はじめに
司法試験予備試験は合格率約4%の超難関資格であることは間違いない。もっとも、自分にあった正しい勉強方法で努力を続ければ必ず合格することができる試験である。本稿では、私の実体験をもとに予備・司法試験短期合格のための方法論を示す。ただし必ずしもこれが唯一の正解ではない。自分に合った勉強方法を確立するための一助となれば幸いである。
勉強方法
自己紹介
実際の方法論を紹介する前に簡単に私の経歴を紹介しておく。以下に示す勉強法をとるかどうか判断する際の参考にしてほしい。
私は、大学1年生の4月から予備校に入り司法試験の勉強を始めた。そして、翌年の予備試験に最終合格し、その翌年の司法試験に合格した。大学2年次に予備試験に合格し、3年次に司法試験に合格した、いわゆる短期合格者である。
簡単ではあるが自己紹介をさせていただいた。以下、具体的な勉強方法に入る。
総論
私の体験をもとにした、短期合格のために大切なことは以下の5つである。
① 入門講義はさっさと聞き終える
② 完璧を求めない
③ インプットよりアウトプット中心
④ 演習時には目的を明確化
⑤ 手を広げすぎない
順番にコメントを付け加える。
(1)入門講義はさっさと聞き終える
勉強を始めて最初に行うのが基本7法を中心とした基礎知識のインプットである。膨大な法律知識から予備校が必要な情報を絞ってくれるとはいえ、教科によっては1科目でテキスト約1000頁、講義時間100時間超えなんてこともある。ここで挫折する人が半数ほどいるのではないかと思う。
しかし、はっきり言って入門講義を聞いている段階なんて、合格までの全勉強時間で見ると5分の1にも満たないと思われる。
そこで、この段階で大切なことはさっさと講義を聞き終えてしまうことである。内容がほとんど頭の中に入っていないことを心配に思う人もいるだろう。しかし、そんなこと心配する必要なはい。
そもそも、一回授業を受けただけで全部内容が頭に入る人なんていないし、そんな特殊能力を身につけている必要なはい。入門段階での目標は、その法律の大まかな様相を知る、今後行う演習段階に入る最低限の知識を理解することくらいで十分である。
インプットは入門講義の段階でのみ行うものではなく、私見の直前まで継続的に行うものである。この程度の小さな目標が達成できたら、すぐに演習段階に進むべきであろう。
(2)完璧を求めない
上述の内容と多少被るが、法律の勉強において完璧主義は禁物である。理由はいくつかあるが、そもそも論として予備試験も司法試験も完璧な答案などかけなくても十分に合格できる。6割書けていれば上位である。ゴールとなる試験がこういったスタンスの試験なのに10割答案を目指すのは効率が悪いのではないだろうか。
(3)インプットよりアウトプット中心
この試験の勉強の中心は演習を通じたアウトプットとするべきである。頭の中でどんなに優れた考えを持っていたとしても、それを他人に伝えることができなければ何の意味もない。したがって、法律の知識も大切ではあるが、自分が持っている法律知識をどうやって表現するかもとても大切なことである。
アウトプットの訓練には、実際に問題を解いてみることが必用不可欠であると思う。実際にすべての問題で答案を書く必要まではないと思われるが、最低限自分の頭で考えるという作業はすべての問題で行うべきであろう。そして、可能であるならば他人に自分の答案を見てもらい、簡単にでもいいのでコメントをもらうべきであろう。
(4)演習時には目的を明確化
上述のように演習は大切である。しかしやみくもに問題数をこなしても効率が悪い。時間は有限である。できるだけ一度の演習で多くのものを得られるように工夫することが大切である。
これは私の例であるが、私は演習をインプット目的で行う場合と、本番と同様の状況で最大限の答案を仕上げる訓練とを明確に分けて行っていた。前者を行うときは問題を考える時間はそこまで取らずに復習に時間をかける。
これは論点の存在やその論じ方を習得するためのものなので、わからない問題をいつまでも考えていても時間の無駄である。次に同じような問題に遭遇したときに対応できるようになれば十分である。
他方、後者を行うときは復習よりも実際に問題を解くということ、特に時間内で書ききるということを意識して行う。記述のメリハリや時間間隔を身につけるためのものなどで、復習というよりは思考の段階を重視して行っていた。
(5)手を広げすぎない
ありがちな失敗として、大量に教材を買ったものの全て中途半端というケースである。これは一番お金がかかるのに一向に合格できないという最悪のケースである。
