こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。
今回から、数回にわたって制限行為能力者について説明していきます。その中でも、今回は総論として「制限行為能力者とは?」ということについて説明していきます。
「制限行為能力者」とは、その名の通り、行為能力が制限されている人のことを言います。では、そもそも行為能力とはどういったものなのでしょうか。
行為能力とは、一般に単独で完全な法律行為をなしうる能力といわれます。逆に言えば、完全な法律行為をするためには、行為能力が必要ということになります。例えば、コンビニで何かを買ったとしましょう。これも立派な法律行為です。(売買契約、民法555条)つまり、コンビニで何かを買うためにも行為能力は必要ということになります。そして、制限行為能力者がした法律行為は、取り消すことができます。
この行為能力は、自分のした行為の意味が理解できているかということでもあり、行為者保護のために必要とされています。自分の行う行為がどのような意味を持つのかきちんと認識できていない場合、悪い人によって不利益を被るかもしれません。例えるならば、行為能力がないというのは、ルールもわからずゲームに参加するようなものです。ゲームの参加者の中には、ルールをわからないのをいいことに不公平なことをしてくる人もいるでしょう。これを避けるために、最低限ルールは知っておきましょうというのが行為能力ということになります。
他方で、行為者保護を貫徹するのであれば、一切の行為を禁止するのが一番とも思えます。しかしこれでは、あまりにも行為者の自己決定権が害されるでしょう。
そこで、行為者本人の自己決定権の尊重と行為者保護の調和を目指したのが行為能力者制度ということになります。
また、似た概念として、「意思能力」というものがあります。意思能力とは、有効に意思表示をする能力のことであり、これを欠く状態でなされた法律行為は無効とされます。(民法3条の2)
行為能力に話を戻しましょう。前述のように、行為能力は完全な法律行為をするための前提であるものの、世の中の人全員が有しているわけではありません。この、行為能力が完全ではない人、つまり制限されている人が、今後説明していく制限行為能力者ということになります。民法で定められているものとして、未成年者(4条)、成年被後見人(7条)、被保佐人(11条)、被補助人(15条)といったものがあります。
次回以降に一つずつ説明していこうと思います。以上、制限行為能力者制度についての説明でした。