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作成日:2020.06.15 最終更新日:2021.11.09

遺留分制度

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。
今回は、「遺留分制度」についての改正点について説明していきます。遺留分制度の改正点は、いくつかあると思いますが、ここでは、清算方法が金銭請求になった点について扱います。

 そもそも、「遺留分制度」とはいったいどういったものなのでしょうか。これは、被相続人の処分の自由と相続人の潜在的持分の清算に対する保護の調和を図るべく、相続財産の一定割合を相続人に留保するという制度です。被相続人には当然自分の財産を自由に処分する権利があります。他方で、被相続人があまりにも恣意的に財産を処分してしまうと、相続人が害されることにもつながります。

例えば、被相続人には1億円の財産があったとします。相続人としては、このうちいくらかは自分のものになるだろうと考えるでしょう。しかし、死の直前に被相続人がこの1億円を誰かにあげてしまった場合、相続人としては大迷惑ですね。1千万円くらいは最低でも自分のものになるかなと考えていたのに突然0になってしまいました。

この1千万円くらいなら...という被相続人の期待も保護しましょうというのが、相続人の潜在的持分の清算に対する期待の保護ということになります。

制度趣旨の説明が長くなってしまいましたが、ここからは具体的な話に入ります。

遺留分制度自体は、民法改正前でも存在していました。相続人は自身の遺留分が害された場合、「遺留分減殺請求」というものを行うことになります。しかし、今回の改正によって「遺留分侵害額請求」に変わることになります。従前は減殺請求権を行使した場合、贈与等の効力を(一部)否定することになるのに対し、改正後は、贈与等の効力自体は否定されずに侵害額に対応する金銭債権が発生するだけになるということになります。したがって、減殺請求権の行使による複雑な法律関係の発生を防止することができるようになりました。

細かい事情の正否は考えずに、簡単な具体例で説明します。AとBという二人の相続人がいたとします。Aは一億円相当の甲土地を相続しており、Bの遺留分侵害額は1234万5678円だとしましょう。遺留分減殺請求が認められた場合、ABは甲土地の共有状態となり、持分割合がA:B=87654322:12345678というとても複雑なものになってしまいます。しかし、改正後では、Bに12345678円の金銭債権が発生するだけで、甲土地はAの単独所有となります。

今回の改正点に関する説明は以上になりますが、具体的な遺留分侵害額の算定方法についても一応触れておきます。少々複雑ですが、ご了承ください。

遺留分侵害額=(遺留分)―(遺留分権利者の特別受益の額)―(遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)(1046条)

*遺留分=(遺留分を算定するための財産の価格)×(1/2又は1/3)×(遺留分権利者の法定相続分)
*遺留分を算定するための財産の価格=(相続時における被相続人の積極財産の額)+(相続人に対する生前贈与(原則10年以内)の額)+(第三者に対する生前贈与(原則1年以内)の額)―(被相続人の債務の額)

 これに具体的な数字を当てはめれば遺留分侵害額を求めることができます。
 みなさんもぜひやってみてください。

 今回は以上になります。次回は、「相続と登記」について扱います。

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