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コラム

COLUMN
作成日:2018.06.20 最終更新日:2021.09.29

知的財産法について

東京都千代田区神田にあるアトラス総合法律事務所の管野晶人です。

このコラムでは、特許権や著作権法を中心とした知的財産(権)法について概説していきたいと思います。

例えば、著作権は知的財産権といわれるもののひとつですが、そもそも知的財産とは一体何でしょうか。「財産」というとまず思い付くのはお金、家、車、そういった自身が所有している物ではないでしょうか。これらは目に見える(物理的に存在する)もので、自分の手元にあれば基本的に、他人が勝手に使ったり持って行ったりしないようにすることができます。

他方、著作権などはどうでしょうか。

音楽を例にみると、曲というものは、作曲者が、様々な音を様々なかたちで組み合わせて創るものです。
曲そのものは目で見たり触ったりできるものはありません。しかし、その作曲者が努力して創り上げた、記憶に残るもの(「情報」)として確かに存在します。
この「情報」は一度世間に広まると、どのように広まるかをコントロールすることは難しく、勝手に使われたり、他人が自分の作ったものだと嘘をつくことでその人のものにされてしまうことさえあり得ます。

そこで、こういった「情報」を知的財産という特別の財産として保護し、その情報を創る努力をした人を法律で保護する必要があります。

知的財産権には著作権のほかに、「産業財産権」あるいは「工業所有権」と総称される権利があります。
これは、産業・工業という言葉から想像できるように、著作権よりも実用という点を重視した権利の集まりです。これには、特許権、実用新案権、意匠権、商標権が含まれます。

特許権とは、発明を用いて物を作ったり、それを売ったりすることを独占することができる権利です。
発明の例としては、青色発光ダイオードなどが有名です。

実用新案権は特許権に似ていますが、特許発明ほど高度でない技術に関するものという違いがあります。
日本の発明の黎明期に、高度でないものでも何とか保護しようという観点から設けられた権利です。

意匠権は、物の形、模様、彩りといった見た目の美しさ(工業デザイン)を創り上げることについて保護するものです。
スマートフォンのデザインが似ているとして意匠権侵害をも争ったアップル対サムスン事件は大きなニュースにもなりました。

商標権とは、商品・サービスに付けられたマークを保護するものです。
私たち消費者は商品やサービスの名称、形、色などのマークを見て、それらの安全性や品質がどういったものかを判断することが多いと思います。提供する側からしても、勝手にマークを使われた粗悪な商品などが世の中に出回ってしまうと、本来の商品・サービスの評判が落ちてしまい困ってしまいます。そのため、マークを勝手に使われないように保護する必要があるのです。
ちなみに、商号というのは商品・サービスを提供する人や企業の名称であって、商標とは別のものです。

これらの権利が侵害された場合、その相手に対して侵害行為をやめること、損害が生じた場合には損害賠償としてお金を支払ってもらうことなどができます。

以上のように、ひとくちに知的財産権といっても多くの種類があります。ただ、これらは共通する部分が多く、特に「今までにないもの」であることは保護を受けるために重要な基準になります。

また、不正競争防止法といった法律も実質的には知的財産権を保護する効果を発揮します。そのため、こういった法律も広い意味では知的財産法に含まれることになります。

ここからは、各知的財産権を少し掘り下げていきます。

著作権

著作権は原則として、「著作物」という一定の作品を創り上げれば持つことができます。
例として、詩や曲を創れば作詞・作曲をした人が、絵を描けば描いた人が著作権を持つことになります。
他にも、ダンスの振付けという形に残らないものであっても振付けを考えた人が著作権を持つことになります。また、過去には電話番号情報の並べ方を工夫したタウンページについて著作権が認められた例があります。

作品が「著作物」になるのかどうかにとって大切なことは、それまでに同じようなものがあるようなありふれたものでないこと、作品を作る人の個性が発揮されていることと考えられています。
知的財産権は何かを創り上げた人の努力に対する見返りとして認められる権利です。そのため、その人だからこそ創り出せる、いままでにないようなものを表現することで権利が認められるようになります。

「著作物」について著作権を持つことができた場合、その著作物を勝手に利用するな、ということを他人に要求することができます。

具体的には、コピーをしたり、売ったり、貸したり、といった行為をやめろということができます。
よく本の終わりのページあたりに「無断で複製、譲渡、貸与することを禁じます」などと書いてありますが、これは「私の著作物を勝手に利用しないでください」ということを意味することになります。

他にも、音楽の演奏、映画の上映、本の朗読会なども勝手にしないでと要求することができます。

なぜ著作権によってこういうことを要求できるかというと、こういった勝手な利用がされてしまうと、作品を創った人がその努力の報酬として本来得られるもの(例えば金銭)が得られなくなってしまうということが挙げられます。特に職業として作品を創っている人にとっては、勝手な利用を禁止できるようにしなければ生活ができなくなってしまいます。

