべき遺留分がわかったら、侵害額の算出に移ります。
遺留分権利者がもしも被相続人から遺贈・特別受益に当たる贈与を受け取っている場合には控除します(1046条2項1号)。

つまり、遺留分全額を請求できるわけではないのです。

相続で既に取得した相続財産があるならその額も控除します(1046条2項2号)。
被相続人が債務を残していた場合は加算し、遺留分侵害額を確定します(1046条2項3号)。
遺留分侵害額は遺贈・特別受益に当たる贈与等を使って正しい金額を算出する必要があり、

大変複雑です。正しい金額の把握には、専門家にご相談されることがおすすめです。

時効の確認

遺留分が侵害されていた場合でも、いつまでも請求の権利があるわけではありません。
請求には「時効」があります。

遺留分侵害額請求ができる期間は案外短く、相続の開始を知った時から1年及び遺留分を侵害する贈与や遺贈の発見から1年しかありません。

しかし、遺留分侵害額請求を無視したことがある場合、時効が中断されている可能性もあります。
また、10年以内に請求権を行使しないと時効を迎えます(1048条)。

生前贈与の有無の確認

遺留分侵害額の算出には、先に少し触れたように「生前贈与」に関して調査をする必要があります。
正しい侵害額の計算には、請求をしてきた遺留分権利者が生前贈与を受けていなかったかしっかりと把握しなければなりません。

生前に受けた贈与は全てが対象となるわけではなく、「相続開始前の1年以内(1044条1項)、相続人が婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与(特別受益に当たる贈与)については、相続開始前の10年以内(1044条1項)」と定められています。
しかし、遺留分を侵害すると認識の上で実行された贈与にはこの期限はありません。

実際の把握は難しいかもしれませんが、生前贈与の経緯も調査しきちんと把握する必要があるでしょう。

遺留分侵害請求の支払いは金銭のみ

遺留分侵害額請求については令和元年7月1日に施行が行われたことをご存じでしょうか。
民法改正にともない、「遺留分減殺請求権」という名称から変更が行われ、「遺留分侵害額請求権」に変更がなされました。

もちろん、名称の変更だけではなく、「金銭の債権化」という変更がなされました。

わかりやすく言うと、遺留分請求を受けた場合に従来は不動産などを「共有」することによって侵害していた分を支払っていましたが、1つの土地を複数人で共有すると売却時に再度揉めるなどのトラブルが発生していました。
そこで、民法の改正により「金銭」に支払いに変えることになったのです。

新たに支払期限に関しても設定できるようになったため、支払いに遅れると遅延損害金が発生します。

遺留分を渡さなくていい方法はあるが、現実的には難しい

遺言書があるにもかかわらず、遺留分の請求を受けた方は納得ができない、と感じるかもしれません。
では、遺留分を渡さなくて良い方法はあるのでしょうか。

結論から言うと、「支払い拒絶はできません。」遺留分は法律で認められた権利であり、生活の最低限度の補償を守る意味もあるためです。

但し、遺留分の請求ができないケースもあります。
簡潔に言えば「相続権がなくなる」と遺留分権利者ではなくなるのです。

遺言書の破棄や偽造を行った等の理由で相続欠格に該当する方(891条)、被相続人が生前「この人には相続させない」と決めていた相続廃除(893条)、相続放棄を行った方(915条)などです。

そして、遺留分権利者も参加して遺産分割協議が終わっている場合にも、遺留分請求ができなくなります。

遺留分を支払わないとどうなる?

もしも遺留分侵害額請求を受けたにもかかわらず、支払いに応じないとどんな事態が待ち受けるでしょうか。

遺留分侵害請求調停、訴訟を起こされる

遺留分の支払いに応じない場合、裁判所に「遺留分侵害額調停」を起こされる可能性があります。
調停はあくまでも調停委員の下で話し合いを重ね、解決の着地点を模索することです。
もしも調停で解決できない場合には、訴訟へ移行します。調停も訴訟も無視は厳禁です。

強制執行が行われる

遺留分侵害額請求の訴訟で判決が確定後にも、遺留分の支払いに応じなかった場合は、強制執行に移行される可能性があります。
給与や預貯金が差し押さえられてしまうのです。そうなる前に、支払いに応じることが妥当な解決方法でしょう。

遺留分がすぐに支払えない場合の対処方法

もしも遺留分侵害額請求を受けたとしても、すぐに現金の用意が難しく支払いに応じられない場合もあるでしょう。
では、すぐに支払えない場合はどのように対処するべきでしょうか。
解決方法には以下の2つが考えられます。

協議を行う

遺留分を支払うための現金がすぐに用意できない場合には、不動産などの相続財産の売却をして現金を作ったり、分割払いをしたりする等の対処法が考えられます。

この場合、時間を要する旨を相手方と協議してみましょう。
支払期限を決め、協議がまとまれば安心です。無視をするのではなく、円満な解決ができます。

あえて裁判所に訴訟提起する

協議を行っても交渉がまとまらない場合には、あえて請求を受けた側が裁判所に訴訟提起をすることも方法の1つです。
裁判所に支払い期限を先延ばしにするように請求することができます。

但し、必ずしも先延ばしが認められるわけではありません。
支払う余力があるとみなされれば、認められない可能性もあります。

まとめ

遺留分の請求を受けた場合は速やかに弁護士にご相談を
今回の記事では「遺留分を請求されたら無視してはいけない」理由や、対処法について詳しく解説を行いました。

遺留分侵害額が請求を受けてしまったら、無視をするのではなく交渉に応じる必要があります。
しかし、遺留分侵害額の計算は遺贈・特別受益に当たる贈与を考慮する必要があり、とても難しいものです。

計算ができたとしても遺留分権利者側と交渉したり、時には調停や訴訟にも対応したりする必要があります。
もしも遺留分の請求を受けてしまったら、速やかに弁護士にご相談されることがおすすめです。

アトラス総合法律事務所では、相続問題に強い弁護士が在籍しており、豊富な解決実績を誇っております。
相続全般においてワンストップサービスを提供しておりますので、相続問題はひとりで悩まずお気軽にご相談ください。

 

※遺留分権利者がもらえる金額の具体的な計算式

被相続人が亡くなった時に所有していた相続財産+生前に贈与されていた財産-被相続人の遺した債務の全額によって、まずは被相続人の財産総額を確定させます(1043条1項)。

算定した財産総額に対して、直系尊属のみが相続人である場合には3分の1が、それ以外の場合には2分の1が乗じられ、全体としての遺留分(総体的遺留分)を算出し(1042条1項)、この総体的遺留分に、さらに各自の法定相続分を乗じて、それぞれの遺留分権利者の遺留分(個別的遺留分)が算出されます(1042条2項)。

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