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コラム

COLUMN
作成日:2018.09.18 最終更新日:2021.10.12

賃貸借契約を終了させるには

東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の管野晶人です。

家を借りたり貸したり、といったことは比較的身近なことだと思います。貸主が賃料を取り、借主が家を使うとして結ぶ契約は、賃貸借契約(民法601条)のひとつです。

賃貸借契約を結ぶという段階では、いくらかかるのか、いつまで使えるのかといったことに気を付けると思いますが、契約が終わるという段階については、あまり意識していないことが多いと思います。
そこで、賃貸借契約はどういった場合に終了するのかについて、建物賃貸借を例に説明します。

賃貸借契約は、何かしらの「終了原因」がある場合に終了します。終了原因を大別すると、次の3つが挙げられます。

(1)貸主・借主の双方が納得し合意して賃貸借契約を終了させる場合、これは「合意解除」と呼ばれます。

(2)貸主あるいは借主の一方的な意思によって契約を終了させる場合が挙げられます。

例えば、貸主が一方的に契約を終わらせるため、一定の期間に更新を拒絶するなどしたときです。もっとも、貸主という強い立場の人が一方的に主張する分、具体的事情によって認められたり認められなかったりすることがあります。
また、期間が定められていない場合には、貸主または借主のどちらからでも一方的に契約の終了を申し入れることができます。

(3)債務不履行がある場合です。

例えば、借主が賃料を支払わない、ペット禁止なのにペットを飼っている、貸主がまともに建物を修繕してくれない、といった場合です。このように、相手が貸主あるいは借主として守るべきことを守っていないことが契約の終了原因に該当します。
 ただし、債務不履行を理由とする場合は、このような終了原因があるだけでは主張が認められないことがあります。

以上のことは、あくまで建物の賃貸借に関する内容ですから、土地や車といった他の物についてはまた違った規定が使われたりします。

次回からは、建物賃貸借の終了原因①②③について、より詳しく説明していきます。

終了原因(1)合意解除

「合意」とは字のごとく、当事者(お互い)の意思が合致しているということです。
契約は、当事者が互いに、これこれこうしてくださいと一定の縛りをかけるものです。もう契約に縛られたくはないということになれば、契約を維持する必要はなくなります。そこで、当事者双方の意思によって、契約を終わらせることができます。

「解除」が契約をなくすものというイメージはつくと思います。解除とは、通常、契約をはじめからなかったもの、そもそも契約をしていなかった状態として扱うものです。
ただ、賃貸借契約の場合は、一定の期間、物を使ったり賃料をもらったりしたという事実が残ります。この場合に契約をしていなかった状態となると、何回も行ってきた物の使用や賃料の収受は契約に基づかない行為、つまり正当な理由がなく勝手に行ったものだということになり、物を使用した分の利益をお金で支払えだとか、賃料を全部返せだとか、厄介な話になってしまいます。
そこで、こういった一定期間継続する契約を解除する、という場合の解除とは、その解除の時より前の契約の効果には影響せず、解除の時以降は契約を無効にする、というものになります(民法620条前段、厳密には「解約告知」と呼ばれます)。これなら、解除の時以降は契約に縛られないだけでなく、過去に物を使ったり賃料を収受したりしたことは契約に基づく正当なもののままになります。

ただし、合意解除ができるとしても気を付けなければならない場合があります。
AさんがBさんに家を貸し(原貸借)、BさんがAさんの承諾をもらって、その家をCさんに貸した(転貸借)という事例を考えてみます。このとき、Cさんの知らないうちにAさんとBさんが原貸借契約を合意解除しても、AさんはすぐにCさんから家を返してもらうことはできません。CさんがBさんから家を借りて使う権利を不当に奪ってしまうことになるからです。(大審院昭和9年3月7日判決 昭和8年(オ)1249号参照)。
 端的に述べると、合意解除は、原則として、第三者に不利な影響を与える方法としては使えません。

終了原因(2)一方的な意志

更新拒絶

建物の賃貸借は、大抵の場合、いつからいつまで建物を貸す・借りるという期間が定められていると思います。もっとも、その期間が満了しても、貸主が借主に対して何も言わないままにしていると、賃貸借契約は自動的に更新されたものと扱われます。
貸主がもう更新をしたくないのであれば、まず、借主に対して、期間満了の1年~6か月前の間に、更新をしない旨の通知をしなければなりません。

