一緒に借金問題を解決しましょう
学生時代に、サークルの活動費や遊びのために少し借金をしてしまった、社会人として働きだしたが、給料が安く奨学金の返済も相まって生活が苦しいので借金をしてしまった、という方はいませんか。少しだけだし、すぐ返せるから、という考えで借りてしまったことで、借金が膨れ上がってしまい返せなくなるという人は少なくありません。
借金の返済が苦しいけれど人に話すのは恥ずかしい、頼れる人がいないといった理由で、誰にも相談できずに一人で悩んでしまう人がいますが、そのように一人で抱え込むのはよくありません。一人で悩み、思い詰めてしまうと、正常な判断ができず、リスクのあるお金の稼ぎ方や、取り返しのつかない決断をしてしまうこともあります。
ですが、そのように一人で悩んだり、リスクのあるお金の稼ぎ方をしたりしなくても、借金問題は解決できます。弊所では、今まで借金で苦しむ多くの方が新たなスタートを切るための手助けをしてきました。借金で苦しんでおり、もう自分一人ではどうしようもなくなってしまったという方がいらっしゃったら、このコラムを読んでください。このコラムが、借金で苦しんでいる方の助けになれば幸いです。
返済が遅れると
まず初めに、返済が遅れることのリスクについてお伝えしたいと思います。
返済が遅れると電話で催促が来たり、財産が差し押さえられたりすることは、みなさんもなんとなく知っているかと思います。ですが、それぞれの行為の意味や、それがされることにより具体的に自分自身にどのような影響が生じるのかまでは知らないという人が多いのではないでしょうか。返済を滞納することのリスクを知らないために、債権者からの連絡を無視し続けてしまってはいませんか。
返済が遅れるにつれて、様々なリスクが生じてきます。そこで、ここでは返済が遅れた場合に起こること、また、それぞれの段階において生じるリスクについてお話ししようと思います。
遅延損害金の発生
まず、返済が遅れると遅延損害金というものが発生します。遅延損害金とは、返済が期限通りになされなかったことで、債権者が被った損害を賠償するためのお金のことです。これは、債権者から支払期限を過ぎていることの通知がなくても、支払期限を過ぎたことをもって自動的に発生するものです。そのため、債権者から何も連絡がないからと言って安心してはいけません。支払期限を過ぎた時点で、債務は刻一刻と増えていきます。
しかし、遅延損害金と言われても、具体的にどの程度増えるのかイメージしづらいと思います。そこで、返済が遅れることでどの程度の遅延損害金が発生するのかを、具体例を挙げて計算してみます。ちなみに、遅延損害金の利率は上限が決まっていますが、その範囲内であればいくらに設定しても問題ありません。そのため、お金を借りた相手との契約内容により利率は変わってきます。今回は、大手の消費者金融から借金をした場合を想定し、利率を20パーセントとして計算します。
(例)遅延損害金の利率が年20%の消費者金融から、20万円を借りていたが、30日間返済が遅れてしまったケース
【計算式】
20万円(借入残高)×20%(遅延損害金年率)÷365×30日(遅延日数)
=3,287円
こう見ると、1カ月でこの程度しか増えないなら、大した額ではないと思う人もいるかもしれません。しかし、これは通常の利息とは別に発生するものですし、既に支払いを遅滞しているような状況の人にとっては、3000円以上も借金が増えてしまうことは結構な痛手になるのではないでしょうか。
電話による催促
返済期限に支払いがされていないと、同期限から数日後には、「支払期限を過ぎているので、直ちに支払いをしてください。」という旨の催促の電話が債権者より来ます。消費者金融ではないとしても、クレジットカード会社から、「引き落としができていないため、送付した払込用紙を用いて早めに振込みをするように」と電話が来たことがある人は多いかと思います。
債権者からの連絡が来るとしても、嫌がらせのように一日に何十件も連絡が来るということはまずありません。それは、貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則69条1項5号イで、一日のうちに4回以上電話をかけないように努めることを定める規定があるからです。しかし、これは努力規定というもので、必ずしも債権者が遵守しなければならないものではなく、できるだけ努力しましょうという程度の意味合いしかありません。そのため、相手によっては、この自主規制を無視して日に何度も電話をかけてくる可能性もあります。また、このような執拗な電話でないとしても、返済の目途も経っていない中で、日に3回も債権者から連絡が来ることは精神的な負担になります。
郵便による督促
