離婚の原因には性格の不一致やモラハラなど、さまざまな理由が挙げられますが「お金に関すること」も夫婦関係が破綻する原因の1つです。たとえば、妻が大切な夫婦の貯金を使いこんでいたり、浪費によってお金を使いすぎていたりする状態が続いていたら、夫としては離婚の2文字が脳裏をよぎるのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、妻の浪費を理由に離婚する場合、財産分与や慰謝料、そして親権についてはどうなるのか詳しく解説します。
妻の浪費を理由に離婚できる?
もしも夫婦として生活している中で、妻の浪費が見つかったらどうするべきでしょうか。大切な夫婦のお金を浪費してしまうようなら、今後の生活にも不安が生じてしまうはずです。では、妻の浪費を理由に離婚はできるでしょうか。
まず、離婚をするための手続きには協議離婚、調停離婚、裁判離婚という3つの方法があります。このうち、協議離婚と調停離婚は両者の同意が得られれば離婚ができます。そのため、今回はこれらの手続きで相手方の同意が得られない場合に強制的に離婚を成立させる、裁判離婚に重点を置いて解説します。
結論から言うと、妻の浪費については民法770条1項5号が定める離婚事由の中にある、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があり、これを理由に裁判離婚を成立させることができる場合があります。
妻が自分の貯金を使いこんでしまった、ギャンブルによる多額の損失が発覚したなど、家計にダメージを与えるような行為は、夫婦関係どころか家族の生活にも大きな影響があります。
もっとも、妻の浪費にもレベルがあり、その程度により「婚姻を継続し難い重大な事由」を満たすかが変わってきます。
例えば、妻がブランド品などの高額商品の購入にお金を使っているとしても、それが家族の生活を脅かさない程度の範囲に収まっている場合には、離婚事由として認められにくいです。反対に、ギャンブルなどでお金を使いすぎてしまい生活費にまで手を出していたり、借金を負ってしまっていたりするようなレベルの場合には、離婚事由が認められやすくなります。
つまり、妻の浪費により家族(夫婦)生活が破綻させられているというレベルに至っているといえる必要があります。
妻の悪質な浪費を理由に離婚を考えている場合には、離婚に向けて浪費の証拠をきちんと揃えていくことで、離婚できる可能性は高いでしょう。
離婚する際の財産分与はどうなる?
離婚をする際には、「財産分与」について検討する必要があります。財産分与とは、離婚時に夫婦がともに築いてきた財産を、分配することを意味します。分配については貢献度に応じて分配されることが基本です。また、慰謝料も含めて分配することもあります。では、妻の浪費を理由に離婚する場合、財産分与はどうすれば良いでしょうか。
財産分与の基本は2分の1ルール
財産分与は基本的に2分の1ルールが採用されています。たとえば、夫婦生活の中で2,000万円の貯金を貯めたとしたら、1,000万ずつ離婚時に財産分与として分配するようなイメージです。
しかし、このルールには欠点があります。例えば、3,000万円あったはずの財産が、妻の浪費によって2,000万円に減っていた場合です。ルール上、1,500万円ずつもらえていたはずですので、夫は損してしまうことになります。
使い込まれた財産は財産分与において考慮することができる
浪費癖によって本来あったはずの財産が失われてしまっているなら、2分の1ルールに沿う必要はありません。夫婦共有の財産が浪費によって失われたのなら、財産分与をする際に配慮してもらう必要があります。
2分の1ルールはあくまでも原則であり、個別の事情にあわせて調整できるものです。今回のテーマのである妻の浪費の場合は、妻の財産分与を減らすことで、公平な財産分与が可能です。
例えば、先ほどの3,000万円あったはずの貯金のうち1,000万円が妻の浪費により使われていて、残りの財産が2,000万円に減っていたケースで検討してみましょう。
この場合、浪費されていなければあったであろう3,000万円を基礎として、夫は1,500万円、妻は1,500万円から浪費額1,000万円を引いた500万円を互いの財産分与額とすることができる可能性があります。
ただ、これはあくまでも一例ですので、必ずしもこのようにきっちりと妻の浪費分を財産分与額から減少させることができるわけではないことに注意しましょう。
慰謝料を請求できるケース
一生懸命働いて貯めてきた貯金が浪費によって失われた、などの事情がある場合は、離婚時に妻に対して「慰謝料請求」はできるのでしょうか。
結論から言うと、慰謝料請求は認められる可能性があります。詳しくは以下のとおりです。
証拠があれば慰謝料請求が認められる可能性がある
慰謝料請求を行う際には、浪費の事実を証明する必要があります。たとえばショッピングや食費に散財している証拠なら、クレジットカードの履歴などが有効でしょう。一方でやむを得ない出費(私立学校への学費や、病気の治療など)の場合は浪費とは言い難く、認められない可能性があります。証拠としては、以下のようなものを集めておくと良いでしょう。
・クレジットカードの請求履歴や請求書
・通帳の写しやネットバンキングの利用歴
・消費者金融などからの通知や督促状
