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作成日:2023.11.11 最終更新日:2023.12.12

法定相続人とは?範囲と相続順位・相続放棄の注意点も解説

「誰が法定相続人になるのか知りたい。」
「法定相続人という言葉を聞いたけど、具体的にはどのような人がなれるのか。」 相続が開始すると、法定相続人が誰なのか、状況によっては特定する必要があります。そこで、今回の 記事では法定相続人について、対象となる方の範囲、相続順位、相続放棄の注意点も解説します。相続 の基礎がわかる記事です。ぜひご一読ください。

法定相続人の範囲と相続順位

「法定相続人」とは、被相続人の財産を法的に受け継ぐ権利を持つ者のことです。法定相続人に は、被相続人の配偶者、子供、親、祖父母、兄弟姉妹などが含まれます。法定相続人には以下のと おり順位があります。では、この順位とはどういうことかというと、第1順位の相続人がいる場合には第2順位、第3順位にあたる人は相続人となることができないという、相続人の優先順位を意味します。反対に、第1順位の相続人にあたる人がいない場合には、次は第2順位にあたる人が子の順位に従って相続権を有することになります。

【必ず相続人になる】配偶者

被相続人(亡くなられた方)に配偶者がいる場合、その配偶者は、必ず相続人になります(民法890条)。なお、ここでの配偶者とは、法的な婚 姻関係を結んでいる人を指します。離婚している元配偶者や、内縁関係で入籍をしていない方は含みません。
一方で、長年別居をしている方でも、婚姻関係が継続している場合は相続人になります。

【第1順位】子や孫

子は、「直系卑属」と呼ばれており、法定相続人としては第1順位に該当します(民法887条1項)。たとえば、離婚によって子は元配偶者のもとで暮らしていても、血縁者であることは変わらないため、相続権があります。また、婚姻関係にない夫婦の間の子についても、被相続人が母親の場合にはその子は当然に相続権を有しますし、被相続人が父親の場合でも父親がその子を認知しているならば、その子は相続権を有することになります。
つまり、逆にいうと婚姻関係にない夫婦の間の子で、父親の認知を受けていない子については父親と血縁関係が認められても、その子は父親の相続人にはなりません。
以上の通り、第1順位の相続人は被相続人の子です。しかし、次のような例外的な場合には、被相続人の孫が第1順位の相続人になることがあります。

■代襲相続が発生する
被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなっているなどにより相続ができない場合、その子に子(被相続人から見ると孫)がいると、代襲相続権が発生します(民法887条2項)。すると、本来被相続人の子がなるはずであった相続人の地位を孫がそのまま受け継ぐことになり、結局、孫が第1順位の相続人となります。子の代襲相続は世代に限度が設けられていないため、ひ孫や玄孫も代襲相続人になること があります(民法887条3項)。

【第2順位】親・祖父母

法定相続人の第2順位は、「直系尊属」です(民法889条1項1号)。被相続人から見て親や祖父母がこれに該当します。第1順位とは異なり、第2順位の直系尊属では代襲相続は発生しません。 これは代襲相続が、本来相続人となる者が被相続人よりも先に亡くなっているなどにより相続できない場合に、その相続人の直系卑属に被相続人の財産を相続させることを定めた規定だからです。祖父母は親(被相続人の父母)との関係で直系卑属ではないため、代襲相続は起こりません。
ですが、親が被相続人より先に亡くなっていて、祖父母がまだ健在の場合には、祖父母は自分自身の直系尊属としての地位に基づいて相続人となります。つまり、代襲相続ではないですが、本来相続人となるべき地位の人が被相続人よりも先に亡くなっている場合に、その先に続く人が相続人になるという点で、代襲相続に類似した結果となります。

【第3順位】兄弟姉妹・甥姪

法定相続人の第3順位には、兄弟姉妹が該当します(民法889条1項2号)。たとえば被相続人が単身者で、子もおらず、親も既に亡くなっているような場合は、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹については第1順位と同様に代襲相 続が規定されているため、もしも兄弟姉妹が被相続人よりも先に死去している場合は甥や姪が相続人になります。
ただし、兄弟姉妹については代襲相続に限度が設けられており、1代限りです(民法889条2項)。 つまり、第3順位の相続権は、被相続人の甥姪までにしか発生せず、兄弟姉妹だけでなく甥姪までもが被相続人よりも先に亡くなっていても、甥姪の子が更に代襲相続をして相続人となることはありません。

相続順位別| 法定相続分は?

