まずはお気軽にお電話ください
Tel. 03-3526-5677

コラム

COLUMN
作成日:2025.07.24 最終更新日:2025.07.29

希薄で複雑化した親族関係での遺産分割協議に潜む落とし穴

遺産相続 家族関係の複雑化

複雑化する昨今の遺産分割の背景【会ったことない前妻・前夫の子】

現代は3組に1組が離婚をするといわれています。離婚をした夫婦の一方が、前の妻や夫との子を連れて新しいパートナーを作る場合もあります。離婚後に再婚がされたようなケースでは、前のパートナーや子どもとは疎遠になってしまうことがあるでしょう。
このように、現代では、結婚と離婚が繰り返され、家族関係が複雑化するという事例が存在します。

また、現代は人間関係が希薄になってきており、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、親族間で顔をあわせて、というようなイベントは数を減らしているように思われます。このような家族間においては、自身の妻や夫の親兄弟だからといって必ずしもかかわりを持っているとは限らず、一度も話をしたことがない親族が出てくることもそう珍しいことではなくなってきています。

前妻・前夫の子にも相続権はあるのか?【複雑な遺産分割】

上で述べたように、現在においては、家族関係が複雑化しています。それに伴って、相続においても複雑な家族関係ならではの配慮が必要になるというようなケースも存在します。

複雑化する遺産分割について触れる前に、以下では、遺産分割についての基本的な知識を確認しておきましょう。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法に定められた相続人となるべき人のことです。具体的には、亡くなった方(法律上は、「被相続人」という言い方をします。)の配偶者と、亡くなった方の血縁関係にある人たちです。なお、内縁の妻や夫がいた場合であっても、その人は相続人にはなりません。

亡くなった方に旦那さんや奥さんがいる場合には、その人はいつも相続人になります(民法890条)が、血縁関係にある人グループの相続人については、相続人になる順位が定められています。

民法に定められている順番は、①子(民法887条)、②直系尊属(民法889条1項1号)、③兄弟姉妹(同項2号)となります。つまり、亡くなった方の親や兄弟に関しては必ずしも相続人になるとは言えません。子がいれば子、子がいなくて親がいれば親、子も親もいなければ次に兄弟姉妹という具合に、順番に権利が巡ります。

また、上に書いたような関係ではない場合にも、相続権が発生する場合があります。民法には、「代襲相続人」という記載があるからです(民法887条2項、889条2項)。
代襲相続人とは、相続人となるべき人(=被代襲者)が相続権を失った場合にでてきます。代襲相続が起きる場合の例として、被代襲者が、相続が開始する前、つまり被相続人が亡くなる以前に死亡していた場合が挙げられます。

そして、代襲相続人となることができる人は、基本的には被代襲者の子ですが、そこにも制限があるので、注意が必要です(民法887条2項ただし書)。
ちなみに、再代襲相続という制度もあり(民法887条3項)、代襲相続人が被代襲者と同じように相続権を失っていた場合には、またその子が代襲相続人になるはずだった人の権利を受け継ぎます。

代襲相続人は、被代襲者が有していた相続分を受け継ぐことになります。そのため、代襲相続人がいるからといって、手続きが通常の相続と大きく変わることはありません。

法定相続分とは

そもそも相続分とは、相続の当事者となる相続人がそれぞれ受け継ぐ権利や義務の割合のことです。そして、その割合の基準を法律で定めたものを法定相続分(民法900条)といいます。

具体的には、
配偶者と子が相続人であるとき→配偶者と子が2分の1ずつ(1号)
配偶者と被相続人の親が相続人であるとき→配偶者が3分の2、親が3分の1(2号)
配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人であるとき→配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
となります。

このとき、子が実子か養子か、婚外子か、はすべて関係ありません。
子・親・兄弟姉妹が複数人いる場合には、当該相続人同士の割合は、基本的に等しくなります。

例えば、相続人が配偶者と子2人の場合、各相続人の法定相続分は、配偶者が2分の1となり、2人の子で2分の1となります。そして、同順位の相続人同士の割合は等しくなりますので、2人の子は、それぞれ4分の1ずつということになります。