もうひとつ、上で説明した通り、著作物はその人だから創れるもの、その人の個性が表れているものです。つまり、作品には創った人の「人となり」が表れているという視点が大切です。
そのため、丸々コピーするのではなく、アレンジを加えることであっても、その人の個性の否定になりかねないため、勝手にすることはできません。(同一性保持権)

また、その作品を誰が創ったのかという表示をするかしないか、ということも創った人が決めることになります。(氏名表示権)

そして、その作品がまだ世の中に出回っていない場合には、勝手に公開することも許されません。(公表権)

特許権

特許権は「発明」を創って得られるものです。「著作物」を創って得られる著作権とは違いがあります。

「著作物」は、小説を読んで、音楽を聴いて、絵画を観て、創作者の伝えたいことから何か心を動かされたり、新しい考えを与えられたりするようなものです。

他方、「発明」は、携帯電話、薬、LEDといった身近なものから、専門家の使う機械やプログラムまで、広く生活に必要なものや生活を実際に豊かにするものです。創作者が何を人々に伝えたいかは関係がなく、著作物とは違うものと考えられます。

そして、私たちの社会生活をより便利にするためには、発明をみんなに知ってもらい、より多くの人が作ったり使ったりする方が良いはずです。

しかし、どんなに努力して発明を創っても、何の報酬もなく発明を使われてしまっては、発明のために費やした分の金銭ですら回収できません。そうなると、発明者の多くは発明を創る気をなくしてしまいます。

そこで、発明を世の中に広める代わりに、発明を使う人からは報酬を払ってもらいましょう、というかたちで発明者を保護することにしています。そのために発明者が持つことができる権利が特許権なのです。

ただし、特許権は発明をするだけでは持つことができません。特許庁のOKをもらってはじめて特許権を持つことができます。
具体的には、どのような発明をしたかを文字や図で説明した書類を特許庁に出し、審査してもらい、「これは保護するべき発明だ」と判断されれば、特許登録をすることになります。

特許権を持つと、これを侵害する人に対して、侵害をやめること、損害賠償としてお金を支払ってもらうことができます。

特許権侵害とは、基本的に、保護されている発明を勝手に利用して、その発明によって物を作ったり、作られた物を使ったり、売ったりすることをいいます。

問題なのは、発明を利用したかどうかをどうやって判断するか、という点です。

上で説明した通り、特許権を得るためには特許庁に書類を提出する必要があります。その書類には、どのような発明をしたかが言葉で説明されます。
発明を利用したかどうかは、このその提出書類に書かれている言葉通りのものを利用したかどうか、というところから判断することになります。

例えば、「金属をS字に似た形に加工して作られる強いバネ」といった説明がなされる発明があり、これに特許権が認められているとします。
他の人がこれとまったく同じものを作った場合には、原則として特許権侵害になります。
他方、金属を加工して作られる強いバネを作ったとしても、その形がT字に似たものであった場合、「S字に似た形」という言葉と一致しないため、原則として特許権侵害にはなりません。

このように、言葉を基準にして認められる特許権侵害のことを、文言侵害(もんごんしんがい)と呼びます。

ちなみに、文言侵害以外に均等侵害というものがありますが、かなり深い話になってしまうので、その説明は後の機会に。

商標権

商標権は、商品やサービスが他の粗悪なものと間違われて評判が落ちるような事態を避けるために認められるものです。
具体的には、文字、図形といったいわばシンボルとなるようなものを、他の人が使えないようにすることができます。

最近では、こういった見た目で判断できるものだけでなく、音にも商標権が認められるようになりました。
例えば、CMで印象深い「正露丸」の『ラッパのメロディ』(大幸薬品株式会社)などです。

商標権が認められるものに似たシンボルを勝手に商品に付けたりすると、商標権侵害となる場合があります。似ているかどうかは難しい判断ですが、(1)見た目がどれくらい似ているか、(2)声に出して呼ぶと聞き間違えやすいか、(3)そのシンボルから受けるイメージが似ているか、といった点が基準になります。

意匠権

意匠権は、見た目から美しさを感じ取れるデザインで、かつ、大量に作ることができるものについて認められます。著作権と特許権の間、といった感覚です。
例えば、おしゃれ用カラーコンタクトレンズの模様や色というのは、その見た目が美しく、商品として売るために大量生産できるものとなっています。そのため、意匠権の保護が受けられます。

これについても、似たようなデザインを勝手に使うことは許されません。似ているかどうかは、買う人が、そのデザインのうち特に興味を惹かれる部分を中心に判断することになります。

ここまで、知的財産法についてかいつまんで説明しました。なんとなくのイメージはお持ちいただけたでしょうか。

経済活動を行う上では、自分の著作権をどうやって保護していくかも大切ですが、自分の活動が、他人の知的財産権を侵害していないかも非常に大切です。侵害しているか否かの判断には専門的な知識が必要となるものが多いため、不安に思うことがあれば弁護士に相談することをお勧めします。

 

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