テレビドラマなどで「身元保証人」という言葉が聞かれたりします。「身元保証人」とお金を借りる際の「保証人」の違いは何でしょうか。
身元保証人に関する決まりは、「身元保証に関する法律」によって定められています。一方で、お金を借りる際の保証人は、「民法」によって定められています。つまり、そもそもの法律からして異なっているのです。
身元保証法1条には「名称の如何をとはず、期間を定めずして被用者の行為により使用者の受けたる損害を賠償することを約する身元保証」とあります。「被用者」「使用者」という言葉からして、この法律は、雇用関係に関するルールを定めた法律といえます。
また、「被用者の行為により…受けたる損害」という言葉から、会社で働く人が会社に損害を与えた場面を想定しているといえます。
このような規定からすると、身元保証人とは、就職先の会社に、ある社員が損害を与えた場合に、その社員とともに損害を賠償する責任を負う人ということができます。
しかし、考えてみると会社に与えることができる損害は、想定できるものではありません。社用車に傷をつけてしまった場合から、会社が倒産するようなものまで様々ですから、身元保証人は、理論的には損害賠償しなければならない責任の範囲が、無限定といえそうです。
この点、身元保証法には、2条の期間制限(3年間または5年間)、4条の解除権及び5条の賠償範囲の制限といったルールがあり、身元保証人の責任を制限しています。特に、賠償の範囲を制限した5条の規定は「使用者自身の過失」「身元保証人となった経緯」「被用者の身上の変化」等のあらゆる事情を考慮して、具体的に責任の範囲を決めるとされており、身元保証人の責任を必要かつ合理的な範囲に制限しています。
身元保証法の目的は、身元保証人の責任を軽減することにあると言えそうです。
身元保証法の施工日は1933年ですから、戦前にできた法律といえます。現代では、各種保険が発達しており、従業員が起こした事故などは、各会社が入っている保険でカバーされるのが通常となっています。
では、現代において身元保証が不要かというとそうではありません。しっかりした身元保証人がいる従業員にたいしては、雇用主も安心して雇い入れることができますし、うつ病等従業員の様子がおかしい時等には、身元保証人と協力して従業員に対応することもできます。身元保証人の必要性は、現代でも十分に認められるのです。
とはいえ、現代においても身元保証人の主な目的は、損害賠償の責任にあり、身元保証人に対する高額な損害賠償責任の可能性は、常に内在しているものといえます。
「身元保証」も「保証」も、保証した際のリスクを慎重に検討すべきです。
身に覚えのない保証契約や、保証人となったのはよいが、実際にお金を支払えない場合などは、是非、弁護士まで相談ください。