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作成日:2022.07.06 最終更新日:2023.08.24

男性が離婚する際に知っておくべきこと

東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の荻野純哉(おぎのじゅんや)です。

日本における離婚の現状

現在の日本において夫婦が家庭裁判所を介して離婚をしようとした場合、女性よりも男性の方に不利な内容での離婚となることが多いという話をよく聞きます。皆さんの中にも、親権はほとんどの場合妻に認められてしまい夫には認められない、養育費は夫が妻に対して支払うものというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

実際、家庭裁判所を介して調停離婚・裁判離婚を行った場合、親権は一般的に母親が手にすることが多いです。これは、裁判所が子の福祉の観点から、親権を父と母のいずれに任せるべきかを判断する際の考慮事情の中に、母親という立場を担っていた人の方が有利となりやすい事情が多く存在するからです。もっとも、かかる考慮事情は母親が有利となるように意図的に設定されているのではありません。あくまで、父と母のどちらに親権を与えた方がより子供の幸せにつながるかという観点から考慮事情を導いたときに、その考慮事情により多くあてはまるのが母親であったに過ぎません。
これは、母親は家事や育児をして、父親は外で仕事をしてくる、という日本に古くから根付く典型的な家族観・役割分担が原因です。基本的に家のことを担う母親は、自然と子供との触れ合いや子供の世話をする機会が多くなり、そのような事情が親権争いにおいて結果的に有利な事情として働くのです。

更に、親権に付随して生じる問題が養育費です。養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでにかかるお金のことを言い、夫婦のうち親権を手にしなかった者が親権者となった他方の者に対して支払うものです。そのため、親権を手に入れにくい男性が、親権を得られなかった結果として支払うことが多いのです。
そして、このような結果だけを見たときに、多くの人は裁判所を介して離婚をした場合には女性の方が有利になる判決がされている!という印象を抱き、これが広まって一般の方にもそのような共通認識が生まれているのです。
とはいえ、前述した日本の典型的な家族像に当てはめた場合、親権や財産分与の面から見ると、女性は得るものが多く、反対に男性は失うものが多いというのは一応の事実です。

しかし、男性だって自分の子供を自分のもとで育てて成長を見守りたいと思う気持ちは女性と変わらないでしょうし、子供に大して約束どおり会わせても貰えないのに養育費だけはしっかり支払わなければならないなんて嫌だとも思うでしょう。
そこで、このような日本の離婚の現状において、男性が知っておくべきこと、押さえておくべきポイントを同じ男性の立場である私からお教えしたいと思います。

何を優先するのか

離婚をする際、男性はまず、この離婚において何を最も優先したいかを決めることが大切です。具体的には、妻との関係を直ちに断つために離婚そのものを優先するのか、それとも離婚に伴って妻側に渡す財産分与額の減少、親権の取得などの離婚の具体的内容を優先するのかといった点です。
ここで離婚そのものを優先する場合には、妻が直ちに離婚に応じてくれるよう説得するために、通常よりも多くの財産分与割合を妻に与えるなど妻に有利な条件を提示することが必要となってきます。
反対に、妻に与える財産分与額を少しでも減らす、親権を獲得するといった点に重きを置くのであれば、先ほどの場合とは異なり妻はそう簡単には離婚に応じてくれなくなりますから、離婚が成立するまでの期間が長期化してしまう可能性があります。

男性の思い通りに行きにくい場面

離婚において、男性が苦労する場面としては、主に親権、養育費、財産分与といった場面が挙げられます。

親権

親権とは、子の身上監護権、財産管理権のことを言い、婚姻中は夫婦双方に認められるものです。しかし、離婚がされると、通常、元夫と元妻の双方での適切な親権の行使が期待できないことから、離婚後は夫婦の一方のみにしか親権は認められません(民法819条)。
そして前述の通り、日本においてはほとんどの場合、母親に親権が認められます。そして父親が親権を獲得できる割合はわずか1割程度であることが平成28年度の全家庭裁判所における司法統計からも分かっています。
参照 平成28年離婚時の親権取得の割合 

では、このような一見すると父親にとって困難を極める親権争いの中で、父親が親権を獲得するためには一体どうすればよいのでしょう。

 本コラムの冒頭でもお話しした通り、裁判所が親権を夫婦のいずれに認めるべきかの判断は、子の福祉の観点から導かれる考慮事情に基づいてなされます。
裁判所は親権者を決める際、主に①父母についての事情と②子自身についての事情を考慮します。①については、監護に対する意欲・能力、従前の監護状況、健康状態、周囲による援助の可能性、子に対する愛情の程度などが考慮されます。②については、子の年齢・性別、従来の生活環境からの変化による影響の度合い、子がどちらの親との生活を希望しているかなどが考慮されます。そして、これら様々な事情が総合的に考慮されて、最終的に親権者となる者が判断されます。
 つまり、これらの考慮事情との関係で、母親よりも父親と生活させる方が子供の幸せにつながると裁判所に思わせることができれば、父親にも親権が認められる可能性が出てくるということです。

例えば、そもそも父親に親権が認められにくい理由の一つに、父親の監護実績が母親に劣るという点が挙げられます。これは、男性が外に働きに出て、女性が基本的に子供の面倒や家のことをするという傾向が未だ残る日本においては仕方のないものです。
しかし、反対に母親よりも父親の方が子の面倒を積極的に見ていたという事情があったとすれば、これは親権争いにおいて有利な事情となりえます。そのためには、普段から積極的に育児に参加している姿勢を見せる必要があります。

