労働問題の解決方法は、交渉や労働審判、裁判による方法など様々ありますので、個々のご事情を詳しくお伺いした上、最適な方法をご提案致します。
労働問題について
- 「毎日遅くまで残業をしているのに、残業代がもらえない」
- 「いつも上司に怒鳴られていて、会社に行くのも嫌になってきている」
- 「日常的に残業をしていたことによる過労でうつ病を患ったが、労災は認定されないのだろうか」
あなたが働いているとき、このような苦痛、疑問を感じたことはありませんか。
最近のご相談内容として急増しているのが、職場にまつわるトラブル、すなわち労働問題です。働いている人であれば、誰しもがこのトラブルに巻き込まれる可能性があるという点で、日常の中でも特に身近な法律問題であると言えます。
労働問題と一口に言っても、様々なものがあります。給料の未払い、サービス残業(未払い残業)といった賃金に関わる問題や、不当解雇にかかわる問題、配転・転勤や有休・休日労働、最近よく耳にするものでは、職場内のいじめ・パワハラ・セクハラといった嫌がらせにかかわる問題など、労働関係の問題は多岐にわたります。
労働問題は多くの人にとって身近な問題ですが、法律上自分がどんな権利を有しているか、会社は労働者をどのように扱わなければならないのかという知識を持っている人は多くないです。他方、会社から不当な扱いを受けていても、そういうものなのだと納得してしまい、会社の言いなりになってしまう人は意外と多いです。自分の会社はブラック企業だから仕方ない、などということは決してありません。
また、労働問題というと、多くの人は正社員や派遣社員などがその対象であると考えます。しかし、このような人たちだけでなく、アルバイトをしている学生や、パートをしている主婦も労働問題の対象となります。
実際に、学生時代にアルバイトをしていて採用時に聞いていた時給と違う、休憩時間をもらえなかった、店長に客の前で怒鳴られたなどの経験をしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。学生のような未成年は特に労働関係の知識に疎く、違法な待遇を受けていたとしてもそれが普通のものだと思い込み、自身が不当な扱いを受けていることにすら気づけない場合もあります。
「会社のこの対応は正しいのかな」と感覚的に思うことはあっても、それが法的に許されるものか否かを自分自身で判断することは非常に難しいものです。
働いている中で、少しでも会社の対応に疑問を感じたら、すぐに弁護士にご相談ください。
典型的な労働問題
賃金未払い問題
- 毎日のように残業をしているが、上司から残業をつけるなと言われ、タイムカードに残業時間を記録することができない。
- 仕事上でミスをし、会社に損害を与えたとして給料から損害額を控除された。
このような場合には、未払い賃金として会社に対し支払いを請求することができる可能性があります。残業代や給料といった賃金は、あなたが働いたことへの対価として支払われるものです。そのため、実際に残業していた以上は、会社が残業代の支払いを拒むことはできませんし、残業の理由が他の人よりも仕事が遅いからだとしても、その残業時間分の残業代の請求は法律上可能です。
また、賃金は労働者が生活するうえで必要不可欠なものです。そのため、仕事上のミスを理由に、労働者の同意もなしに会社が給料から勝手に損害額を控除するということはできません。控除された分の給料については、未払い賃金支払い請求をすることができます。
※未払い賃金は3年で時効が成立してしまい、その後時効が成立した残業代については請求ができなくなるため、早めの対応が必要となります。「退職してから今までの残業代をまとめて請求すればいいや」と考えている方は、請求できたはずの残業代が請求できなくなるおそれがあるため、ご注意ください。
ハラスメント
- 上司が性的関係を結ぶように迫ってきたためこれを断ったら、仕事上の嫌がらせや人事上の不利益を受けた。
- 社内で性事情についてありもしないことを言いふらされた。
- 上司から、他の社員もいる中で暴言や侮辱的な発言をされた。
- 到底終わらない量の仕事を明日までに終わらせるように要求された。
セクハラとは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定められています(雇用機会均等法11条1項)。
すなわち、職場上で労働者の意に反する「性的な言動」がなされたことに対し、その労働者が何らかの対応(拒絶や抗議といった抵抗行為など)を取ったとします。そして、それに腹を立てた相手方が労働者を解雇したり、仕事上の嫌がらせをしたりすることをセクハラといいます。
もっとも、ただ性的に不快感を覚えたからと言ってなんでも損害賠償請求できるわけではありません。裁判上は、違法性の程度が高い場合に損害賠償請求が認められることとなっています。そのため、意図せずたまたま一瞬胸に手が当たってしまったような場合には、違法性が低いとして損害賠償請求は認められません。
パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職場上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と厚生労働省が定義しています。
上司としては、教育上の指導という意味合いで叱っていたのだとしても、その際に用いた言葉や口調が攻撃的、侮辱的であるなど、教育をするうえで必要な範囲を超えているような場合には、パワハラとなります。そして、パワハラの場合も、損害賠償請求をすることができます。
