アトラス総合法律事務所弁護士の原澤です。
最近、新聞やニュース記事で「妻による暴力」という内容を扱ったものを目にする機会が増えてきました(朝日新聞2024年11月19日(火)朝刊1面「妻の暴力DVと気づけず」)。
「DV」といえば、暗黙のうちに、夫から妻に対する暴行をイメージする方もいるのではないでしょうか。しかし、最近は「妻から夫に対するDV」という事例が増えてきています。一昔前は「男なんだから我慢しなさい」ということが当たり前に言われていましたが、時代はもう変わっています。
弊所に離婚問題のご相談に来られる方のお話の中でも、「妻から暴力を受けている」というお話を耳にする機会が増えてきたように思います。
実際のところはどうなのか、データで確認してみましょう。
まず、最高裁判所で開示されている離婚事件に関するデータを見てみます。
最高裁判所事務総局が公表している『司法統計年報』を見ると、令和5年における婚姻関係事件は、以下のようになっています。
➀ 申立件数 夫;15,192件、妻:41,652件
➁ 配偶者による暴力を動機とする申立件数 夫:1,320件(約8.7%)、妻:7,711件(約18.5%)
令和5年から10年前の平成25年のデータは以下のとおりです。
➀ 申立件数 夫;18,345件、妻:48,479件
➁ 配偶者による暴力を動機とする申立件数 夫:1,492件(約8.1%)、妻:11,955件(約24.7%)
裁判所による統計を基にすると、「夫からの暴力」を理由とする妻からの離婚請求の割合は減少していますが、「妻からの暴力」を理由とする夫からの離婚請求の割合は増加しているということがわかります。
また、警視庁が公表している『配偶者からの暴力事案の概況』によれば、令和5年の相談件数は、女性からの相談が7,151件(78.7%)で、男性からの相談が1,941件(21.3%)となっています。
令和元年は女性からの相談が6,775件(80.3%)で、男性からの相談が1660件(19.7%)となっていますので、こちらも、女性から男性へのDVの割合が増加傾向にあるということが言えそうです。
・https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/719/012719.pdf(令和5年司法統計)
・https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/248/007248.pdf(平成25年司法統計)
・https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/jokyo_tokei/kakushu/dv.html(警視庁)