未払退職金を請求したい方へ
1 退職金制度について
退職金とは,賃金とは違って法律上当然に発生するものではなく,就業規則や労働協約,労働契約などで定められている場合に認められる権利です。
したがって,退職金は会社側で支給するか否か裁量に委ねられていますので,定めがあれば法律上,退職金を請求できる権利が労働者に与えられます。
また,就業規則や労働契約などに退職金制度がなかった場合でも,慣行や個別に合意されていたなど,退職金支給金額の算定が可能な程度に明確に定まっていれば,労働契約の内容になると評価することができ,退職金が認めらえるケースもあります。
まずは勤務先に退職金制度があるかどうか確認してみましょう。
2 退職金と支払時期
退職金の支払時期は,会社側が就業規則等において退職金の支払時期を定めた場合には,その支払時期になりますが(労働基準法89条3号の2),特に定めがなければ,労働者側から退職金請求があった場合,7日以内に支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。
支払時期が経過しても支払いがされなければ,遅延損害金が発生します。
3 退職金と時効
未払い賃金は請求出来る時期から2年を経過すると消滅時効により請求することが出来なくなりますが,退職金の場合は5年を経過することで消滅時効により請求出来なくなります(労働基準法115条)。
請求できる権利があっても時間の経過により行使出来なくなりますので,弁護士に速やかに相談することをお勧めします。
4 会社の倒産と退職金
会社が倒産してしまうと,退職金を全額支払ってもらうことは困難な状況になります。
破産法上,会社が負う負債のうち,従業員の退職金については,一般的な借入債務に比べて優先的な取り扱いをしてもらえますが(破産法98条,149条2項等),それでも極端なケースでいえば一銭も返還されない事態も考えられます。
そのような場合をいち早く察したら,直ぐに弁護士に退職金の回収可能性について相談してみてください。
初動が早ければ結果が変わってくることもあり得ます。
また,企業が倒産したために賃金や退職金の支払いが受けられない労働者に対して,その未払分の一部につき,独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度があります(未払賃金立替制度)。
この制度を利用する場合には幾つか要件がありますので,詳しくは弁護士にお問い合わせください。