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コラム

COLUMN
作成日:2021.11.22 最終更新日:2023.03.03

養育費について

今回は養育費についていくつかの観点から説明していきます。

養育費とは

養育費とは、民法766条1項に規定がある「子の監護に要する費用」すなわち、非監護者の親が監護者の親に対して支払うべき子供の養育に関する費用のことを指します。

 具体的な養育費は、夫婦が離婚する際に、第1次的には父母が協議によってその分担を定めることになります(同項)。もっとも、この協議が調わない場合や協議をすることができない場合には、家庭裁判所が定めることになっています。(766条2項)

 離婚によって夫婦関係は終了しますが、離婚によって当然に親子関係が終了することにはなりません。つまり、離婚後も親には子供を育てていく義務があります。しかし、主たる養育は監護者である親が実際に行っていくことになるため、非監護者である親としては、「養育費」という形で子の養育に関わることになるということです。

養育費の始期

 養育費の始期はいつからになるのでしょうか。これは、監護者である親としてはいつから養育費を支払ってもらえるのかという問題になります。他方、非監護者である親としてはいつから養育費を支払う必要があるのかという問題になります。

 養育費の始期は、原則としては請求時と考えることが一般的です。しかし、場合によっては、請求時より過去に遡って養育費の請求をすることも認められます。

養育費の終期

 では、養育費の終期はいつからになるのでしょうか。これは、監護者である親としてはいつまで養育費を支払ってもらえるのかという問題になります。他方、非監護者である親としてはいつまで養育費を支払う必要があるのかという問題になります。

(1)原則

 養育費分担の終期は、子が「未成熟子」ではなくなったときとされています。現在、養育費の終期を明確に定める規定は存在しませんが、成年年齢である20歳を終期とするという運用が原則的だと思います。

 理由はいくつか存在しますが、例えば、子が成年に達した以上、親権は終了するものであるため、子の監護に関する処分として養育費の分担を請求できるのは、子が成年に達するまでに限られるというものがあります。

 そのため、民法が改正されて成年年齢が18歳となった以降に養育費に関して「成年まで」という合意をしたような場合には、終期は18歳となるものと思われます。もっとも、すでに定められている合意には基本的には影響しないと考えられていますので、成年年齢が20歳の時点で「成年まで」という合意をしたのであれば、これまで通り20歳と判断されることになるものと思われます。

(2)例外

 上記では、子が成人するまでが養育費分担義務を負う期間であるという話をしました。しかし、養育費の終期、つまり未成熟子か否かと、子が成人しているか否かは必ずしも一致しません。そのため、20歳が終期でない場合も存在します。

ア 20歳より前の場合

 未成熟子かどうかという問題は、子に稼働能力があるかという要素が重要になります。子に稼働能力があれば、親としてはもう養育監護する必要がないといえるためです。

 したがって、例えば、子が高校卒業後に就職し働いている場合には、高校卒業まで(18歳まで)とされる例もあります。

イ 20歳より後の場合

 他方、子が大学生である場合にはいまだ稼働能力がないと判断される可能性もあります。この場合には、子が成人している場合でも未成熟子として扱い、大学卒業(22歳)までとされる例もあります。

 成人した大学生を未成熟子と扱う場合には、夫婦の収入や学歴、社会的地位等から、子が大学に進学することが当然視される家庭か否かが基準とされるとされています。両親が大学に進学している場合や、相応の収入がある場合、当該子供の兄や姉が大学に進学している場合などには、成人している場合でも未成熟子として扱われやすい傾向があります。

 また、子が障害や病気により成年後もいまだ稼働能力がない場合にも、成年者の子を未成熟子と扱うことがあります。

養育費の額

(1)標準算定方式

 養育費は、本来は各家庭ごとに個別的に判断されるべき性質のものではありますが、これでは判断までに長期の時間を要することになってしまいます。養育費は、その性質上、迅速性が非常に強く要請されるものであるため、長期の審理は望ましくありません。

 そのため、現在は、簡易な計算と算定表を用いる標準算定方式と呼ばれる算定方法が一般的となっています。これは、夫婦の総収入等を基準として養育費を算定するものであり、算定表は家庭裁判所のホームページ等で公開されています。

(2)例外

 子の養育費にはいろいろなものがありますが、中でも夫婦の意見が調わないケースが多いのが、学校教育費(子の学費など)に関してです。

 標準算定表で考慮されている学校教育費は、公立中学校・公立高校に通った場合を考慮しています。そのため、私立学校の授業料や学習塾の授業料は考慮されていません。一般的に、私立学校の授業料や学習塾の授業料は公立学校の授業料と比べて高額になりやすいため、これを考慮するか否かで養育費の額が大きく変わる場合もあります。