電話に出ない、支払うと言ったにもかかわらず全く返済がされない場合、次は自宅宛に督促状といったタイトルの書面が届くことが多いです。督促状とは、支払がまだされていないということを書面により通知するものです。派手な目立つ色の封筒や、赤字で大きく「督促状」ないしは「重要」と書かれた封筒で届くこともあれば、反対に周りの人に借金の事実が露見しないように気を使った、普通の見た目で届くものもあります。
消費者金融会社の中には、借主が家族に借金の事実を知られないように配慮して、郵送物の送り主の名前も変えて送ってくることがあるため、それが督促状であることに気付けなかったということもあります。気付かずに無視し続けてしまっていた、というようなことにならないように、郵便物はこまめに確認するようにしましょう。
「督促状」という威圧的な名前から、この書面が届いた時点で何か法的な効力が生じるのではないか?と不安に思うかもしれませんが、督促状自体にそのような効力はありません。ただ、以下で説明する「支払督促」は、督促状と名前こそ似ていますが、その内容は全く違いますので注意してください。
自宅への電話・訪問
携帯電話への連絡や督促状による催促によっても返済がされない場合、次は自宅へ電話がかかってきたり、訪問がされたりします。一人で暮らしている場合にはこのようなことになってもそれほど問題はないかもしれませんが、家族と一緒に住んでいるような場合には、債権者からの訪問で家族に借金の存在がばれてしまう危険があります。
また、債権者が家に来ると聞くと、テレビで見る借金取りのような怖い人が来て暴力を振るったり、返済を強く迫ったりするようなイメージがあるかと思います。しかし、まっとうな貸金業者から借りている限り、そのようなことはされません。これは、貸金業法21条により、テレビで見るような悪質な方法での借金の取り立てが禁じられているからです。もっとも、いわゆる闇金業者のような人から借りている場合には、このルールを無視した取り立てがされる可能性もあるので、借りる相手は注意して選びましょう。
職場への電話・訪問
そもそも職場に債権者から電話がきたり、訪問がなされたりすることがあるのかというと、基本的にはそのようなことはありません。なぜなら、貸金業法21条により、正当な理由なく債務者の職場に電話などをすることが禁じられているからです。もっとも、正当な理由があれば職場への連絡も許されるということです。正当な理由が認められる例としては、債務者と連絡が一切つかないような場合が挙げられます。
そのため、上記の各方法を使っても債務者と連絡が取れないような場合には、例外的に職場に連絡、訪問がなされることもあります。
そして、借金をしているということが会社内の人に知られれば、周りの人からの信用を失うこともあり得ます。
催告書が届く
返済がされない状態が続くと、次は催告書という書面が届きます。催告書とは、元金、利息、及び遅延損害金をまとめて一度に返済するように求める書面です。支払いを求める書面であるため、上記の督促状に似ているようにも思えます。しかし、催告書は、一般的に債権者が法的手段に出る前の最終通告をする際に利用されるもので、督促状とは違い、これ以上の猶予はないと考えた方がよいです。実際、その文面も○○までに支払わないと法的措置をとります、といった強い文言を用いた内容となっています。
そして、この催告書が届いたにもかかわらず直ちに支払いをしないと、次は予告通り、裁判所を介した法的手段がとられることになります。
ブラックリストに載る
カードの支払いが滞ったり、借金が返せなかったりした場合に「ブラックリストに載る」という表現を耳にしたことがあるかと思います。一般的に言われる、「ブラックリストに載る」という言葉は、信用情報機関にあなたの金融事故情報が登録されることを意味します。信用情報機関とは、個人の返済能力といった信用情報を収集・管理・提供する機関のことで、破産をしたり、債務の返済が滞っていたりすると、そのことが信用情報機関に登録されます。
ブラックリストに載ってしまうと、クレジットカードの更新、新規発行ができなくなったり、ローンを組めなくなったりするほか、新規に賃貸物件を借りられなくなる場合もあります。さらに、身近なところだと携帯電話の分割購入もできなくなってしまいます。このように、ローンを組めなくなると、ローンを組んで購入することが多い車や不動産などの高額な商品の購入は審査が通らず、購入が難しくなります。
もっとも、車などの高額商品が一切購入できなくなるという訳ではなく、ローンを組まずに現金一括で支払える場合には購入することは可能です。また、賃貸物件も保証会社が不要な物件や審査基準が緩い物件などであれば借りることができます。
裁判を起こされる
債権者からの度重なる督促状による連絡や、催告書による最終通告を受けても借金の返済がなされないと、裁判所から「支払督促」又は「訴状」という書類が届くことになります。これは、債権者が裁判所を使った債権の回収、財産の差し押さえ手続きの準備を始めたということです。
