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コラム

COLUMN
作成日:2024.08.30 最終更新日:2024.09.02

B型肝炎の夫が死亡|カルテもないという絶望的な事例

給付金請求

ご相談の経緯

依頼者の夫はB型肝炎に感染していたところ、慢性肝炎を患いながら亡くなられました。夫の生存中には、B型肝炎訴訟により給付金が貰えるとは家族の誰も知らなかったため、同訴訟を提起することはできませんでした。しかし、夫の死亡から6年後に、妻及びその子らはB型肝炎訴訟の存在を知りました。そこで、妻たちは、国のミスによりB型肝炎に感染し、慢性肝炎を患うこととなってしまった夫の無念を晴らしたいという気持ちから、とある法律事務所に相談に行きました。しかし、カルテや母子手帳といった資料が無いことを話すと、「うちでは受けられない」と断られてしまったそうです。
一度、法律事務所で断られてしまったことから、妻は「カルテや母子手帳が無い以上、B型肝炎訴訟は無理なのか」という絶望的な気持ちになっていたそうです。しかし、どうしても諦めきれなかった妻は、最後に他の法律事務所の意見も聞いてみようと考え、弊所にご相談に来られました。

依  頼  者:B型肝炎患者の相続人(妻、子)
症  状:慢性肝炎
給付金額:1,250万円
特殊事情:B型肝炎患者が既に死亡し、6年以上が経っていた。

問題となった点及び弊所での対応

母子手帳が行方不明に

B型肝炎訴訟において母子手帳が必要とされる理由は、満7歳までに集団予防接種を受けていることを確認する必要があるからです。しかし、依頼者の夫の母子手帳は、夫及び夫の母親が亡くなってしまっていたことから、その在処を知っている人はもはや誰もおらず、母子手帳を提出することができませんでした。
そこで、今回はこれら母子手帳の代わりとなる資料を集め、母子手帳の代替資料を提出する方向で進めることとしました。

夫の死亡により注射痕の確認が不可能に

母子手帳がない本件においては、母子手帳に代わる資料の一つとして、「医師による接種痕の意見書」の提出が必要でした。これは、医師がその人の注射痕の有無を確認し、医師の立場においてその人が集団予防接種を受けたことがあると認めるというものです。しかし、夫が死亡していたために、もはや注射痕の有無を確認することもできず、同意見書の取得もできないという問題がありました。
そこで弊所では、なにか他のもので医師による接種痕の意見書に代わる資料とすることができないかを検討しました。そして、依頼者にもご協力いただくことで、医師による接種痕の意見書の代わりとなる資料を用意し、対応しました。

夫の死亡によりジェノタイプが不明なままに

B型肝炎ウイルスには、ジェノタイプといって複数の種類があり、感染者は自身のジェノタイプが何なのかを検査して確認する必要があります。そして、数あるジェノタイプのうち、ジェノタイプAe型だけは、原則としてB型肝炎訴訟における給付金支払の対象となりません。これは、ジェノタイプAe型が比較的近年になってから初めて日本で感染が確認されたものであり、問題となる集団予防接種が行われていた時期(昭和16年7月2日から昭和63年1月27日)には感染するはずがないという理解があるためです。そのため、ジェノタイプがAe型である場合には、原則としてその事実を以て、集団予防接種を原因とした感染ではないと判断されてしまい、給付金は認められません。
本件で、既に死亡している夫の血液検査はできなかったため、カルテの中からジェノタイプに関する情報が無いかを確認しました。しかし、残念ながらカルテ中にはジェノタイプの記載はありませんでした。そこで、依頼者らから夫に関する情報を聞きとったり、カルテの中から利用できそうな情報が無いかを再度チェックしたりして、これらに代わる資料を弊所で作成し、対応しました。

母親の死亡により母親の血液検査も不可能に

B型肝炎は、母親から生まれてくる際にも感染する可能性があります(これを「母子感染」といいます)。しかし、B型肝炎訴訟で給付金が認められるためには、その感染があくまでも集団予防接種によるものであるといえなければなりません。そこで、母親がB型肝炎に感染していないということを明らかにするために、母親の血液検査結果を用意する必要があります。

本件で、夫の母親は既に死亡していたため、新たに母親に血液検査を行ってもらうという方法を採ることはできませんでした。そこで今回は、過去のカルテの中から、母親のB型肝炎の感染の有無が分かる記載がないかを確認することとしました。そのために、夫の母親が生前に入通院していた病院を調べ、各所にカルテの請求を行い、取りうる限りのカルテを取得しました。

