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作成日:2020.12.07 最終更新日:2022.05.10

担保物権制度④ 留置権

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。今回は「留置権」について説明していこうと思います。

 

 留置権とは、「他人の物の占有者が、その者に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる権利」です。(295条1項)例えば、AがBに対して5万円でパソコンの修理を頼んだ場合、Bとしてはその報酬が支払われるまでAにパソコンの返還を拒むことができるということになります。

 

 留置権はその名前のとおり、「目的物を留置」する権利であって、他の担保物権のように優先弁済権がありません。そのため、目的物を換価してそこから優先的に債権回収を図るということはできません。もっとも、事実上の優先弁済権があると言われています。この点に関しては少し細かい話になってしまうので、ここでは省略します。

 留置するだけでどうして担保として機能しうるのかということについて疑問の方もいるかと思いますので、少し説明します。

 上記の例でパソコンを早く返してほしいと思ったらAはどうするでしょうか?おそらく報酬の5万円を早く準備して支払おうとするのではないでしょうか。そしてAが報酬を支払ってくれれば、Bとしては目的が達成できたことになります。

 これが留置的効力が担保として機能する理由となります。少し難しい言葉で言うと、「目的物を自己の下に留置することによって、債務者に間接的に弁済を促す」ということです。
「返してほしければ早くお金を支払え」ということですね。

 留置権は占有が発生要件であると同時に継続要件でもあります。そのため、債権者が目的物の占有を失った場合は、一部の例外的な場合(200条など)を除いて、留置権は消滅します。(302条)
 その他にも、被担保債権が消滅した場合や代担保の提供等によっても消滅します。(301条)

 

 最後に一つだけ。留置権とよく似たものとして、「同時履行の抗弁権」(533条)というものがあります。もっとも、判例・通説によれば、これらはどちらを行使してもよいということになっているため、そこまで厳格に適用範囲を区別する必要はないでしょう。興味のある方は、留置権と同時履行の抗弁権を調べてみて、比較してみてください。

 

 今回は以上になります。次回は「質権」について説明します。

 

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