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作成日:2023.03.07 最終更新日:2023.03.08

遺産相続でもめる原因・よくあるケースを解説|トラブル時は弁護士へ

遺産相続でもめる原因・よくあるケースを解説|トラブル時は弁護士へ

大切な家族が亡くなり相続が開始されると、亡くなった家族(以下・被相続人)が遺した財産についてどのように相続するべきか、早急に検討する必要があります。
遺言書がある場合は遺言書に沿って相続が行われます。遺言書が無い場合は、家族内に異論が無ければスムーズに遺産分割協議が進み、円満に相続手続きが進んでいくことでしょう。

しかし、全ての相続が円満に終わるわけではありません。家族間で遺産相続をめぐって激しく衝突する場合も多く、調停や訴訟に発展するケースも珍しくありません。そこで、今回の記事は「遺産相続でもめる原因とは何か」をテーマに詳しく解説します。よくあるトラブルのケースもわかりやすく解説しますので、ぜひご一読ください。

遺産相続でもめる原因・よくあるケース

相続トラブルは高額の財産を激しく相続人間で争うイメージがあるかもしれません。しかし、相続トラブルの中には高額の相続財産は無いにもかかわらず、相続人同士が激しく言い争うケースも決して少なくありません。

令和3年度の司法統計を参考にすると、裁判所に遺産分割調停による解決を求め、調停による解決がなされた事件は約7000件に上ります。そのうち、遺産の総額が1000万円~5000万円以下と、そこまで高額ではなかった事件の数は約3000件であるところ、これは全体の約40%に相当します。これよりもさらに遺産総額が少額であった1000万円以下の事件の数は約2300件で、これは全体の約30%に相当します。

このように、億単位の遺産相続ではなくても、裁判所に相続トラブルの解決を求めるケースが多いことがわかります。つまり、相続トラブルは決して縁遠いものではなく、私たち一人ひとりにとても身近な問題なのです。では、遺産相続でもめる原因とは何でしょうか。以下によくあるケースを紹介します。

参考 URL  裁判所 令和3年司法統計年報 第52表(参照P.78)「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数(「分割をしない」 を除く)―遺産の内容別 遺産の価額別―全家庭裁判所」

1.相続対策の不足

上記で解説のとおり、遺産相続の金額が1000万円以下及び1000万円~5000万円以下のトラブルの件数の合計は全体の7割に及んでいます。これは、裏を返すと高額の相続が予想されるご家庭の多くは、生前に相続対策をしっかりと行っているということを意味します。
つまり、相続対策を生前からしっかりと行われていないご家庭は、トラブルになるケースが多いのです。遺言書が無く、財産を相続人間で上手に分割できないケースも多くなっています。また、被相続人が遺した遺産がどの程度あるのか把握できず、もめてしまうケースもあります。

2.遺産に不動産がある

遺産の中に不動産が多い場合もトラブルの温床となっています。実家の建物や土地、不動産収益を上げている賃貸物件の相続や何代も前の相続時から放置されている土地や山林をどうするか、などが主なトラブルの代表例です。

不動産は現金や預貯金のように分割して相続しにくいため、トラブルになりやすいのです。多くの不動産を遺言書によって取得すると、その他の相続人の遺留分を侵害してしまうため、トラブルに発展するケースも多くなっています。

3.相続人となる兄弟間の仲が悪い

少額の遺産相続にもかかわらずトラブルに発展するケースでは、兄弟間トラブルが事の発端となっているケースも散見されます。長年兄弟間の仲が悪く、疎遠にしていた者同士が相続をきっかけに争いを開始してしまうのです。積年の恨みが遺産分割協議のテーブルに持ち込まれてしまうケースは少なくありません。

4.同居者など特定の方が被相続人の財産を管理していた

被相続人の財産を生前から特定の方が管理していた場合、使い込みが行われていたり、使い込みを疑われ使用用途の開示を求められたりと、トラブルになるケースがあります。

介護を行っていた同居人が財産の使い込みを疑われ、医療記録の取得や費用明細の開示に発展するケースも決して少なくないのです。高齢の両親の財産を同居しながら管理していた子と、既に別居している子が相続人となった時に、兄弟姉妹間で争いになるケースも多くなっています。

5.介護負担の偏り

生前に両親などの介護に従事していた方であっても、法定相続分どおりなら介護分が考慮されず、介護負担をしなかった方と同じ相続財産しかもらえない場合があります。例えば以下のケースです。

例 亡父の介護に従事していた母および長男と、長年別居していた次男が相続するケース
このケースは配偶者である母は法定相続分として2分の1、子どもである長男と次男はそれぞれ4分の1ずつ相続します。しかし、このようなケースでは長男が長年介護に従事し、父母の生活資金も支えている場合があります。長男は相続時に次男に対して不満を感じ、「寄与分(※1)」を主張することができますが、認められるとは限りません。

(※1)寄与分とは
寄与とは被相続人の生前時に財産の維持や管理、増加に貢献した人の「貢献分」を、相続時にもらえる財産に上乗せする、という考え方です。長年介護費用を負担していた方、などが該当します。

