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作成日:2023.08.24 最終更新日:2023.08.24

相続の放棄の2つの方法を解説|遺産分割協議書の書き方も紹介

相続放棄の2つの方法を解説:遺産分割協議書の書き方も紹介

亡くなった家族(被相続人)が遺した相続財産の中に、高額の借金がある場合はどのように対処すれば良いでしょうか。もしも、借金を相続したくない場合等には、プラス・マイナスの財産を問わずに放棄するという選択が可能です。
相続を放棄するには2つの方法があります。今回の記事では、相続の放棄の手続きについて、遺産分割協議を使った方法と、家庭裁判所における方法を紹介します。現在相続に頭を悩ませている方はもちろん、今後相続に備えて知識を身に付けておきたい方も、ぜひご一読ください。

相続の放棄の2つの方法

相続の放棄には、以下に挙げる2つの方法があります。

遺産分割協議で自身の相続分を放棄する

遺言書が無く、複数の相続人がいる場合には「遺産分割協議」を行います。遺産分割協議とは、相続人全員で話し合いを行い、相続財産を誰が、どの程度継承するのか決めることを意味します。
遺産分割協議では、自身の相続分を放棄することが可能です。これを「相続分の放棄」と言います。たとえば、法定相続分は2分の1とされる子が、財産が不要と感じた場合は遺産分割協議の中で「不要」とした上で、遺産分割協議が成立すれば、放棄が完了します。

家庭裁判所で手続きをする

相続の放棄は家庭裁判所での手続きでも可能です。「相続放棄」は遺産分割協議に参加しなくても手続きができ、相続人が各自で行うものです。家庭裁判所が求める書類を整え、提出する必要があります(民法938条)。
家庭裁判所における相続放棄は、相続の開始を知った日から「3か月以内」に行う必要があります。期限を超えてしまうと、相続をしたとみなされるため注意が必要です。(単純承認、民法921条2号、915条1項)

【相続の放棄】家庭裁判所と遺産分割協議での違い

相続の放棄の2つの手続きは、具体的にどのように異なっているのでしょうか。この章では遺産分割協議における相続分の放棄と、家庭裁判所における相続放棄の違いを詳しく解説します。

  遺産分割協議での相続分の放棄 家庭裁判所での相続放棄
期限 なし 相続に開始を知った日から3カ月以内(延長可)
遺産分割協議への参加 必要 不要
手続きの方法 遺産分割協議を行い、成立すれば完了する 家庭裁判所へ申述する
借金の相続 ある 放棄できる

相続の放棄を検討される方の中には、被相続人が遺したローンや借入などの借金を放棄したいと考えている方がいるでしょう。被相続人の借金を放棄するためには、遺産分割協議の中で相続分の放棄をするだけでは完了しません。家庭裁判所での相続放棄の手続きを要します。

どちらの方法で相続の放棄したほうが良いのか?

相続の放棄の手続き方法は2つありますが、どちらの方法で手続きをすると良いのでしょうか。この章では、それぞれの手続きの特徴について詳しく解説しながら、それぞれの手続きが推奨されるケースを紹介します。

遺産分割協議で相続分の放棄を推奨されるケース

遺産分割協議における相続分の放棄は、「自身の相続分のみの放棄」が可能です。借金については放棄できないため、被相続人に借金が無い場合は相続放棄を推奨されます。住宅ローン、消費者金融からの借入はもちろん、知人・友人からの借入や滞納税も借金に含みます。まずは被相続人が遺した財産を調査してから、判断しましょう。
遺産分割協議で相続分を放棄する場合、特定の相続人に相続財産を集中させたい(事業継承など)場合などに多く活用されています。ただし、円満に遺産分割協議の中で手続きを進める必要があり、紛争化しないことが重要です。相続人全員の同意が必要である遺産分割協議が決裂してしまうと、調停や訴訟に発展するおそれがあります。

家庭裁判所における相続放棄が推奨されるケース

家庭裁判所における相続放棄は、借金を放棄できます。被相続人が遺したマイナスの財産も含めて、一切の財産を放棄できるため、借金の返済義務を負いたくない場合は家庭裁判所における相続放棄を選択しましょう。
また、家庭裁判所における相続放棄は、遺産分割協議に参加しなくても手続きが可能です。親族間が不仲である、相続財産の承継に関心がない場合も、親族の了承を得なくても手続きができるというメリットがあります。しかし、家庭裁判所へ相続放棄を申述し、成立してしまうと「遺留分」も受け取れなくなるためご注意ください。