・浪費と疑われる購入したものの写真(ブランド品や美容機器など)
ただ、相手方は浪費癖のある人物ですのでお金を持っている可能性は低いです。そのため、慰謝料請求が認められたとしても実際にその全額を相手方に支払わせることは難しいケースも多いです。
夫が子どもの親権を獲得するには
妻が驚くほどの浪費を重ねている場合、夫としては子への影響も考えて離婚時には「親権の獲得」を考える人もいるでしょう。では、夫が子どもの親権を獲得するためには、一体どうすればよいでしょうか。
親権には判断基準がある
一方の親が親権を離婚時に獲得するためには、親権の判断基準を知っておくことがおすすめです。
裁判所が親権を夫婦のいずれに認めるべきかの判断は、子の福祉の観点から導かれる考慮事情に基づいてなされます。わかりやすく言うと、夫婦のどちらと生活させる方が子の幸せにつながるかということです。
広く知られていますが、乳幼児期の子の親権は、一般的に母親が有利になる傾向があります(母性優勢の原則)。
乳幼児期は母親のみ育児休暇を取得したり、離職したりする傾向が高く、育児にかかわる時間が長いためです。
離婚を裁判所で調停や訴訟を通して争う場合は、子の監護が継続しやすい方へ親権を与えることが多くなっています。また、兄弟姉妹がいる場合は基本的に分離をさせないようにします。兄弟姉妹が揃って育つための環境を用意できる方へ、親権を与える傾向があります。
この他に、子の意見や面会交流の柔軟性なども鑑みながら、父と母のどちらが親権者にふさわしいのか検討されます。
親権を獲得するためのポイント
親権を獲得するためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。結論から言うと、「子の監護実績」が争点となります。監護とは、子どもを見守り、育てることを意味しています。子どもには、衣・食・住の全てを整える必要があり、しっかりと見守る必要があります。保育園や幼稚園の送迎、学校行事の参加、学校生活状況の把握なども子の監護に該当します。入浴や衣服の交換など、通院や予防接種の管理などの細やかなケアも監護の1つです。
もしも今後妻の浪費を争点に離婚を目指す際に、あわせて親権の獲得も目指すなら、積極的に子の監護を意識して子育てに参加することが望ましいでしょう。仕事に追われやすい方は、親族の力も借りながら、子にとって良い環境を整えていくことも大切です。
このように、普段外で仕事をしてきているような男性にとっては、親権取得は簡単なものではありません。しかし、だからと言って直ちに親権をあきらめる必要はありません。裁判所がどのような要素を考慮して親権者を判断しているかをしっかりと理解し、裁判所へ主張することで、夫であっても親権を獲得することはできます。
詳しくは男性が離婚する際に知っておくべきことをご覧ください。
妻の浪費が原因で離婚する際に、弁護士に依頼するメリット
妻の浪費を原因に離婚する場合には、弁護士に相談をすることがおすすめです。では、弁護士に相談するメリットには、どのような点が挙げられるでしょうか。この章では3つのメリットを紹介します。
【メリット①】浪費の立証をサポートしてくれる
妻の浪費を理由に離婚を求める場合には、財産分与や慰謝料請求に備えるためにも「証拠」を集める必要があります。なぜなら、妻が浪費を否定する可能性があるからです。もしも浪費を妻側が否定し、離婚に応じない、あるいは財産分与や慰謝料請求に応じない場合は浪費を「立証」する必要があります。
特に調停や訴訟で立証するためには、法的な知識が必要です。弁護士に相談することで、適切なアドバイスを得ることができ、浪費の立証をサポートしてもらえます。
【メリット②】離婚条件や公正証書作成を任せることができる
弁護士に依頼すると、代理人としてさまざまな手続きを代行してくれます。協議離婚時に作ることがおすすめされる公正証書の作成も行ってくれるほか、有利な条件になるように離婚条件を相手方に提案し、有利になるように交渉してくれます。もちろん、話し合いも代理人である弁護士が行います。そのため、仕事が忙しくて自分では離婚手続きや相手との話し合いをする時間がないという方も、弁護士に依頼することでスムーズに離婚手続きを進めることができます。
【メリット③】離婚調停や裁判の負担が軽減する
協議離婚がまとまらず、離婚調停や裁判による審判を求める場合にも、弁護士がいると心強いパートナーとして活躍してくれます。証拠の集め方はもちろん、調停委員への対策や、裁判所への書面作成なども委任できます。また、離婚を求めて別居している場合に起きやすい婚姻費用分担請求(別居期間中の生活費などの請求)も相談できます。
親権や財産分与に関することも任せることができるため、精神的な負担も大きく軽減できます。
また、調停や裁判の段階になると、法律的知識が必要不可欠となってきます。そのため、調停及び裁判をするとなった場合には、自身に不利な離婚条件とならないよう弁護士に依頼することを強くお勧めします。
まとめ
今回の記事では、「妻の浪費」に焦点を当て、離婚する場合に争点となりやすい財産分与や慰謝料請求、親権について詳しく解説しました。妻の浪費が見つかり離婚に向けて準備を進める場合、まずは弁護士に相談することがおすすめです。実績豊富な弁護士に相談することで、有利な条件での離婚成立を目指すこともできます。まずはお気軽にご相談ください。