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作成日:2020.12.11 最終更新日:2022.05.10

担保物権制度⑤ 質権1

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。今回は「質権」について説明します。名前くらいは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。では、質権とはどういったものなのか説明していこうと思います。

 

 質権とは、「債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」のことをいいます。(342条)質権は、これまでの先取特権や留置権とは異なり、当事者間の合意によって生じる約定担保物権です。そのため、当事者間での設定行為が必要となります。
 よくある「質屋」は質屋営業法という特別法の規律にしたがって営業しているようですが、とりあえずは質屋を想像していただければ質権はわかりやすいのではないかと思います。

 質権は一般的には、①動産質権、②不動産質権、③権利質に分類されますので、分類に従って説明していこうと思います。

 
まずは動産質権です。動産質権とは、動産を対象とする質権です。動産はそこまで価値が高くない物もあるので、一般的には少額債権を担保する際に利用されます。しかし、あとでも説明しますが、質権は目的物の占有を質権者に移転するため、質権設定者が目的物を使用することが事実上できなくなるという不都合があります。
 
 例えば、工場経営をしているAが工場の活動資金としてお金を借りようとしていた場合を考えてみてください。このとき、貸す側としては当然担保が欲しいと考えるでしょう。その際に、他に特にめぼしい財産がなかったため、工場の機械という動産に質権を設定したらどうなるでしょうか。工場経営のために資金調達をしたのにも関わらず、工場の生産活動に不可欠な機械の使用ができなくなってしまっては意味がないですよね。

 次に不動産質権です。不動産質権とは、不動産を対象とする質権です。これは、動産質権とは違って、質権者が目的物を使用・収益することができます。(356条)しかしこの規定はあまり意味をなさないことも多いです。

 例えば、目的不動産が農地であった場合を考えてみましょう。質権者は典型的なケースとして銀行とします。この場合、銀行としては、農地が使用収益できるといっても何もうれしいことはないですよね。銀行は別に農地を耕作して農作物を生産するという活動に必ずしもメリットはありません。こういった事情もあり、不動産質権は今日ではあまり使われていないようです。

 最後に権利質です。権利質とは、動産・不動産以外の財産権を対象とする質権です。動産や不動産の場合と違って対象とするものが権利なので、目的物の占有の移転ということが観念できません。ここがほかの二つと大きく異なっており、効力の点でも差があります。具体的には、次回説明します。

 権利質の対象は通常の債権だけでなく株式なども含まれます。権利質は両当事者にとって便利な担保権ということもあり、質権の中では割と使われているようです。銀行が預金担保貸付をする際に預金債権に質権を設定しておくといったような場合が多いようです。

 

 今回は以上になります。今回は質権の総論的な説明をしたので、次回は発生要件や効力面を中心に説明していこうと思います。

 

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