解約申入れ

期間を定めていない建物の賃貸借について、貸主・借主のどちらか一方が賃貸借契約を終わらせたいと考える場合には、解約の申入れを行う必要があります。
貸主から申入れを行うのであれば、その申入れの日から6か月後に、契約が終了します。
借主から申入れを行うのであれば、その申入れの日から3か月後に、契約が終了します。

さらに注意する点

貸主が更新拒絶をして期間が満了した、あるいは、貸主が解約申入れをして必要な期間が経過した、というときでも、借主が建物を使用し続けるのであれば、早いうちに改めて、契約が終わったのだから建物から出て行ってほしいと伝えなければなりません。ここまでしないと、賃貸借契約は自動更新されたものと扱われることになります。
しかも、ここまでしてもまだ、契約を終わらせることが認められるわけではありません。貸主の更新拒絶や解約申入れにはそれなりの理由が必要です。
例えば、貸主自身の住んでいた家が天災で無くなり、貸している建物以外に財産も住む場所のあてもなく、貸している建物を貸主自身が使用しなければ生活できないといった理由や、建物が老朽化しているため早急に大修繕をする必要があるといった理由です。こういった、貸主が建物を貸せなくなった事情と、借主が建物を使用する必要性といった事情を比較するなどして、契約を終わらせることが正当といえるかどうかを判断することになります。
場合によっては、貸主は借主に対して、いわゆる立退料を支払う必要がでてきます。

終了原因(3)債務不履行

建物賃貸借契約を、債務不履行を理由に解除するという場合、(ア)相手がその契約上の義務を怠ったといえることが必要になります。借主の義務違反というと、賃料を支払うべきなのに滞納している、ペット飼育禁止にもかかわらずペットを飼っている、貸主に無断で又貸ししたといったことが挙げられます。貸主の義務違反としては、修繕すべき部分を修繕しないといったことなどが挙げられます。

ただ、このような義務違反が認められるとしても、それだけでは契約を解除することができません。賃貸借契約は、契約期間中という長い目で見て、貸主・借主が互いに問題なくやってくれるだろうと信頼すること(信頼関係)に基づいて成り立つものです。そのため、「たまたまミスをしたくらいじゃ悪い影響は殆どないし、次からはちゃんとやるだろう」といったことが認められるのであれば、信頼関係は破壊されていないといえます。義務を怠った側としても、「それまでちゃんとやってきて、それなりの負担もしたのに、たまたまミスをしただけで終わりとされるのは納得いかない」ということがあるでしょう。
そこで、(イ)長い目で見て、義務を怠ったことが相手の信頼を裏切るほどのものでないと認められるならば、契約を解除して契約関係をなくす必要はないと判断されることになります。

このように、(ア)(イ)の点をクリアしてはじめて、賃貸借契約を解除することができます。

ところで、具体的にどういった事情があれば(イ)相手の信頼を裏切った(信頼に背くという意味で、背信性と呼びます。)と認められることになるのでしょうか。次の事例を想定して考えてみましょう。
<A氏はB氏に建物を貸した。B氏はA氏に無断で、その建物をC氏に又貸しした。そこで、A氏はB氏との間の賃貸借契約を解除したい。>
BがAに無断で、Cに又貸しすることは、「ちゃんとやってくれそうなBだから貸した」というAの信頼を裏切る行為になります。そのため、こういった無断転貸行為は一般的に、背信性があると捉えられます。もっとも、AはBCが一緒にその建物に住むことを許していたとか、Cは建物のごく一部をごく短期間使っただけといった事情があると、背信性は弱まります。
こういった様々な事情を総合的にみて、賃貸借契約を解除すべきほどの背信性があるかどうかを判断することになります。

賃貸を終わらせる際のトラブルは珍しいものではなく、その際にどういった事情や法を武器にするかという選択も悩ましいかと思います。トラブルの早期解決を望まれる場合には、是非、弁護士に相談してみてください。

 

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