6.生前贈与が行われていた

被相続人から生前贈与を受けていた方がいる場合、相続トラブルに発展する場合があります。生前贈与を受けた方は「特別受益(※2)」として、貰える相続が減少する可能性があるのです。特にこのようなケースでは、生前贈与を知らなかった別の相続人がいると、不満が起きてしまい衝突する可能性があります。

(※2)特別受益とは
特別受益とは生前に贈与などを受ける等の方法で得た利益のことを指します。生前から多くの財産をもらっていることから、相続人間の公平性を保つために相続開始後は特別受益も踏まえて相続分の計算をする必要があるとされます。(特別受益の持ち戻し)

7.遺言書の内容に偏りがある

本来なら円満な相続のために作る遺言書ですが、中身によっては開けてみると相続人がびっくりしてしまう内容の場合もあります。兄弟間で大きな差異があったり、遺留分が侵害されていたりと、納得できない内容も多いのです。
また、誰も予想していない遺贈先(例・ボランティア団体や学校など)が書かれている場合も、遺産を巡って大きなトラブルになる場合があります。

8.前妻に子がいる、認知されていない子がいる

相続は離婚歴がある場合や、内縁関係の方との間に子がいる場合にも注意が必要です。離婚した前妻や、内縁関係の女性には相続権は発生しません。しかし、前妻や内縁関係の方との間に子がいる場合には子には相続権が発生します。
普段お付き合いのない異母兄弟と相続をきっかけに向き合わねばならず、大きな衝突へと発展することも多いのです。

しかし、遺産分割協議は法定相続人全員が揃わないと行えません。内縁関係の子で認知されていない子であっても、死後3年以内であれば認知を求めて訴訟を起こすこともできるため、複雑な相続問題へと発展することも予想されます。相続後に行う相続人調査(被相続人の戸籍謄本を辿ること)によって隠し子が見つかることもあるため慎重に調査をする必要があるでしょう。

相続でもめないようにするためには

家族間で一度争いが起きてしまうと、調停や訴訟を終えた後も火種が残ってしまうことがあります。もう二度と顔も見たくない、という事態を避けるためにも、相続は円満に手続きしたいものです。
では、もめないようにするには、一体どうすれば良いでしょうか。相続でもめないコツは以下の2つです。

1.遺言書を正しく作ること

生前から相続を見据えて、遺言書を正しく作ることで相続トラブルを回避できる可能性は高まります。その際には、ご自身の思いを詰め込むことも大切ですが、相続人間で不満が生まれないように配慮をすることも大切です。

加えて、遺言書にはいくつか種類があります。その中でも、自筆証書遺言という種類の遺言は、後述の公正証書遺言とは異なり、自分一人で作成できる手軽な方法です。しかし、自筆証書遺言の場合は、法律知識のない方が単独で作成すると内容の正確さに欠けることも多く、遺留分にも無配慮な内容となってしまうことが多いです。

さらに、一定の方式に従って作成されていないと、そもそもその効力が認められないこともあります。

他方、公正証書遺言は、遺言作成の知識を有した公証人が作成に携わるため、遺言の方式に従っていないことを理由として無効となることはまずありません。
そのため、遺言書を作る場合には、弁護士などから助言をもらいながら相続人間の不満にも配慮した内容の公正証書遺言を作ることがおすすめです。

2.生前贈与の段階から家族で打ち合わせをすること

先に触れたように、生前贈与は特別受益となるため相続後のトラブルの種になる可能性があります。
今から生前贈与を開始する(あるいはしている)場合には、贈与を受けないご家族も含めて、今後の相続方針などの話し合いをしておくことがおすすめです。親子間や兄弟姉妹間で日頃からコミュニケーションがあると、相続開始後も円満に手続きが進みます。

相続でもめてしまったら、弁護士に相談を

もしも相続手続きの段階で紛争が起きてしまったら、早めに弁護士に相談されることがおすすめです。相続はその他の士業も相談に対応していますが、弁護士にしかできない解決方法もあります。

・もめている遺産分割協議に代理人として対応してくれる
・調停や訴訟に代理人弁護士として出頭の付き添いや出廷してくれる
・連絡窓口になってくれるため、嫌な親族への対応に悩まなくなる
・手続きに迷ったら法的なアドバイスをもらえる
・相続人調査や遺産分割協議書の作成なども行ってくれる etc.

このように弁護士に依頼をすると、相続のあらゆる場面で依頼者に代わって対応してくれます。弁護士や調停や訴訟のプロとして、紛争問題の解決にあたることも可能です。

まとめ

この記事では、遺産相続でもめる原因やよくあるケースに触れていきました。
相続は私たちの生活に身近な問題です。円満な相続を目指すためにも、まずは生前からしっかりと未来のご家族のために準備を始めましょう。

また、遺されたご家族間で相続がトラブルに発展している場合には、早期解決のためにも弁護士に相談されることがおすすめです。相続は相続税の納付期限なども見据えて早めに手続きする必要があります。困ったらまずは法律相談を受けるようにしましょう。

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