不当解雇
- 会社経営がうまくいっていないため、社員をリストラすることになった。その際、女性社員を優先的に解雇することとした。
- 能力の低い労働者に対し、会社が改善のための機会を与えたり、指導を行ったりすることなしに解雇することとした。
不当解雇とは、会社が解雇をするための要件を満たしていない、または解雇をするために本来順守すべき労働契約や就業規則上の手続きを履践せずに行われる事業主の都合による一方的解雇を言います。
労働法上、会社が労働者を解雇するには労働契約法が定める厳格な要件を満たす必要があります。そのため、会社はそう簡単には労働者を解雇することはできないのです。
上記の社員のリストラの例では、まず女性社員であるということのみを理由に優先的に解雇することは職務能力とは関係のない性別に着目してなされているものであり、人員選定の基準として不合理であり問題があります。
また、低能力労働者の例では、会社がその労働者に反省・改善の機会を与えない、適格性のありそうな他の部署への異動の検討をしない等は解雇するうえで問題があります。
上記のような問題点を孕んだ解雇の場合には、不当解雇となりえます。そして、不当解雇の場合には、解雇が無効であるとして、依然としてその会社での労働者としての地位があることの確認請求(職場復帰を求める)、解雇されていた期間の賃金支払い請求をすることが可能となります。
解決の流れ
法律相談
まず初めに、依頼者様が置かれている状況について詳しくお話を伺います。その上で、今後会社に対しどのような対応をとるかの方針を決定します。その際に、今後必要となる証拠についてもお伝えします。
交渉
相手方に対し何らかの対応を取るとなったとしても、いきなり労働審判や裁判をすることはあまりありません。その前に、会社との間で直接交渉を行います。
ここでは、まず会社に対し、内容証明郵便で解雇の撤回等の依頼者様の要求を伝えます。これに対する会社側の反応を見て、交渉での解決が期待できるようであれば交渉をし、話がまとまればこの段階で解決となります。
労働審判・労働訴訟
交渉段階で相手方の反応を見て、交渉が期待できない場合や交渉をしたがまとまらなかった場合には、労働審判・労働訴訟に移ります。
労働審判
労働審判とは、雇用関係の実情や労使慣行等に関する詳しい知識と豊富な経験を持つ者の中から任命された労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名で組織する労働審判委員会が行うもので、個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブルを迅速、適正かつ実効的に解決するための手続きです。
労働審判はほとんどの場合、申し立てから3カ月以内に終了するため、労働訴訟よりも短期での解決が期待できます。
労働訴訟
労働審判を行ったがどちらかが納得いかず異議申し立てを行った場合、労働訴訟へと移行します。なお、労働審判に適さないとして、直接労働訴訟を提起する方が適切な場合もあります。
まず、労働審判は基本的に当事者の合意を目指して行われるものであるため、初めから当事者間に合意形成の意思が全く見られないような場合には、労働審判手続きを行わずに労働訴訟を提起する方が適切です。
また、労働審判は限られた期日の中で審理が行われるため、トラブルの内容が複雑であったり、限られた期日内での解決が難しそうな事案の場合にも、直接労働訴訟を提起する方が適切です。
労働訴訟は、終了までに1年以上もの期間を要する傾向にあり、当事者の負担は労働審判に比べ大きくなります。もっとも、これは和解が行われず判決までもつれ込んだ場合です。労働訴訟は、非公開の労働審判とは異なり一般人が裁判を見学することができます。
そのため、会社に非がある場合には企業イメージの棄損を避ける目的で、短期での決着が見込める和解を選択することが一般的な民事訴訟よりも多い傾向にあります。その場合には1年以上もの長期間を要さずに終了することになります。
解決事例(一例)
飲食店従業員が、退職金の支払いと未払い残業代を求めた事例
既に退職していたので、雇用契約書・就業規則やタイムカードなど出退勤の分かる資料が乏しかったが、労働審判制度を通じて120万円の和解金を獲得。
従業員が不当な退職勧奨を求められていた事例
上司から不当な業務を与えられたり、他の従業員を用いて仲間外れにされたりして職場環境が悪化した中、退職勧奨を受けた。
当初の会社側の条件では、自己都合退職で給料2か月相当の退職金の提示であったが、最終的には会社都合退職で給料4か月分相当の退職金が支給された。
安易に回答してはいけません
会社から不当な待遇を受けたと思ったら、まずは弁護士にご相談ください。また、会社の対応に対して「おかしいな。」と感じる点があったら、会社の要求に応じてすぐに回答をしてしまわないことが重要です。
例えば、会社から退職届を出してほしいと言われて、退職する意思がないのに退職届を書いて提出したり、労働条件を変更の申し出があった時に、「分かりました。」などと返答をしたりしてしまうと、後で覆すことが出来なくなります。会社から何か求められた場合には、はっきりと拒否をするか、「考えてみます。」などと曖昧な返答にとどめておきましょう。
また、会社の対応をメモに残しておきましょう。後日争いになった場合には、証拠がとても重要となります。メモや写真、電子メールのデータなど、なるべく記録を多く残すように心掛けてください。