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作成日:2021.08.27 最終更新日:2022.06.24

担保物権制度⑦ 抵当権1

 こんにちは。東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の原澤です。今回からは「抵当権」について説明していきます。これも数回に分けて説明していきますので、お付き合いよろしくお願いします。

 

 「抵当権」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。ここからは、抵当権の性質や効力を概観していこうと思います。

 抵当権とは、「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」を言います。(369条1項)
 これは、抵当権者と抵当権設定者間での合意によって設定される約定担保物権です。これまでの担保権のところでも出てきた、優先弁済的効力や不可分性、物上代位性、付従性、随伴性といった担保物権一般の性質は基本的に有しています。(ただし、確定前の根抵当権は例外)

 
ここで、抵当権は交換価値を把握する非占有担保と言われることがありますので、このことについて少し説明しておきます。
 
 担保として一番わかりやすいのは担保権者が目的物の占有を把握するものですよね。例えば、質権や留置権がこれに当たりますが、これらは、例えば、「貸したお金を返してくれないと今自分の手元にある物を渡さない」とすることでお金を返してもらえるように促すという効果があります。
 このスタイルはとても良いように思えますが、欠点もあります。例えば、カメラに質権を設定した場合、設定者はそのカメラを使用することができません。

 しかし、抵当権は非占有担保です。つまり、設定者のもとに占有は残り、抵当権を設定した後も目的物を使い続けることができるということです。例えば、住宅ローンに際し、自宅に抵当権を設定しても、その自宅に住み続けることができるということです。

 また、抵当権には順位と呼ばれる概念があります。これは1番が2番に優先し、2番は3番に優先するという、イメージ通りのものなのですが、優先するとは具体的にどういったことなのでしょうか。このことについて少し見ていきましょう。

 4000万円の価値がある甲建物にAが順位1番の抵当権(3000万円)を、Bは順位2番の抵当権(2000万円)を設定した場合を考えてみます。この場合、甲建物について抵当権が実行されるとA、Bはそれぞれいくらの債権を回収することができるでしょうか。

 仮に抵当権が設定されていなかった場合、つまり、Aが3000万円、Bが2000万円の債権を有していた場合には、いわゆる債権者平等の原則が働き、債権額に応じた案分になります。具体的には、Aが2400万円、Bが1600万円ということですね。
 
 しかし、上記の事例では甲土地についてAが1番抵当を、Bが2番抵当を有しています。そして、上述のように1番は2番に優先します。これは、まずは1番の債権額全額に充当され、残りがあったら2番の債権額に充当されるということを意味します。したがって、Aが3000万円、Bが1000万円の債権を回収できるということです。

 最後に、抵当権の「目的物」について説明します。これは、簡単に言えば、どのような「物」から優先弁済を受けることができるのかという問題です。

 ここでは、建物という「不動産」に抵当権を設定した場合を想定しましょう。建物の中には、当然いろいろな物がありますよね。①屋根の瓦や壁紙、②冷蔵庫や洗濯機等の家電やベッドやソファなどの家具、③和室の畳など、いろいろな「付属品」が建物内には存在します。これらのうち、建物の抵当権の効力が及ぶ物はどれで、及ばない物はどれなのかというのがここで問題にしていることになります。

 まず、感覚的に考えて、①のような建物の一部になってしまっているような物には抵当権の効力が及び、他方で、②のように完全に独立した物に効力が及ばないということに関しては納得がいくのではないでしょうか。そこで、特に問題となるのは、③のように建物と独立した動産ではあるが、建物の付属物と言える物についてです。

 この問題は、一言でいえば、抵当不動産に「付加して一体となっている物」(370条)の解釈です。基本的には、不動産と経済的に一体をなしていると評価できる物は、付加一体物に含まれます。もっとも、古いものではありますが、抵当不動産に備え付けられた畳建具類のうち、畳には抵当権が及ばないことを述べたと理解されている判例があります。
 したがって、この立場をとるのであれば、③のうち少なくとも畳には、抵当権の効力が及ばないことになると思います。他方で、畳は建物の「従物」であり、経済的一体をなしているとして、付加一体物に含める解釈も可能なように思います。

 

 今回は以上になります。次回は、抵当権についてもう少し詳しく見ていこうと思います。よろしくお願いいたします。

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