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作成日:2023.07.06 最終更新日:2023.07.06

死亡から10年後の相続放棄はどうなる?可能なケース・手続きの注意点等を解説

死後10年経過後にできることできないこと

大切な家族が亡くなってから10年も経過してから「相続放棄」を行うことはできるのでしょうか。結論から言うと、一定の条件が整っている場合には死後10年を経過していても、相続放棄を行うことは可能です。一方で、単純承認と認められる場合には相続放棄を行うことはできません。この記事では、「被相続人の死亡 から10年後の相続放棄」をテーマに、認められるケースや認められないケースなどを詳しく解説します。

相続放棄の期限

相続放棄とは、被相続人が残したい相続財産の一切を放棄することを意味します。住まいはもちろんのこと、預貯金や有価証券、借金や滞納税に至るまで放棄できます。相続放棄を希望される理由にはいろんな事情が挙げられますが、“被相続人の遺した借金を放棄したい”、“被相続人との関係を長年絶っており相続財産は一切不要”などのケースが多くなっています。

相続放棄には民法で期限が定められています。(民法915条)
相続の開始を知った日から「3か月以内」に手続きを行う必要があります。この期間は熟慮期間と呼ばれており、限定承認をしたい場合にも3か月以内に裁判所へ申述する必要があります。なお、熟慮期間は伸長させることも可能です。

相続放棄の期限について、「相続放棄の期限はいつまで?延長の手続き・過ぎてしまった場合の対処法を解説」で詳しく説明しています。

10年後でも相続放棄できるケース

上記に示したように、本来相続放棄は、開始を知った日から3か月以内に手続きを行う必要があります。では、被相続人の死亡から10年という月日が経過していても、相続放棄はできるのでしょうか。相続放棄ができるケースは以下3つです。

被相続人の死亡を知らなかったケース

相続の開始は被相続人の死亡を相続人が「知った日」から3か月以内とあるため、被相続人の死去を知らなかったなら、10年が経過していても相続放棄は可能です。疎遠になっていた、相続人が海外に暮らしていた、などのケースが考えられます。

相続人になっていることを知らなかったケース

相続人には順位があることをご存じでしょうか。被相続人の配偶者は常に相続人であり、配偶者以外には順位が定められています。

・第1順位 子・孫(直系卑属)
・第2順位 父母・祖父母(直系尊属)
・第3順位 兄弟姉妹

たとえば、被相続人の妻と子1名が相続放棄をした場合、子が最初からいなかったことになるため、相続権の移動により第2順位の父母や祖父母が相続人となります。しかし、相続放棄を完了しても裁判所などから「あなたが新たな相続人となりました」と連絡されることはありません。自身が相続人になっていることを知らない、ということは相続の開始を知らないため、被相続人の死去から10年が経過していても相続放棄は可能です。

相続財産があったことを知らなかったケース

被相続人に相続財産が一切ないと信じていた場合、死後10年が経過していても相続放棄ができる可能性もあります。住まいや預貯金などの相続財産が一切なかったため、単純承認と取られるような行動も相続人側に一切無く、ある日突然借金の存在を知った場合には、相続放棄が認められる可能性が高いでしょう。

相続放棄せずに放置した場合はどうなる?

被相続人の死亡から10年も経過した後に、相続放棄が必要となった場合、突然借金が発覚したケースなどが考えられます。しかし、「10年も経過しているし、相続人に影響はないだろう」と相続放棄をしなかったら、どのような問題が起きるでしょうか。

相続放棄をしなければ単純承認をしたとみなされる

一般的に被相続人に借金があった場合、金融機関や保証会社などが調査を行い、相続人宛に督促状などの方法で連絡を行っているため、10年程度経過してから借金が発覚するケースは少ないでしょう。しかし、個人からの借入や連帯保証人となっていたことが後から発覚した場合、借金の存在を知る方法が無かったため、10年を経過していても相続放棄が必要となる事態は十分に考えられます。

相続放棄をしなければ、単純承認をしたとみなされてしまいます。すると、借金を返済する義務を負ってしまうのです。被相続人の債務が相続開始後3カ月以上を経過した後に発覚した場合は、まずは慌てず法律の専門家に相談し、相続放棄の手続きを目指しましょう。