遺産分割協議書の書き方

被相続人に借金がある場合などは、家庭裁判所における相続放棄を選択する必要があります。一方で借金が無く、円満に遺産分割協議ができる場合は、遺産分割協議書を作り、ご自身の相続分を放棄することがおすすめです。では、このようなケースでは遺産分割協議書をどのように作成すれば良いでしょうか。この章では「遺産分割協議における相続分の放棄」について、遺産分割協議書の書き方の視点から解説します。

特定の相続人が相続財産を取得するように記載する

遺産分割協議書は、「誰が・どのような相続財産を取得するのか」を明確に記載する必要があります。つまり、放棄する人を明確にするのではありません。たとえば、妻と子1名が相続人となっており、被相続人が遺した預貯金と住まいをすべて妻に取得させたい場合、妻が取得する財産を明確に記載すればOKです。

相続人全員で署名・捺印をする

上記のケースでは、妻にすべての財産(借金含む)を承継させます。遺産分割協議書は相続人全員の同意を得る必要があるため、遺産分割協議書の作成時には放棄する方も含めて、相続人全員の署名・捺印が必要です。

遺産分割協議書の必要書類を準備する

遺産分割協議書は必要書類を整える必要があります。必要な書類は主に以下の5つです。

被相続人の戸籍謄本など(生まれてから亡くなるまで、除籍謄本含む)
被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
相続人の戸籍謄本
相続人の印鑑証明書(遺産分割協議書には実印を捺します)
財産目録(被相続人が遺した財産の一覧表。預貯金や不動産など記載。)

なお、すでに相続放棄を行った相続人は、遺産分割協議に参加する必要がありません。署名や捺印も不要です。家庭裁判所における相続放棄が完了していると、最初からその人は相続人ではなかったことになります。

遺産分割協議が難航したらどうする?

家庭裁判所への相続放棄とは異なり、遺産分割協議における相続分の放棄は、遺産分割協議に参加し、相続人全員の協議書への署名・捺印が必要です。(すでに相続放棄をした方は不要)

では、相続分の放棄をしようとしても、遺産分割協議が難航した場合には、どうすれば良いのでしょうか。たとえば、以下のようなケースでは、相続分の放棄に異議を唱える相続人が出てくる可能性があります。

・被相続人の遺した不動産管理に必要なコストを相続人全員で負担してほしい
・相続人に財産が集中することに納得がいかない
・あまり面識のない親族と遺産分割協議を行っているため不公平さを感じ、納得できない

もしも遺産分割協議が難航してしまったら、相続人の遺した預貯金口座なども解約できず、不動産の名義変更手続きもできません。相続人全員の共有状態となるため、早期の解決を目指すためには、弁護士に依頼をして、代理人を通して協議を行ったり、遺産分割調停を行ったりする必要があります。

遺産分割協議書を専門家に依頼するには? 

遺産分割協議書の作成の専用の書式や、書類を整える必要があるため、専門家への依頼がおすすめです。依頼できる専門家は以下のとおりです。

1.弁護士
遺産分割協議が難航する(予想される)場合には、弁護士への依頼が必要です。また、相続人に借金があり債権者への対応を要する場合も、弁護士へ依頼することがおすすめです。
2.司法書士
遺産の中に不動産があり、相続登記を要する場合は司法書士への依頼もおすすめです。紛争対応はできませんが、遺産分割協議書の作成など相続事務全般を依頼できます。

3.税理士
相続税の申告が必要な場合は、税理士への相談もおすすめです。遺産分割協議書の作成から、相続税の申告まで依頼することが可能です。

まとめ

この記事では、相続の放棄の2つの方法について詳しく解説しました。相続の放棄は厳密には以下の2つの方法で手続きが可能です。

・遺産分割協議書の中で、相続分の放棄を行う
・家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う

この2つの方法は一見似ているようですが、全く違う方法ですので、間違えないように注意しましょう。特に被相続人に借金がある場合、遺産分割協議が成立してしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。どちらの方法がご自身に適しているかどうか分からない場合は、まずは法律の専門家である弁護士にご相談されることがおすすめです。

 

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