遺留分とは

遺留分とは、各相続人に定められた、最低限度の相続分です(民法1042条)。
遺言等で、特定の相続人に多くの遺産が相続されてしまう場合であっても、遺留分の請求をすることができます。
その割合は以下になります(民法1042条)。
・直系尊属のみが相続人である場合→3分の1
・上記以外の場合→2分の1

なお、遺留分は金銭で請求することになります(民法1046条)ので、遺産を取得した相続人としても、せっかく相続した遺産を手放すということにはなりません。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、遺産についての分け方、それぞれの相続人が引き受ける遺産の具体的な割合を決める相続人間の話し合いです。

遺産の分割は、相続人の全員が合意しなければすることができません。相続人が一人でもかけていたら、遺産分割はすることができません。また、相続人がそろって話し合いをしていたとしても、一人でも協議の内容に反対している人がいるような場合には、それもまた遺産分割の手続きを進めることはできません。そのため、状況によってはスムーズな分割が難しい場合があります。

遺産分割協議の進め方【複雑な相続人関係で揉めないために】

では、スムーズな遺産分割はどのようにしたら実現できるのでしょうか。具体的なお話をする前に、まずは基本的な知識を以下でご紹介します。

遺産分割協議が必要な場合

前述の通り、遺産の分割は、相続人全員による合意が必要になります。
そのため、不動産の登記の名義変更や預金の払い戻しなどの相続の手続きを進めるためには、遺産分割協議が必要になるのが通常です。

しかし、協議が不要になる場合もありますので、以下に例を挙げます。

・相続人が一人しかいない場合
相続人が一人しかいない場合には、分割を合意する相手がいませんので、当然ながら協議は不要です。

・遺言がある場合
遺言がある場合には、それに従った方式、割合で分割すればよいことになりますので、この場合にも協議は不要です。

ただし、遺言があっても遺言通りの相続を行わない場合や、遺言に記載のない相続財産が発生した場合などには、協議そして、その分の遺産についてどのように分けるかを合意する必要があります。

令和6年4月の改正で不動産を相続した場合には、その旨を登記することが義務化されました。その登記は相続したことを知った日から3年以内にしなければなりません。もし、登記を怠った場合には、過料の対象になる場合があります。そのため、相続の対象となる財産に不動産が含まれる場合には、速やかな遺産分割が必要になります。

遺産分割協議の流れ

遺産分割協議を行うためには、まず協議に参加する相続人が誰なのかを確定する必要があります。相続人が確定したら、分割の対象となる遺産にはどのようなものがあるかを確定します。そして、遺産が不動産等である場合、その評価を確定します。評価をもとに、誰が、どれだけの遺産を受け継ぐのか、具体的な相続分を確定します。最後に、決まったことについて後から争われることがないように、また、外部(銀行等)に対して証明をするために遺産分割協議書にまとめておきます。

上に書いてあることを簡単にまとめると下のようになります。
相続人の確定→遺産の確定→遺産の評価の確定→具体的相続分の確定→遺産分割協議書にまとめる。

相続人関係が複雑化した遺産分割協議に潜む落とし穴とは

一般的な遺産分割の流れは上述のとおりですが、遺産分割協議は一筋縄ではいかないケースも多数存在します。
以下では、遺産分割協議がスムーズに進められないようなケースを複数紹介します。

見知らぬ相続人が現れた

葬儀の手続き等がひと段落し、遺産分割についての話をしようとしたときに、前妻の子を名乗る相続人から遺産分割についての連絡があった、というようなケースを想定しましょう。

たとえご自身が会ったことのない人が相続人として現れたとしても、その人が法律上の相続人に当てはまるのであれば、その人を排除して遺産分割の手続きを進めることは許されません。
まずは相続人に当たるのかを明らかにして、相続人に当てはまるのであれば、その相手とも分割につき話し合う必要があります。

上記のケースの場合、前妻の子であっても被相続人の子に該当しますので、基本的には、相続人にあたると考えられます。そのため、見ず知らずの前妻の子も含めて遺産の分割方法について、全員の納得する方法を模索していかなければならないということになります。

