まずはお気軽にお電話ください
Tel. 03-3526-5677

コラム

COLUMN
作成日:2023.11.23 最終更新日:2023.12.13

相続人と連絡が取れない場合、遺産分割はどうなる?手続きの流れと遺産を放置するデメリットを解説

人生の終わりには、大切な財産が残されることがあります。
しかし、遺言書が存在しない場合、相続人たちは遺産分割協議を行った上で、誰がどのように財産を取得するのか決める必要があります。
しかし、相続人の中には連絡に応じない、現在行方が分からないという方がいるケースも少なくありません。
では、相続人と連絡が取れない場合は、遺産分割協議をどのように進めるべきでしょうか。この記事では、手続きの流れや、遺産分割協議を進めることができない場合に遺産を放置するデメリットについて解説し ます。ぜひご一読ください。

相続人と連絡が取れない場合の遺産相続はどうなる?

相続人の中に連絡がとれない人がいる場合、遺産分割協議はどうなってしまうのでしょうか。遺言書がある場合と、ない場合に分けて解説します。

遺言書がある場合

遺言書がある場合、相続人の中に連絡が取れない方がいても、問題なく相続手続きを進められます。これは、遺言書があればその内容に沿って相続手続きを進めることになるので、後述のように法定相続人全員の同意を要する遺産分割協議が不要となるためです。
現在家族の中に失踪している方がいる場合は、予め生前から遺言書を作っておくことで、相続トラブルを回避できます。

遺言書が無い場合

遺言書が無い場合、法定相続人に該当する方が全員で遺産分割協議を行う必要があります(民法907条1項)。遺産分割協議は、法定相続人が1名でも欠けていたら無効です。
「あの人は長年不在だから…」と諦めて勝手に協議を進めてしまっても、協議そのものが無効のため銀行 口座の解約や不動産の名義変更などもできません。当然、その際に作成された遺産分割協議書も、無効となります。 このように遺産分割協議が無効となった場合には、不在者も含めて改めて相続人全員で遺産分割協議を成立させなければなりません。

ケース別|連絡の取れない相続人がいる場合の手続き

連絡の取れない相続人がおり、遺産分割協議が難航している場合の手続きを、以下2つのケース別に解説します。

【ケース①】行方が分からない場合

相続人の中に連絡がつかない人がいる場合、遺産分割協議を進めるためにも所在を掴む必要があります。そこで、以下3つの方法で所在を調査しましょう。

①住所地の調査

不明となっている相続人の調査は、「住民票」もしくは「戸籍の附票※1)」で調べることができます。住民 票が分からない場合は戸籍の附票で追うことが可能です。親族の誰かの戸籍の中に当該不明者が入っている場合は、その戸籍を頼りにその人の現在の戸籍までたどり、本籍地のある各市区町村役場で戸籍の附票を取得することで、その人の住所を把握することができます。

(※1)戸籍の附票は戸籍謄本とは異なります。住所の記録をする公簿です。

②不在者財産管理人の申立て

住所がわかって手紙で連絡したり、訪問したりしても所在が掴めない場合、遺産分割協議を進めるためにも「不在者財産管理人」(民法25条1項)を選任する必要があります。

不在者財産管理人は、行方不明者の財産を法的に管理し、保護する代理人です。 裁判所に申立てを行い、不在者財産管理人が選ばれた後、その不在者財産管理人が遺産分割協議をするにつき権限外行為の許可を裁判所から得れば、その不在者財産管理人は遺産 分割協議に代理人として参加できます(民法28条)。 そして、同管理人が不在者に代わって遺産分割協議に参加することで、相続人全員で遺産分割協議が行われたとして、有効に遺産分割協議が成立します。

③失踪宣告も可能

相続人が長期間失踪しており、最後に行方が分かっている時から7年以上の年月が経過している場合は「失踪宣告」を行うことができます(民法30条1項)。この宣言は、失踪者を法的な死亡と同等にみなし、遺産分割協議を進めやすくします(民法31条)。すると、遺産分割はこの失踪者が死亡しており、もはや相続人ではないことを前提として進めることができるようになります。
そのため、失踪者が相続人でなくなることで相続人の範囲に変動が生じる場合には、新たな相続人となった者が遺産分割協議に参加することになります。

【ケース②】連絡を無視される場合

相続人の中には所在はつかめているものの、連絡に応じてくれないケースもあります。 この場合、その人は生きていますし、また、行方も分かっているため、上述した不在者財産管理人と失踪宣告という方法は使えません。

そういったケースでは、まずその相続者が遺産分割協議に参加することにメリットがあることを伝えましょう。例えば、「当該相続においては遺産が3000万円あり、あなたはその遺産につき、法律上4分の1を相続する権利を持っています」、といった具合です。それでも応じない場合には、今後、遺産分割調停や遺産分割審判がなされ、裁判所へ出向く必要がでてくるなど、遺産分割協議の段階で応じるよりも面倒なことになるといったデメリットについても伝えましょう。

手紙だけでなく、電話での連絡や訪問で直接話すなど、様々な方法を試みましょう。
とはいえ、ここで相手方への対応を誤ると相手方の機嫌を損ねてしまい、遺産分割協議に参加してもらえなくなるおそれもあるため、注意しましょう。