これを避けるためには、意図的に教材を絞ることが必要である。定評のある基本書・演習書を自在に使いこなせるまで使う。これができたころにはもう合格レベルに達しているであろう。
もっとも、手を広げること自体は悪いことではない。知識は多いに越したことはない。ただし、自分が使いこなせないほど手を広げてはいけないということである。筋肉も多すぎても重いだけである。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」といったところか。
各論
ここからは各教科ごとの勉強方法を概説する。
(1)憲法
優先順位としてはかなり低い科目である。短答の対策はしつつ余力があれば論文の対策をするといった形で十分である。教材はそれなりに豊富な印象があるが、辞書用、判例学習用、論文対策で各1種類あれば十分であろう。
統治分野に関しては、短答で満点を目指したい。
(2)行政法
コスパはいい方である。短答は鬼畜な問題が出るのでほどほどにするのが良いが、論文はパターンをつかめばそれなりの成績がとれる科目である。最低限の抽象論を理解したら演習を積んで当てはめや結論の相場観をつかめるとよい。
(3)民法
上位と下位で大きく差のつく科目である。短答に関しては多少細かい知識もがんばって覚えたい。意地悪な問題は少なく、条文や判例の知識をストレートに効いてくる問題が多い印象である。
論文に関しては、大まかな流れとしては原則論を示し、不都合性の修正のために例外的な処理を考えるというものである。民事系に共通していえることであるが、例外部分が書ければ超上位を目指せる反面、原則論が甘いと大きく沈むことになる。
普段の学習としては、条文趣旨や判例の核となる理由付けを理解することが中心となろう。試験会場では冒険することが正しいとは限らない。守りの答案を書く技術も大切である。
(4)商法
短答、論文ともに細かい条文知識が問われることが多い科目であり、条文の正確な理解と適用がほかの科目より重視されるという印象である。会社法が学習の中心となるであろうが、商法総則や手形法も気を抜くと短答でごっそり失点するので注意である。手続ごとの比較という視点も大切であると思われる。
(5)民事訴訟法
定義や判例の規範などの正確な理解が求められる科目であり、それができれば上位答案を書くことのできる科目である。理論面と手続面で勉強方法が異なる難しい科目ではあるが、民事系に共通する条文趣旨の正確な理解を中心に勉強すればいいと思われる。
司法試験の論文式では、最高裁判例と逆の結論をとる論述を指定されることもあり、ほかの科目とは少し異なる対策が必要になる科目である。
(6)刑法
短答・論文ともにとっつきやすく、得意とする受験生が多い科目である。したがって、答案水準もある程度高いものが要求される。また、体系が重視される科目であり、ここを間違えると最底辺の評価が来ても文句は言えない。
論点に飛びつきがちであるが、どの条文のどの要件のどの文言の問題なのか、きちんと理解できていないと大きな失点につながる危険性がある。条文からかけ離れた勉強に陥りやすいので注意である。また、近年の司法試験の問題傾向から、結論が変わりうる論点については反対説のフォローをしておくことが望ましい。
(7)刑事訴訟法
学説と実務に乖離がある論点が多い印象である。基本的には判例に従えばいいのであるが、規範だけではなく、当てはめの考慮要素についても判例を細かめに見ておきたい。準用が多い条文構造のため、特に捜査分野では慣れるのに時間を要するが、慣れてしまえば安定して高得点をとれる科目である。
(8)実務基礎
論文の配点がほかの科目より高いので、優先して勉強をし、高得点を目指すべき科目である。基本的には実体法と手続法の正確な理解が前提となるため、点数が伸び悩むようであれば実体法等の理解が不十分でないか確認すべきであろう。特有の勉強も必要ではあるが、暗記中心で特に難しいことは少ないので、トップクラスにコスパのいい科目である。
(9)一般教養
基本的には対策不要である。というか範囲が膨大すぎて対策のしようがない。法律科目の対策を優先するべきであろう。
(10)選択科目
基本的には自身の興味があるものを選べばよいと思うが、その際には①教材の充実性や②周囲の受験生の状況をよく調べてみるべきであろう。具体的な対策については、科目ごとに異なると思われるのでここでは省略する。
終わりに
以上、簡単にではあるが私自身の考えを述べさせていただいた。これはあくまで1合格者の体験談にすぎないので、鵜吞みにせず、役立つところがあると思えば参考にしていただければ幸いである。では、皆さん勉強頑張ってください!