これらの書類が届いた場合には、今までの督促状や電話での連絡のように無視をしてはいけません。これを放っておくと、大変なことになります。
支払督促又は訴状が届いたということは、あなたは裁判の被告とされたということです。そうだとしても、裁判に出席しなければ、今までのように借金の支払いから逃げられると考える方が稀にいます。しかし、裁判は被告がいなくても進行することができます。そのため、裁判所からのこれら書類に何も対応せず放置していると、あなた抜きのまま裁判が進んでしまい、その結果、裁判所には債権者の主張が一方的に認められ、債権者の主張する額の債務をあなたが負っているということが確定してしまいます。
財産を差し押さえられる
裁判の結果、あなたに債務があること、及びその支払いをしていないことが確定すると、債権者はあなたの財産に対する差押えが可能となります。差押えとは、強制執行の手段の一つで、債務者の持っているあらゆる財産を債権者が強制的に金銭に換価、処分し、これにより未払いとなっていた借金の回収を行うことを言います。
差押えの対象は、土地、建物、預金口座、車、宝石、ブランド品、給料などお金になるものはほぼ全てです。
これらのうち、給料の差押えは、債務者の生活を保護する必要性からその一部のみが対象となります。とはいえ、月の手取額が44万円以下の場合にはその4分の1を、月の手取り額が44万円を超える場合には33万円を除いたすべてを債権者は差押えることができてしまいます。すると、月の手取りが20万円の人は、その4分の1を毎月差押えられてしまうため、15万円で生活しなくてはならなくなります。今までの生活費の中から、突然5万円が失われてしまうとなると、住んでいる家の家賃が払えない、携帯料金が支払えないなど様々な点で問題が生じてきます。
また、差押えにおいて生じる問題はこのような経済的なものだけではありません。例えば、給料の差押えにあたっては、会社に差押命令という書類が届くことになります。すると、会社の人には、あなたが借金をしており、それが支払えなくなってしまったのだということまで知られてしまう危険があります。
まずは自分でなんとかしたい方へ
借金のことを人に言いたくないなどの理由から、まずはご自身で何とか完済したいと思ってらっしゃる方も少なくないかもしれません。そこで、ご自身でできることはどこまでなのか、以下に10個あげてみましたので、チェックしてみて下さい。
しかし、借金問題は時間が経てば経つほど膨れ上がる性質がありますので、手遅れにならないように期間を決めて取り組んでみていただけたらと思います。
①お金の収支は把握しているか
1か月、ご自身の家計簿を作ってみましょう。ご家族がいて、借金について知られたくない方はご自分のみの家計簿でも大丈夫です。そうすると、意外と数千円でも節約できるところが見えてきます。何にお金を使っているのかが可視化できるので、まずは現状を把握しましょう。
また、強いストレスやプレッシャーで、自暴自棄になって買い物依存に陥ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。借金問題は特に精神的に苦しいものです。まずはご自身がそうであると認めてみましょう。
②各項目で上限金額を設定しているか
食費や交通費、日用品や衣類など、項目別に月にいくら使うのか上限を決めましょう。そこから、週、日割りで計算をして、1日どれくらいの上限額なのか細かく把握しておくのがお勧めです。
女性の方は特に化粧品や衣服などこだわりたくなるかもしれませんが、借金問題が解決するまでは手頃なものを選ぶようにしましょう。
③通信費は格安SIMにしているか
大手携帯会社の契約から乗り換えるだけで、通信費はかなり抑えられます。格安SIMは大手携帯キャリアと回線が同じなので、通信速度もそこまで差異はありません。また、最近は各家庭にインターネット環境が整っていたり、カフェやレストランなどあらゆる場所でWi-Fiを利用できる環境が整備されていたりするため、格安SIMに乗り換えたとしても大きな不便は感じずに利用できる方が多いと思います。
④外食やコンビニの利用はしていないか
外食やコンビニは価格が高い一方、気軽に利用できるので気づいたらお金が出て行ってしまうことが多いです。回数と金額を決めて利用しましょう。
⑤自炊をして、食材はまとめ買いをしているか
週に1回、まとめて1週間分の食材を購入するようにしましょう。都度購入してしまうと、無駄なものも買ってしまう可能性があるため避けましょう。
⑥無駄なサブスクリプションは解約したか
契約したまま忘れてしまっているサブスクリプションはありませんか。今は無料で利用できるものも多くなっていますので、なるべく最小限にするよう、一度見直してみましょう。