 標準算定表では考慮されていない特別な費用として想定されるのは、以下のようなものがあります。

ア 私立高校

 私立学校の学費を義務者が負担するためには、私立学校での就学に合理性がある場合でなければならないと考えられています。

 具体例として想定できるのは、義務者が私立学校での就学を承諾していた場合があります。また、義務者の承諾が存在しない場合であっても、義務者の収入・学歴・地位などから不合理であると認められない場合には、その費用を義務者も負担することがあります。

イ 大学

 大学の学費に関しても、基本的には私立学校の場合と変わりません。

もっとも、現在は4年制大学進学も増えてきていること、4年制大学の卒業の有無でその後の子の収入に差が生じてしまうことなどから、一定の収入があり、親が4年制大学を卒業している場合には、大学の授業料等も義務者が分担すると認められる例も増えてきています。

ただし、終期を「大学卒業まで」とした場合、一見明確なこの終期が後の紛争を招く場合があります。浪人や留年、医学部などを想定し、「22歳まで」といったように具体的な年齢で終期を定めるのが、紛争防止の観点からは望ましいといえるでしょう。

ウ 補助学習費

 補助学習費に関しては、義務者が承諾している場合に分担することはこれまでと同じですが、少し特殊な事情があります。

 発達障害児など、学習補助的な塾に通わせる必要性が高い場合には、適切な範囲でこれを義務者にも負担させるべきとされています。

 他方で、受験予備校のような場合には、当該家庭の状況によっては義務者の負担とする余地もあると言われています。一般的に塾の費用は高額になるため、子が受験にであるからといって当然に認められるわけではありませんので、注意が必要になります。

事情の変動(養育費の減額)

 養育費は、一括で総額が支払われるケースもありますが、一般的には1か月に〇万円という分割方式で支払われます。

 しかし、子がまだ小さい場合などには長期間の支払いが行われることになりますが、この間に様々な事情の変動が起こり得るでしょう。こういった場合に、養育費に額を変更することができるのかについて、以下で扱います。

 まずは、定められた養育費を減額することができるのかについてです。これは義務者が求めていくケースがほとんどだと思われますが、どういった場合に減額請求が認められるのでしょうか。

前提として、当事者が合意しているのであれば、減額が認められる事情に制限はありません。そのため、当事者の合意によらない(裁判所の手続を利用する)場合を想定しています。減額の必要に迫られる事情は複数想定できますが、ここではそのうちのいくつかに絞って扱っていきます。

(1)再婚

 離婚した夫婦が再婚する場合には、当然、権利者の再婚と義務者再婚の双方が想定できます。

ア 権利者の再婚

 これは、養育費の支払いを受ける側が再婚したという場合です。ただ単に再婚をしたというだけでは、養育費の減額は認められません。しかし、子供が再婚相手と養子縁組をした場合には、養育費の減額が認められる場合があります。

 再婚相手が養子縁組をした場合には、再婚相手が子供の扶養義務を負うことになるためです。

イ 義務者の再婚

 この場合もただ単に再婚したというだけでは減額は認められません。しかし、再婚相手との間に子どもが生まれた場合や、再婚相手の子供と養子縁組をしたといった場合には、減額が認められる可能性があります。

 これは、義務者の扶養対象者が増えることにより、子供一人当たりの割合が小さくなるためです。

(2)経済的事情

 養育費の支払いは長期間に及ぶことも珍しくありません。そのため、支払期間中に義務者がけがや病気により就労困難となったり、失業したりという可能性は当然存在します。このように、義務者の収入が大きく減少した場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。

 他方で、権利者側の収入や資産が大幅に増加するケースも想定できます。この場合にも養育費減額請求の余地があります。

事情の変動(養育費の増額)

 次は、養育費の増額を求めることができるかです。権利者側が求めることになるケースがほとんどだと思われますが、どういった場合に増額請求が認められるのでしょうか。

 ここでも、減額請求の場合と同様に、当事者の合意があるのであれば、原則、事由に制限はありません。そのため、合意がないことを前提にケースを想定して説明します。

経済的事情の変化

養育費の増額が認められる可能性があるのは、養育費に関して合意した後に当事者の経財的事情に著しい変化があったと認められる場合です。例えば、義務者の大幅な増収、権利者の著しい減収、予備校費用や進学費用などの当時想定していなかった費用の発生などが想定されます。

ただし、これはそのままの状況では当事者間に著しい不公平が生じているような例外的な場合しか認められないと考えられています。したがって、正当な理由もなく権利者が仕事をやめ、これによって減収したといったような場合では養育費の増額は認められにくいでしょう。

おわりに

ここまで養育費に関しての様々な問題を扱ってきました。

もっとも、これらはあくまで一般論に過ぎず、実際には「その」家庭の状況はどうなのかといった個別的な事情が大切になります。

そのため、何か不明な点があれば弁護士にご相談されてみることをお勧めします。

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