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作成日:2020.12.02 最終更新日:2022.04.12

担保物権制度② 先取特権1

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。今回から個別の担保物権の説明に入っていきたいと思います。今回は「先取特権」について扱います。今回で先取特権の種類を説明して、次回でその効力について説明していこうと考えています。

 

 先取特権とは、債務者の一定の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のことをいいます。(303条)先取特権は、法定担保物権であるため、債権者は当事者間の合意がなくても法律上当然に取得することができます。
その種類としては、「一般先取特権」(306条~)、「動産先取特権」(311条~)、「不動産先取特権」(325条~)があります。では、一つずつ説明していきます。

 

まず、「一般先取特権」から説明します。一般先取特権とは、債務者の総財産を担保の目的物とする先取特権をいいます。民法上は以下の4つのものが規定されています。(306条)

①共益の費用(307条)
②雇用関係(308条)
③葬式の費用(309条)
④日用品の供給(310条)

これらの一般先取特権にはそれぞれ規定された理由があります。

①は、ある債権者がした費用の支出が他の債権者の利益にもなったのだから、優先的に回収させてあげるのが公平だろうという理由です。
②は、給料債権等は被用者の生活の基礎となるものであるため、優先弁済権を認めて被用者の生活を保護することが目的とされます。
③は、国民道徳や衛生的見地から、十分な財産がない者であっても相応の葬式を行うことができるようにという理由になります。
④は、債権者側に優先弁済権を認めることで、債務者が日用品の供給を受けやすくするという目的があります。

次に「動産先取特権」について説明します。動産先取特権とは、債務者の特定の動産上に存在する先取特権です。民法上は以下の8つが規定されています。(311条)

①不動産の賃貸借(312条~316条)
②旅館の宿泊(317条)
③旅客又は荷物の運輸(318条)
④動産の保存(320条)
⑤動産の売買(321条)
⑥種苗又は肥料の供給(322条)
⑦農業の労務(323条)
⑧工業の労務(324条)

一つずつ細かく説明するスペースがないので、とりあえず被担保債権と先取特権の目的物に関してまとめた表を以下に載せます。民法の規定をまとめただけで、細かい解釈論には立ち入っていないので、さらに詳しく知りたい方は、各自基本書等で調べてみてください。

種類

被担保債権

目的物

不動産の賃貸借

当該不動産の賃料その他賃貸借関係から生じた賃借人の一切の債務

※1 ※2

当該土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地上の果実(土地の場合)

賃借人がその建物に備え付けた動産(建物の場合)

※3

旅館の宿泊

宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料

その旅館にあるその宿泊客の手荷物

旅客又は荷物の運輸

旅客又は荷物の運送費及び付随の費用

運送人の占有する荷物

動産の保存

動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用

 

当該動産

動産の売買

動産の代価及びその利息

当該動産

種苗又は肥料の供給

種苗又は肥料の代価及びその利息

当該種苗又は肥料を用いた後1年以内にこれを用いた土地から生じた果実

農業の労務

当該労務に従事する者の最後の1年間の賃金

当該労務によって生じた果実

工業の労務

当該労務に従事する者の最後の3か月間の賃金

当該労務によって生じた製作物

※1 賃借人の財産のすべてを清算する場合には、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ
※2 敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない部分のみ
※3 賃借権の譲渡又は転貸の場合には、譲受人又は転借人の動産や譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても及ぶ

最後は「不動産先取特権」について説明します。不動産先取特権は、債務者の特定の不動産の上に存在する先取特権です。民法では以下の3種類が規定されています。(325条)

①不動産の保存(326条)
②不動産の工事(327条)
③不動産の売買(328条)

もっとも、不動産先取特権は現実にはそれほど機能していません。それは、効力を保存するためには登記が必要で面倒だからということらしいです。先取特権は効力が強いので行使用件を厳格にしたのでしょうが、その結果あまり使われていないようです。

 

今回は以上になります。次回の引き続き先取特権について説明していきます。次回は先取特権の効力を中心に扱っていこうと思います。

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