遺言書を作成しないデメリット
1 相続人間での関係悪化や,遺産分割手続が滞ること
遺言書を作成しない場合の,相続人間が協議した上で遺産の分配方法を取り決めますが(「遺産分割協議」と呼びます。),相続人の一人でも非協力的(その他にも行方不明で連絡が取れない状況など)で遺産分割協議が整わないと(特に相続人が多い場合には顕著になります。),預貯金の払戻や不動産の売却手続き等を進めることが出来なくなります。
そうなると,遺産分割協議が整うまでの間の不動産の固定資産税は誰が払うのか,など様々な問題に直面し,ますます相続人間での関係が悪化することになります。
2 法定相続人以外の人に相続財産を残すことが出来ないこと
相続は原則として法定相続人に相続されるものです。
そして,配偶者や子,親や兄弟姉妹が法定相続人になりますが,配偶者以外の法定相続人には相続順位(子→親→兄弟姉妹)によって法定相続分に応じた相続となります(民法900条,901条)。
仮に子供ではなく兄弟に残したいと思っても,遺言書を作成しないと兄弟に財産を残すことが出来ません。
また法定相続人以外の方(内縁関係の方や友人・知人等)にも同様に,遺言書を作成しないとその方に財産を譲ることが出来ません。
3 生前の意思が反映されないこと
相続は財産について行われるものですので,財産以外のことについては相続人間での個々の対応に委ねられます。
例えば,先祖の墓を誰が管理するのか(祭祀承継者),障害を抱えている子の面倒を誰に見てもらうのか,など予め明らかにしておかないと,後日トラブルになる原因になり得ます。