他の理由としては、父親に親権を認めたとしても父親が働きに出ているために、今後、子の適切な監護が期待できないのではないか?と考えられてしまうからです。
しかし、たとえ父親が日中働きに出てしまって子の面倒を直接に見られないとしても、父親の仕事中は父親の両親が父親に代わって面倒を見ることができる、といった事情があれば、父親にも親権が認められやすくなります。

さらに、母親が子を虐待していた、適切に面倒を見ていなかったといった、母親を親権者とすることに不適切な事情があったり、子自身が母親よりも父親との生活を望んでいるといった事情がある場合にも、父親に親権が認められやすくなります。

養育費

養育費とは、夫婦のうち親権が認められなかった者が親権者となった者に対して、離婚後の子の養育のために支払うべき金銭を言います。そのため、仮に父親に親権が認められた場合には、母親が親権者である父親に対して支払わなければならないこととなります。

養育費の支払いにおいて、妻は自身の生計を維持するとともに、子供が十分な環境で生活出来るようにするため、時に夫の想像を超えた高額な養育費を要求してくることがあります。しかし、当然のことながら男性にも自分自身の生活があります。そのため、実際のところ自分はどの程度の養育費の支払いをする必要があるのか、という一定の基準を知っておく必要があります。
その算定の基準として、裁判所が示している養育費算定表というものがあります。これは、子供の年齢、人数、養育費を支払う者の年収、養育費を受け取る者の年収を考慮して、ひと月当たりどのくらいの養育費を支払うのが相場であるかを示した表になります。
参照 裁判所の養育費算定表

ケース1

子供が10歳で、親権を母親が取得。父親は年収500万円、母親は専業主婦で収入が無い。
→この場合、養育費算定表を見ると、ひと月あたりの養育費は6万円から8万円となっています。そのため、このような家庭にあっては、大体このくらいの金額が養育費の相場となります。

ケース2

子供が2人おり、一人は8歳、もう一人は16歳。親権は母親が取得。父親の年収が1000万円、母親の年収が300万円の共働きの家庭。
→この場合、養育費算定表によると、ひと月当たりの養育費は18万円から20万円となりますので、このあたりの金額が養育費の相場となります。

このように、自分の年収や相手の年収などから養育費の相場が自分でも簡単に算出できますので、相手の要求する養育費が高いと思った場合には、一度、養育費算定表を使って計算してみてください。
ただし、これはあくまでも一つの算定基準であって絶対ではないので、この算定表によることが著しく不合理といえるような特殊な事情がある場合などには、これよりも低い養育費となる場合もあります。
より詳しく知りたい方は、養育費についてのコラムをご参照ください。

財産分与

離婚をする場合、夫婦が築き上げてきた財産(預貯金だけでなく、土地や建物といった不動産、さらには住宅ローンといった債務も含みます。)は原則として2分の1の割合で分割されることとなります。これは、妻が専業主婦で、夫のみが働き収入を得ているという場合でも変わりません。

しかし、妻に離婚の原因となる有責な事情、たとえば、不倫をしていた、日常的に暴力を振るわれていたといった事情があるような場合、男性としてはそんな人に離婚の際にも財産を半分持っていかれるのか!という憤りを感じることと思います。
この点、残念なことに、このような場合にも財産分与額自体を減額することはできません。このような有責性は財産分与額の算定においては考慮されるべき事情ではないと裁判所は考えているからです。
もっとも、そのような事情がある場合、夫は妻に対してその有責行為について慰謝料を請求できる可能性があります。すると、その慰謝料を財産分与額の算定において考慮し、慰謝料に相当する額を財産分与額のうちから減額し、相手方に支払わなくてもよいとすることができます。

他にも、財産の中に特有財産が含まれている場合や、夫婦間における財産形成の寄与度に大きな差があるような場合には、2分の1での分割という原則が修正される可能性があります。

特有財産とは、婚姻をする前から有していた不動産などの財産や、親から相続によって得た財産などを言います。これらは、夫婦が共同で築いた財産とは言えないことから、財産分与の対象とはならないとされています。
また、財産形成の寄与度に大きな差がある場合の例としては、優れた才覚により一代で会社を上場させるほどにまで成長させた代表取締役や、プロスポーツ選手などが挙げられます。これらは、その人の才能によってのみ形成された財産であり、パートナーの貢献度は通常よりも高くないと判断され、財産分与において2分の1の原則が修正されることとなります。

まとめ

以上のように、世間的には男性というだけで離婚において不利な判断をされると思われがちですが、適切な知識を有し、それを裁判所や相手方にしっかりと主張することができれば、一方的に相手のいいなりになるような内容での離婚は避けることができます。
そのためにも、裁判所がどのような観点で、どのような事情を重視して判断をしているかを熟知している弁護士に相談することが、自分の財産を守るうえで大切になってきます。
養育費や住宅ローンの支払い、親権などは離婚後もつきまとう問題です。離婚後も養育費などの支払いに苦慮し、自分の新たな人生を歩めなくなってしまってはやりきれません。
今回のコラムには記載しきれていない、あなたが有利になるための方法を弁護士は数多く知っています。離婚後は気持ちを切り替え、新たなスタートを切れるようにぜひ弁護士を頼ってみてください。きっと、あなたの力になれるような方法を数多く伝授してくれるはずです。

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