⑦電気・水道・ガスの節約をしているか
特に最近は電気代が値上がりしてしまったので、普段から気を付けている方も一層意識することをお勧めします。
⑧ポイントカードは有効活用しているか
ポイントカードだけでなく、クレジットカードも使うだけでポイントが貯められるものがあります。還元率が高いものを選びましょう。
⑨お金のかからない趣味を見つけましょう
今はなるべくお金をかけずにご自身と向き合える趣味を見つけましょう。季節を感じながらの散歩、図書館での読書、ストレッチや料理などもおすすめです。
⑩衣服や日用品はフリマサイトや格安通販で購入しているか
少し手間かもしれませんが、意外とご自身で不要だと思ってもそれを必要としている人がいるかもしれません。使っていないブランド品やアクセサリーなど、不用品はこまめにフリマサイトなどに出品してしまいましょう。
⑪副業をしてみる
現在の仕事の収入だけでは借金の返済がままならない場合、副業が禁止されていない職場あれば、副業をしてみるというのも一つの手です。
週に数回、メインの仕事が終わった後の数時間や、休みの土日にだけ副業で働くなど、無理のない範囲で働きましょう。
解決方法
上記のことを試してもうまくいかなかった方や、これ以上時間的、精神的に余裕がない方もいらっしゃるのではないかと思います。もし、弁護士にご相談いただけましたら、以下のような救済方法をご提案できます。それぞれ特徴、メリット・デメリットがあるため、どの方法が最も適切かは人によって変わってきます。以下に、各方法の説明をしますので確認してみてください。
任意整理
任意整理とは、弁護士が裁判手続きを利用することなく、貸金業者等と直接話し合い、将来において発生する利息のカットや返済期間の見直しをすることで、返済の負担を軽減する手続きのことをいいます。そして、貸金業者との話し合いで合意された返済内容にしたがって、原則3年かけて借金の完済を目指していきます。
メリット・デメリット
<メリット>
・債権者からの支払いの催促が止まる
弁護士に任意整理を依頼すると、弁護士から債権者に受任通知が送られます。債権者は、受任通知を受け取った後は、債務者に対し取り立てをしてはいけないことが法律で定められています(債権管理回収業に関する特別措置法第18条8項)。これにより、債権者による借金返済のプレッシャーから解放されることができます。
・裁判所の手続きがいらない
任意整理は弁護士と債権者との間で交渉により今後の支払いについて合意をするものです。そのため、裁判所を介した手続きが不要であり、他の手続きに比べて時間や労力がかからなくて済みます。
・家族や会社に借金のことがばれにくい
任意整理は、債権者と直接話し合いをして、将来における債務の減少を合意するものであるため、裁判所など公的機関を利用しません。そのため、裁判所から書類が届くというようなこともないため、借金をしていること、及び任意整理手続きをしていることが他の人に知られる可能性が低いです。
<デメリット>
・ブラックリストに載ってしまう
債務整理をすると、ブラックリストに載ってしまいます。そして、ブラックリストに載ると、前述したようにクレジットカードの更新、新規発行ができなくなったり、ローンを組めなくなったりするという不都合が生じます。
・支払いを続けなければならない
任意整理は原則3年かけて借金の返済をしていく制度です。そのため、少なくとも3年間は毎月一定額の返済をし続ける必要があり、借金の返済額という観点からすると、後述の制度ほどの大きな恩恵は受けられません。
任意整理ができない人
任意整理は、債権者との間で今後発生する利息や遅延損害金等を減額してもらう旨の合意をすることで、借金額を減少させるものであり、元金(借りた金額)自体は減らせません。そのため、今後、この元金分の返済をしていくことも困難であるような場合には、任意整理を利用することはできません。
具体的には、原則3年で元金の返済ができるだけの支払い能力がない場合には任意整理が利用できません。
個人再生(民事再生)
個人再生とは、裁判所を利用した債務整理手続きの一つで、これが認められることで借金の大幅な減額が期待できる制度です。そして、個人再生には、小規模個人再生と、給与所得者等再生という二つの方法があります。
小規模個人再生とは、住宅ローンを除く借金総額が5000万円を超えない範囲で、かつ将来にわたり継続的に収入が得られる可能性がある人が利用できる制度です。これを利用するためにはまず、債権者らによる債権者決議を経る必要があります。そして、この決議を経ないと小規模個人再生はできないため、再生計画案はどの債権者にも納得できるものであることが必要となります。債権者決議を無事に経た後、裁判所から再生計画の認可決定を受けることで、借金を大幅に減額してもらうことができます。