会ったことのない相続人と連絡が付かない

遺産分割協議は全相続人による合意が必要なため、連絡が取れない相続人がいると話を前に進めることはできません。

「昔会った時に遺産はいらないと言っていた」「被相続人が生前、特定の相続人には相続させたくないと言っていた」というような事情がある場合であっても、基本的には、特定の相続人を無視して遺産分割手続きを進めることはできません。

そのため、連絡が取れない相続人がいるようなケースであっても、何とかして連絡先を調べ、連絡を取った上で、遺産分割の話し合いを進めていかなければならないということになります。

前妻・前夫の子が同意してくれない

前妻は、法律上、相続人ではありません。しかし、子は法定相続人となります。
遺産分割協議は相続人全員による合意が必要であるため、合意してくれない人がいると話が前に進みません。

前妻や前夫の子とは、遺産分割時まで一切の交流がなかったというケースが大半を占めます。
感情的な対立が激しく先に進まないというよりは、「遺産分割になって突然出てきて厚かましい」という感情から、前妻や前夫の子には渡したくないというようなケースが多いです。

見知らぬ相続人が相続財産を使い込んだ

遺産分割は、相続時かつ遺産分割時に存在する財産を対象とするため、使い込まれてすでに費消された財産を対象とすることはできません。そのため、遺産の分割は、使い込まれた財産を抜いた分を基準に行われます。

しかし、これを貫くと、使い込みをした相続人が他の相続人よりも事実上多くの遺産を相続したような形になってしまい。各相続人間で不公平が生じてしまいますので、調整を行うことになります。

相続財産が使い込まれたと主張する場合には、使い込みの時期やその金額について、調査する必要があります。
使い込みを調べるためには、被相続人の口座の入出金履歴を取りよせ、不審な動きがないかを調べることになりますが、これらは非常に大変な作業となります。

また、使い込みを行った相続人は、被相続人と親しい関係にあった(例えば、介護等の日常の世話を行っていた)相続人であるケースも多く、日常のお世話を行った相続人とそうでない相続人との間での感情的な対立も大きく絡んでくるケースが多いです。

前妻・前夫の子など会ったことない相続人との遺産分割トラブル対策

上では、遺産分割で発生し得るトラブルの一例についてみてきました。
では、実際にトラブルが起きそうな場合やトラブルになってしまった場合には、どのように対処すればよいでしょうか。

話し合いで納得してもらう

トラブルの原因は、事実関係の誤解に基づく事例も存在します。
このような場合には、ある程度の時間をかけ、話し合いを重ねるうちに誤解が解け、遺産分割についての合意が形成できるというケースも存在します。

すぐに専門家に相談する

相続人同士の話し合いで解決できることが望ましいですが、現実はそうもいきません。
長期間にわたる感情的な対立等の影響で、当事者だけでの解決は難しい場合も多いと思います。そういった場合には、早い段階で専門家に相談をしましょう。

過去にご相談いただいた事案の中には、もう少し早い段階でご相談をいただければ、ここまで対立が激しくなることはなかったのではないか、と思うような事案もたくさんございます。
できるのであれば、トラブルになる前、トラブルが深刻になる前に専門家へご相談することをお勧めいたします。

複雑な相続人関係で遺産分割トラブルになる前に専門家に相談しよう

今回の記事では、「複雑な相続人間における遺産分割協議の注意点」について、弁護士が解説しました。

故人の婚姻関係が複雑で、相続人の数が多く、面識のない相続人同士で遺産分割が必要な場合は、トラブルになる前に、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
相続案件に関する経験豊富な弁護士を選び、無用なトラブルは回避しましょう。

アトラス総合法律事務所では、相続問題に強い弁護士が在籍しており、豊富な相談実績を誇っております。

相続全般について税務・登記手続などワンストップサービスを提供しておりますので、相続について相談がある場合にはお気軽にご相談ください。

 

CONTACT

まずはお気軽にご相談ください

電話で相談する
Tel.03-3526-5677
営業時間:平日9:30~19:00
メールで相談する
お問い合わせはこちら

アトラス総合法律事務所
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町1-8-1 SRビル7F
電話:03-3526-5677/FAX:03-3526-5678