期限が過ぎてから相続放棄する際の注意点

期限が過ぎてからでも相続放棄の手続きを行うことは可能ですが、以下のとおり注意点もあります。

なぜ3か月を超えて相続放棄が必要となったのか理由が必要

相続放棄の期限は、「相続を知った日から3か月以内」です。すでに文中でも触れましたが、自身が相続人となっていることを知らなかったケースや、海外に暮らしており被相続人の死亡をそもそも知らなかった場合には、10年を経過していても相続放棄ができます。

しかし、被相続人と同居していた配偶者や子は「相続を知った日」は「死亡日」と考えられるため、なぜ相続放棄の手続きが遅れたのか、相当の理由を裁判所に伝える必要があります。たとえば、よくあるケースは相続人の借金です。相続財産の調査を行っていてもわからなかった高額の借金が突然判明した場合、相続放棄が認められる可能性があります。

単純承認とみなされるかどうかわからない場合

相続を知った日から3か月以内に相続放棄をしない場合、「単純承認」をしたとみなされます。また、相続放棄をする前に、被相続人が残した相続財産を処分してしまった場合も単純承認をしたとみなされてしまいます。単純承認とは、以下のような行為が該当します。

・被相続人の所有していた土地や建物を売却した
・被相続人の預貯金口座を解約し、使った
・被相続人名義の車を売却した
・被相続人が知人に貸していたお金を返してもらい、使った

単純承認とは、上記のように被相続人名義の財産を使う、処分する行為です。
たとえば、被相続人名義の車はすでに価値が無く、置いておくと負担となるため処分する場合も、単純承認をした行為とみなされます。単純承認とみなされないようにするためには、0円で処分ができたことを証明できるように準備する必要があります。相続放棄をしたいけど、単純承認についての知識がなく不安な場合には、予め弁護士へのご相談がおすすめです。

■葬祭費用はどう扱う?
葬祭費用については被相続人の財産から支払うケースが多いでしょう。では、被相続人の財産の中から葬祭費用を支払った場合、単純承認とみなされるのでしょうか。結論から言うと、一般的な費用の範疇であれば、単純承認にはならないと考えられます。ただし、葬祭費用の考え方は個人差が大きいため注意が必要です。

相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きは、相続人自身で行うことが可能です。相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなった最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。相続放棄の手続きは以下のとおりです。

1.収入印紙800円と郵券を用意(郵券は家庭裁判所によって必要枚数が異なる)
2.必要な書類を用意する
(相続放棄申述書・申述する相続人の戸籍謄本・被相続人の死亡が分かる戸籍謄本・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票)
3.相続放棄申述書の提出後に家庭裁判所から届く照会書に回答する
4.相続放棄受理書が届いたら完了

相続放棄申述書や照会書は難しい書式ではないものの、3か月を超えて相続放棄に臨む場合、書き方が分からず、不備も起きやすいため注意が必要です。不備があると受理がなされず、裁判所から問い合わせを受ける可能性もあります。

10年後の相続放棄は専門家に相談しよう

相続放棄はご自身で行うことも可能ですが、3か月以上を超えていたり、死亡後10年後に放棄に臨んだりする場合には、なぜ被相続人の死亡から10年の経過の後に相続放棄を行うのか、「上申書」と呼ばれる書面を提出しなければなりません。この書面は事情を説明するもので、相続放棄の手続きが遅れた正当な理由を書く必要があります。
ご自身でどのように書けばよいのかわからないまま手続きを進めると、相続放棄が認められない可能性もあるため注意しましょう。

まとめ

この記事では被相続人の死亡から10年が経過した後の相続放棄について、詳しく解説を行いました。きちんとした理由があれば、たとえ10年を経過した後であっても相続放棄は認められる可能性があります。しかし、上申書などを提出する必要があったり、場合によっては被相続人の遺した債務について、債権者への対応を要したりするケースもあります。まずは弁護士に相談し、どのように手続きを進めるべきか、アドバイスをもらうことがおすすめです。

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