法定相続人には順位がありますが、相続できる「法定相続分」についても民法上で規定されています。こ の章では相続順位別に相続財産を受け取れる割合について解説します。

【必ず相続人になる】配偶者

第1順位の配偶者はその他の相続人との組み合わせによって法定相続分が異なります。例えば、配偶者とその子が相続人の場合、配偶者の法定相続分は2分の1です(民法900条1号)。配偶者は常に相続人である立場から見ても、 法定相続分の割合は大きい立場にあります。
子供や兄弟姉妹が2人以上の場合は、それぞれの地位に基づいて認められる法定相続分をその人数で等分します。

■配偶者以外に相続人がいない場合
配偶者が全ての財産を1人で相続する

■配偶者と子2名が相続人の場合
配偶者は2分の1、子2名は4分の1ずつ

■配偶者と直系尊属が相続人の場合
配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1

■配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1

【第1順位】子や孫

子が配偶者と一緒に相続する場合、法定相続分は2分の1になります。配偶者が被相続人よりも先に死去している場合 は、子が全ての相続財産を承継できます。配偶者と子が相続する場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子も2 分の11です。前述した通り、子が複数いた場合は法定相続分をその人数で等分されます。 ただし、被相続人の子が被相続人よりも先に死去している場合は、その子の子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。この場合、孫が第1順位の相続人となり、配偶者と共に相続人となります。なお、その際の孫の相続分は子の相続分と同じく2分の1となります。

【第2順位】親・祖父母

第2順位である親や祖父母は、第1順位の相続人がいない場合にのみ相続権を持ちます。そのため、配偶 者と一緒に、もしくは直系尊属のみが相続人となる場合に相続します。直系尊属のみの場合は全ての相 続財産を相続し、配偶者と一緒に相続人となる場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1となります。

【第3順位】兄弟姉妹・甥姪

兄弟姉妹は第3順位という立場にあり、第1順位と第2順位の相続人がいない場合にのみ相続権を持ちます。そのため、配偶者と一緒に相続人になるか、兄弟姉妹のみが相続人となる場合に相続します。
兄弟姉妹のみが相続人の場合は全ての相続財産を相続します。配偶者とともに相続する場合は、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。
<h2>法定相続人の範囲における注意点</h2>
相続は遺言書がない場合、法定相続人の範囲を特定した上で遺産分割協議を進める必要があります。では、法定相続人の範囲を判断するにあたっては、どのような注意点があるでしょうか。詳しくは以下のとおり です。

【注意点①】法定相続人が死亡している場合

法定相続人が死亡している場合、代襲相続権が発生するか否か判断する必要があります。 代襲相続は直系卑属(子や孫)、もしくは兄弟姉妹の際に発生します。

①直系卑属→相続人が確定するまで相続権は移動する。孫、ひ孫、玄孫など

②兄弟姉妹→甥姪がいない、もしくは死亡している場合には、代襲相続は生じない。

遺産分割協議などが紛糾し、思うように相続手続きが進まず手続きの完了までに時間がかかってしまうことは少なくありません。そうなった場合に起こりうることが、相続手続き中の相続人の死亡です。相続手続き中に相続人が亡くなった場合、上記の代襲相続は発生しません。なぜなら、既に述べたように代襲相続は被相続人よりも先に法定相続人が亡くなっている場合に生じるものであるところ、相続手続き中の相続人の死亡は、被相続人よりも後に相続人が死亡している場合であり、これに当たらないからです。
そして、相続手続き中に法定相続人の誰かが死亡した場合には、その亡くなった方の相続権は亡くなった方の相続人に相続されることになるため、亡くなった方の相 続人が新たに遺産分割協議に参加する必要があります。
また、場合によっては「法定相続人」が不在の誰もいないという場合があります。これは、法定相続人にあたる配偶者、第1順位から第3順位の相続人について、代襲相続等の可能性も全て考慮したうえで、法定相続人となる人がもはや一人もいないという場合です。こういった事態は、相続人が全員死亡してしまっていたり、相続放棄をしてしまっている場合に起こります。すでに法定相続人に該当する方が死去している 状況などです。この場合は相続財産を承継する人がいないため、銀行口座、不動産、財産などを管理する人がいません。
相続財産を管理する人が不在の場合、まずは家庭裁判所で「相続財産清算人」の選任申立てを行う必要 があります。相続財産清算人は、通常弁護士などが指名され、相続人の特定を行い、財産の適切な管理 を行います。(令和5年4月1日以降、従来の相続財産管理人は名称が変わり相続財産清算人と呼ばれています。)