他方で、債権者からの決議が得られないようなケースもあります。
このように債権者決議が得られない場合でも、給与所得者等再生という方法を用いることができます。この方法は、住宅ローンを除く借金総額が5000万円を超えない範囲で、かつ、給与などにより安定した収入を得られる人が利用できる制度です。この方法は、そもそも債権者決議を経る必要が無いため、債権者の意思に関係なく借金の減額手続きを進められます。もっとも、こちらの手続きは小規模個人再生手続きよりも収入面での条件が厳しくなるため、自営業者のような毎月の収入の変動幅が大きいような人は利用ができないことがあります。
この前提問題を乗り越えることができたら、裁判所に再生計画の認可をしてもらい、認可された再生計画に従い、借金の返済をしていくことになります。この手続きを利用した場合には、減額された借金を原則3年かけて支払うことで、残りの借金については、支払義務がなくなります。
メリット・デメリット
<メリット>
・借金を大幅に減らすことができる
個人再生手続きを利用すると、条件にもよりますが元本の5分の1~10分の1まで借金を減らすことができます。上述の通り、任意整理の場合には利息や遅延損害金などは免除してもらえますが、元本は支払わなければなりません。対して、個人再生の場合には元本自体の減額ができます。そのため、任意整理以上に借金の返済額の大幅な減少が見込めます。ただし、借金総額ごとに最低限支払わないといけない金額(最低弁済額)が決まっており、例えば、借金が3000万円と多額に上る人は、借金を10分の1まで減少させられます。他方で、借金が100万円未満の人は、その全額が最低弁済額となるため、個人再生の恩恵がありません。このように、個人再生手続きは借金が多い方の方がより恩恵を受けられる制度となっています。
・持ち家を残すことができる
自己破産をする場合には、持ち家を売却する必要があります。しかし、個人再生手続きの場合、住宅ローンの支払いが終わっていない人で、条件を満たした場合には持ち家を残したまま個人再生により借金の減額を行うことができます。
<デメリット>
・官報に掲載される
官報とは、法令や政府情報といった公的な情報を、国民に周知するために使われる機関紙のことです。そして、個人再生をすると、手続きの各過程において計3回、官報上に個人再生をしている人として、名前、住所が記載されます。また、官報は紙媒体だけでなく、インターネット上で誰でも見られるようにもなっているため、あらゆる人に個人再生をしたこと、及び借金があることを知られる可能性があります。とはいえ、日常的に官報を見ているような一般人はそうそういませんから、官報が原因で家族や友人に知られることはまずないと考えていただいて大丈夫です。
・手続の完了までに時間がかかる
個人再生手続きを弁護士に依頼してから、裁判所による再生計画の認可が下りるまでには、おおよそ6カ月から1年の時間がかかります。そのため、全ての手続きが終わり、返済を開始できるようになるまでに他の手続きと比べ時間を要します。そして、その間は弁護士と複数回打ち合わせをしたり、必要書類の収集をしたりする必要があるため、依頼をしたからといって、あとは全部弁護士に任せていれば大丈夫という訳ではありません。
・ブラックリストに載る
個人再生手続きの場合にも、任意整理の場合と同様にブラックリストに載ってしまいます。
個人再生ができない人
・借金総額が大きすぎる人は利用できない
個人再生手続きには、手続きを利用できる借金の上限額が決まっており、借金総額が5000万円超える人はこの手続きを利用することができません。しかし、5000万円以内の人であれば最大で10分の1にまで借金を減額できる制度であるため、自身の借金総額と相談して本手続きを利用するかを決めるとよいかと思います。
・安定した収入を得る見込みのない人
個人再生では、再生計画通りに今後の支払いをすることを条件に、債務の減額を認めてもらいます。そうすると、将来において、再生計画通りの支払いができるだけの安定した収入があると認められない人は、個人再生手続きを利用できません。
自己破産
自己破産とは、裁判所を利用する債務整理手続きの一つで、裁判所から免責の許可決定を受けることで、全ての債務を免除してもらう手続きです。この手続きには、借金がすべてなくなるという点で他の手続きとは異なる大きな特徴があります。
メリット・デメリット
<メリット>
・借金を支払わなくてよくなる
自己破産の最大のメリットは、一部の例外的な債務を除き、借金を全て支払わなくてよくなるという点です。これは、借金を減額したうえで、その後、原則3年間で借金を返済していくという上記二つの手続きとは大きく異なる点です。そのため、自己破産が認められれば、その後は借金に追われることなく、稼いだお金を全て自分のものとすることができます。
