こんにちは。千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。
今回は、保佐制度について説明していきます。
「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」が、家庭裁判所によって保佐開始の審判を受けた場合、被保佐人となります。(民法11条本文、12条)これは、意思能力はあるものの、財産管理に関する判断能力が著しく低い場合を言うとされています。前回の成年被後見人と比べると、ある程度事理弁識能力があることになりますね。そのため、被保佐人は行為の制限が成年被後見人と比べて緩やかになっています。これは、「後見」と「保佐」というニュアンスの違いからも感じ取れるのではないでしょうか。
被保佐人も制限行為能力者である以上、もちろん一部の行為に制限がされています。前述のように被保佐人は、財産管理に関する判断能力が著しく低い場合をいいます。そうだとすれば、このような被保佐人を保護するためにはどのような行為についての制限を加えればいいでしょうか。
そうです。財産的な行為に制限をかければよいということになります。ここで、民法13条1項を見てみてください。保佐人の同意がなければできない行為が掲げられています。いくつかありますが、ざっくりと言えば、重要な財産の処分行為等ということになります。また、それ以外の行為であっても、同意を得なければいけない場合もあります。(13条2項本文)そして、同意を要する行為について同意またはこれに代わる許可なくなされた場合は、取り消すことができます。(13条4項、120条1項)もっとも、追認後は取り消せなくなりますが。(122条)
被保佐人にも単独で有効にできる行為はあります。まずは、上記の同意が必要とされていない行為ですね。同意については、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所が同意に代わる許可を与えることもできます。(13条3項)また、9条但書に規定されている行為、つまり、日用品の購入その他日常生活に関する行為です。(13条1項但書柱書)また、遺言(962条)も可能です。
前回の成年被後見人と比べて、広い印象を持ちますね。被保佐人の自己決定権を尊重する趣旨が表れていると思います。
ここまで、被保佐人について説明してきましたが、ここからは保佐人について説明していきます。まず、保佐人は原則として同意権(追認権や取消権もありますが)を有するだけであって、被保佐人の行為についての代理権がありません。特定の法律行為についての代理権は、家庭裁判所の審判によって付与されます。(876条の4第1項)つまり、保佐人といえど勝手に被保佐人の代理人として法律行為をすることはできないということになります。また、代理権が付与された場合、被保佐人に重大な利害が生じるため、本人以外の者の請求によってこの審判をする場合は、本人の同意が必要とされます。(876条の4第2項)
今回は、保佐制度について説明してきました。次回は、補助制度の説明をしていきます。