また、その相続人が相続放棄を考えている場合もあります。相続放棄をすれば、遺産分割協議に参加する必要はありませんが、相続を知ってから3か月以内のうちに、家庭裁判所で手続きをしなければなりませ ん(民法915条1項)。相続人が相続放棄を希望している場合は、手続きを取る必要があることを伝えましょう。 相続放棄がなされるとその人は相続人ではなくなるため、その人を除いた相続人達のみで遺産分割協議を成立させることができるようになります。

相続の放棄方法については、こちらの記事をご覧ください。
相続の放棄の2つの方法を解説|遺産分割協議書の書き方も紹介

それでも連絡に応じてくれない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停をの申立てすることになります。調停申立てにより、家庭裁判所が相手に連絡を取り、協議調停を進める手続きを始めます。
なお、調停にも応じない場合、遺産分割審判が行われ、裁判所が遺産の分割方法を決定します。

遺産分割をしないで放置するデメリット

相続人の行方が分からず遺産分割協議が進められないからといって遺産分割手続きをせずにいると、思わぬ問題に直面することがあります。ここでは、相続人の行方不明などにより、遺産分割協議ができない状態を放置するデメリットを、3つ解説します。

【デメリット①】不動産を売却できない

遺産分割協議ができないと、相続財産に含まれている不動産を売却できません。行方不明者を含んだ相続人全員が財産を共有している状態が続くためです。不動産の売却には相続人全員の同意が必要で す(民法251条1項)。
また、親と同居していた家を相続したい場合に、司法書士に相談したとしても名義人の変更すらできませ ん。
不動産を売却できない以上、たとえ遠く離れた空き家や田畑であっても、その不動産の「管理責任」が継続します。近隣の方々とトラブルを避けるために、適切に管理し続ける必要が生じます。

しかしながら、相続人全員の同意が必要となるのは当該不動産全体を売却する場合です。そのため、各相続人は自己の有する法定相続分の共有持分については、他の相続人の同意なしに自由に売却することができます。ですが、このように他にも共有者がいる不動産の持分を売る場合、買手としては不動産全てを自分一人で自由に利用することができないという不都合が生じます。

そのため、基本的にこのような共有持分は需要が少なく市場価値が低いため、不動産全体を売却して売却金を法定相続分に従い分割する場合よりも得られる金額が少なくなりやすいのです。このことから、多くの利益を得るためにも遺産分割協議を成立させ、不動産を全体として売却することをお勧めします。

【デメリット②】預貯金の払い戻しが困難

相続人が揃わず、遺産分割協議が難航していると、遺産分割協議が成立するまでの間、被相続人が遺した預貯金口座の払い戻しや証券口座の解約手続きが行えません。その結果、相続財産が未処理の状態が継続することがあります。そのせいで、葬儀費用など緊急を要する支出を相続財産の中から支払うことができず、相続人自身が用意する必要が生じるところ、相続人がこの費用を用意できなかった場合に支払いに困るといったケースがありました。

そこで、令和元年の民法改正により、葬儀費用などの緊急を要する支出については、一部の仮払いが認められるようになりました。(※2)

(※2)仮払いが認められているのは、葬儀費用などであり、預貯金の3分の1に対して法定相続分を乗じた金額なら受け取れます。なお、1つの金融機関につき150万円が上限です。

【デメリット③】相続税申告における不利益

相続税申告が必要なケースの方も注意が必要です。相続税申告は相続が開始した翌日から10か月以内にするもの と法律で定められています。たとえ遺産分割協議が難航していたとしても、これを理由に期限の延長はできません。
つまり、「法定相続人が法定相続分どおりに相続した」と仮定して相続税計算を行った上で、期限内に納税する必要があります。

相続税申告にはさまざまな控除や特例が設けられていますが、遺産分割協議が成立していないと、それらの税額軽減制度を活用できません。たとえば、小規模宅地の特例などが使えなくなるため、高額の相続税がかかるリスクがあります。

■相続税に必要なお金が足りなくなるケースも

デメリット②で触れたように、被相続人が所有していた預貯金口座の解約ができないため、相続税の納付には、相続人が自らの財産を拠出して納税せざるを得ない可能性があります。
手持ちに現金が用意できず、物納を検討される方もいますが、相続税の物納は非常に厳しい条件が設けられているため注意が必要です。

まとめ

今回の記事では、相続人と連絡が取れない場合の遺産分割の手続きや対処法について詳しく解説しました。遺産分割協議が滞ってしまうと、不動産の売却や預貯金口座が解約できないなどのデメリットが発生します。

この場合には、既に説明したように不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きをする必要があります。ですが、これらの手続きには連絡が取れない方についての調査や裁判所への申立て手続きなど、一個人が行うには困難な作業が多く含まれています。

また、不在となっている者への連絡についても、個人からの連絡だと軽視して無視されたり、最悪の場合、詐欺か何かかと勘違いされたりしてしまうこともあり得ます。弁護士を通して不在となっている相続人に連絡を取ることで、個人が行うよりも円滑な相続手続きが期待できます。「相続人が見つからない、連絡がつかない」と悩んだら、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

CONTACT

まずはお気軽にご相談ください

電話で相談する
Tel.03-3526-5677
営業時間:平日9:30~19:00
メールで相談する
お問い合わせはこちら

アトラス総合法律事務所
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町1-8-1 SRビル7F
電話:03-3526-5677/FAX:03-3526-5678