しかし、結局母親のB型肝炎の感染の有無が分かる記載は見つかりませんでした。そして、カルテの保管期間との関係で、これ以上カルテを取得することもできなかったため、これまでに取得したカルテから分かる情報をもとに、夫のB型肝炎が母親からの母子感染ではないという主張を組み立て、対応しました。

多数の開示不可能なカルテ(医療記録)の存在

病院や診療所で保管されているカルテは、5年間は捨てずに保管しておかないといけないという決まりがあります(医師法24条2項)。大きい病院ではこれ以上の期間も保管してくれていることが多いですが、小さい診療所などでは5年間でカルテが破棄されてしまうことも少なくありません。

本件の夫は、死亡から6年もの期間が経っており、また、小さな診療所への通院歴もありました。そのため、給付が認められるために必要なカルテの多くが既に破棄されており、満足にカルテを取得することができませんでした。
弊所では、取りうる限りの全ての病院にカルテの開示請求をし、裁判所へは、現時点においてこれ以上のカルテを取得することは不可能である旨を上申することで対応しました。

粘り強い取り組みの結果、給付金を獲得

通常必要とされる資料の多くが用意できず、大部分を代替資料によって対応せざるを得ないという事情がありましたが、最終的にはなんとか1,250万円の給付金が認められました。本件は、先述の問題点に対応するべく、各方面に何度もカルテの開示請求をする必要があったこと、調査・検討しなければならない事項が多かったこと、依頼者のご協力を得て資料を作成する必要があったことなどから、一般的なB型肝炎訴訟よりも給付金が認められるまでに長い期間を要しました。

本件を進めて行く中で、複数の資料が不足していたこと及び訴訟が長引いていることから、依頼者自身、給付金を認められるのはかなり厳しいのではないかと感じておられたようです。後で依頼者から聞いた話ですと、「無理かもしれないとは思いつつも、なんとか和解が成立するように毎日お祈りをしていた」そうです。最初に相談に行った法律事務所で断られたこともあって、依頼者としては半ば諦めており、もはや神頼みをするしかないという心境だったと。

そのため、和解が成立し、1,250万円の給付金が認められたことをお伝えした時は、泣いて喜んでおられました。依頼者のこのような姿を見て、弊所としても最後まで諦めずに手を尽くしてよかったと感じました。

弁護士からのメッセージ

本件は、一見すると資料不足により給付金が認められないとも思われる事例です。実際、弊所としても本件を進めて行く中で、想定していた以上に必要な資料や情報が得られないことから、本件はB型肝炎訴訟の中ではかなり難しい案件であると感じていました。

しかし、どのような資料であれば、本来必要とされる資料に代替できるのか等を検討し、各資料の問題に適切に対応することで、最終的には依頼者が主張していた1,250万円全額の給付金の支払いが認められました。このことから、本件のようなかなり難しいケースでも、弁護士が適切に検討、対応することで給付金が認められる場合があることがお分かりいただけるかと思います。

インターネット上にある法律事務所のサイトなどで、B型肝炎訴訟で給付金を貰うために必要な資料を説明しているものが多くあります。しかし、それはあくまでも通常必要となる資料に過ぎません。そこに記載されている資料の全てを完全に用意できずとも、他の手段により不足している資料を補完することは可能です。通常必要とされる資料が無いという方も、そのことだけで簡単に給付金を諦めないようにしてください。

B型肝炎訴訟は、あなたがB型肝炎に感染させられたことで受けた苦しみに対して認められる、国の救済制度です。ですが、今までにB型肝炎訴訟を提起した人は、国が想定している感染者数たる約45万人のうち、わずか8万人ほどしかいません(令和2年10月末時点)。

つまり、救済の対象であるはずの多くの人が、まだこの救済制度を利用していません。そして、B型肝炎訴訟による給付金が認められるのは、現状、令和9年3月31日までに請求をした人に限られ、その期限は刻一刻と迫っています。

B型肝炎に感染しているけれども給付金の制度を知らなったという方や、必要資料が用意できず給付金を諦めてしまっていた方などは、期限切れになる前に一度弊所にご相談ください。弁護士があなたの力になれるかもしれません。

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