【注意点②】実子ではない子がいる場合

連れ子がいる方との再婚があるケースや、認知していない婚姻関係以外で生まれた子が居るケースでは、以下の点に注意が必要です。
・配偶者の連れ子は実子ではないため相続人には該当しないが、生前に養子縁組をしている場合は第1 順位の相続人になる。
・実子であっても認知していない場合は相続人ではない。生前もしくは遺言書内で認知した場合は第1順 位の子となる。
配偶者の連れ子や、婚姻関係以外で生まれた子(非嫡出子)に相続させたい場合は、養子縁組や子の認 知を行っておく必要があります。相続人ではない場合、遺留分も受け取れませんのでご注意ください。

【注意点③】内縁のパートナーがいる場合

内縁のパートナーとは法律的な結婚や登記上のパートナーシップがない、事実上の夫婦関係を築いている相手を指します。内縁関係、または事実婚とも呼ばれます。
しかし、内縁のパートナーは配偶者としての相続権は得られません。内縁のパートナーに相続財産を承継させたい場合には、遺言書を使ったり生命保険を活用したりと、別の方法での財産承継を検討する必要が あります。
裁判所から特別縁故者であると認められることも選択肢の1つですが、それは相続人が一人もいない場合に限ら れる(民法958条)ため、これをあてにしていると相続人がいた場合に何も得られなくなってしまうおそれがあります。そのため、上記の遺言書などの方法を採っておくことをおすすめします。

【注意点④】相続人が行方不明の場合

法定相続人が行方不明になっているケースでは、遺産分割協議が進められません。遺産分割協議は相 続人全員の同意が必要です。そこで、もしも相続人の中に行方不明者がいる場合には、不在者となってし まった相続人の代理人を務める人を、家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
この場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任の申立てを行い、選任された方に裁判所から遺産分割協議をするにつき権限外行為の許可が認 められれば、相続人の代理人として遺産分割協議に参加してもらえ、遺産分割協議を進行、完了することができます。
また一定期間、法定相続人の行方が判明しない場合は、失踪宣言が認められる場合もあります。 円滑な相続を目指す場合には、こうした方法を知っておく必要があるでしょう。

相続放棄をする際の注意点

相続放棄をする場合には、法定相続人の範囲や順位についてどのような注意点があるでしょうか。2つの 注意点を解説します。
相続の放棄については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 「相続の放棄の2つの方法を解説|遺産分割協議書の書き方も紹介

【注意点①】法定相続人が相続放棄した場合

法定相続人の中に相続放棄をする人がいたら、その方は相続人ではなかったことになるため、プラス・マイ ナスの財産を問わず承継しなくてもよくなります。プラスの財産よりも明らかに高額の債務がある場合は、相続放棄を視野に入れる必要があるでしょう。
そして、相続放棄後は相続人の順位が移動する場合があります。
これはどういうことかというと、例えば第1順位の相続人として子がいたとします。この場合にその子が相続放棄をすると、次の順位である第2順位の父母に相続権が移るということです。ちなみに、相続放棄の場合には、代襲相続は発生しない点に注意が必要です。債務がある場合は督促通知の到着により、突然 ご親族が相続人となったことを知る可能性があるため、相続放棄をする場合は次に相続人となる方にご連 絡をすることも検討しましょう。(連絡は義務ではありません)

【注意点②】不動産を相続放棄する場合

前述したように、相続放棄は一切の相続財産を放棄するため、住まいや田畑などの不動産も放棄します。 しかし、次の相続人(もしくは管理者)が見つかるまでは、保存責任は残されます。 もっとも、この点は令和5年の改正により保存責任を負う者の範囲が限定されることになりました。どのような場合に保存責任を負うかというと、相続放棄をした者が相続放棄時に当該財産を現に占有していた場合です(民法940条1項)。つまり、相続放棄をした人が相続放棄時に当該不動産に住んでいたり、住んでいないとしても管理することで占有しているような場合に限って、保存責任を負うこととなりました。もっとも、この保存責任は次の順位の相続人に対して負うものであり、相続人間においてのみ問題となるものです。そのため、基本的には近隣住民などの対外的な関係では問題となりません。

まとめ

今回の記事では、法定相続人について範囲と相続順位、相続放棄時の注意点の観点から詳しく解説を行 いました。法定相続人は大切な相続財産を受け取る権利を持つ人であり、誰もが該当する可能性があるも のです。本記事をきっかけに、相続に関する知識への関心を深めていただけたら幸いです。
相続時には代襲相続などの複雑な仕組みがあるため、判断に迷ったら、お気軽に弁護士にご相談ください。

 

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