・債権者からの取り立て・強制執行を阻止できる
弁護士に自己破産の依頼をした場合、弁護士から各債権者に受任通知が送られることになります。すると、債権者は受任通知を受け取った後は、債務者に対して借金の取り立てをすることができなくなります。
また、前述したように、借金を払えないでいると裁判を起こされ、それに負けると債権者から差押えという強制執行がなされることになり、問答無用で財産を換価されてしまいます。しかし、自己破産を申立てて、破産手続きの開始決定が出されると、債権者は強制執行ができなくなります。これにより、破産手続き開始前に給与を差し押さえられてしまっていたとしても、差押えを受けずに給与を取得できるようになります。
<デメリット>
・高額な財産は手元に残せない
自己破産は、本来払うべきはずの債務を払わなくてよくなるという点で、債務者にとっては非常にありがたい制度です。他方で、債権者からしたら、貰えるはずのお金が貰えなくなるのですから大変迷惑な制度です。そこで、債務者の持っている財産から少しでも債権を回収するべく、自動車や不動産、その他価値のありそうなものは全て換価され、債権者への弁済に充てられます。
しかし、生活するうえで最低限必要となる家具や家電製品(冷蔵庫や洗濯機、ベッドなど)、一部の貯金などは処分されずに持ち続けることができます。また、基本的には処分の対象となる自動車なども、必要性が特に認められる場合には、自己破産をしても今まで通り持ち続けることができます。
さらに、自己破産が完了した後に再びこれら財産を持つことは禁止されておらず、あとからそれらを債権者に没収されるということもありません。
・職業によっては一時的に仕事ができなくなる
職業によっては、自己破産の申立てから免責決定が出されるまでの期間中、その資格が制限されてしまい、仕事ができないという場合があります。身近な職業でいうと、警備員、宅地建物取引士、弁護士、行政書士などですが、そのほかにもたくさんの職業が制限を受けます。しかし、免責許可決定を受けた後には、復権と言って、再び今まで通り働くことができるようになります。
・お金を一部しか手元に残せない
自己破産をすると、現金を99万円までしか手元に残すことができなかったり、預貯金を20万円までしか残せなかったりするなどの制約があります。ですが、会社経営をしていて多額の貯金がある社長が破産するような場合はとりわけ、消費者金融で数十万円の借金をしたというような人であれば、そもそもそれほど大きな蓄えが無いケースの方が多いです。そのため、多くの人にとってはこの制約はそれほど気にならないものかと思います。むしろ、最低限生活できるだけのお金は手元に残すことができるため、自己破産により無一文となる心配がないという点ではメリットであるともいえます。
・官報に掲載される
・ブラックリストに載る
自己破産ができない人
・免責不許可事由に該当する
免責不許可事由とは、これに該当する場合には自己破産による借金の帳消しを認めないというものです。
免責不許可事由の例の一つとしては、ギャンブルやホストクラブ、株でお金を浪費してしまったような場合が挙げられます。もっとも、この場合でも今後の生活を改善するなどにより、裁量免責として、自己破産が認められる場合も多いので、簡単に諦めないでください。
この他にも免責不許可事由はいくつかありますので、気になる方は弁護士にご相談ください。
・非免責債権である
自己破産によりあらゆる債務を免除してもらうことができますが、中には免除してもらえない債務もあります。
例えば、税金や国民健康保険料、離婚した配偶者との間にいる子の養育費などです。こういった債務は自己破産によっても免除されず、その後も支払いをする必要があります。
最後に
借金は、誰でもする可能性がありますし、誰でも返済が難しくなる可能性があるものです。自分だけがおかしいと思ったり、恥ずかしいと感じたりする必要はありません。
自己破産などの債務整理手続きに対して、マイナスのイメージを持っている方は多くいます。しかし、それは債務整理手続きの内容や、それをすることによるその後の影響などを知らないことが原因であるように思います。債務整理手続きをすることは恥ずかしいことではありませんし、それをすることにより何か取り返しがつかなくなるような怖いものでもありません。むしろ、借金で苦しんでいる方が、自身の人生を新たにスタートするのを手助けするための制度です。
今からでも遅いということは全くありません。これからの人生、過去に目を向けるのではなく、先の未来に目を向けて、一緒に再スタートしませんか。弊所では、債務整理の法律相談は無料で行っております。
借金で悩んでいる方はぜひ一度無料相談にお越しください。